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シリヤの聖イサアク全書/第三十八説教

提供:Wikisource

第38説教

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<<ひとおこところ念頭ねんとうにより如何いかなる階級かいきゅうにあるをさつすべし。>>


ひと怠慢たいまんにあるあいだ死期しきおそれ、かみ接近せつきんするとき審判しんぱんむかへんをおそる、しかれども殿門でんもんまつたるときは、かれこれとのおそれはあいにてまるゝなり。何故なにゆえなるか。けだしたれ肉体にくたいしきその生涯しょうがいとどまるときは、おそるれども、霊的れいてきしき善良ぜんりょうなる生涯しょうがいるときは、そのこころ如何いかなるときにも、来世らいせい審判しんぱんおく占有せんゆうせられざるなし、なんとなればかれその天性てんせいしたがひてただしくち、心霊上しんれいじょう秩序ちつじょにより行動こうどうし、そのしきそのこうとのため占有せんゆうせられて、かみ接近せつきんするためよろしくせいせらるゝによる。さりながらひとかみおうかんおこりて、来世らいせいのぞみ確立かくりつするにより、しんしきたつするときは、動物どうぶつごとほふられんことをおそるゝ肉体的にくたいてきひとも、かみ審判しんぱんおそるゝれいてきひとも、あいにてまるゝなり、しかしてすでとなりしものあいにてかざらるれども、おそれざるものむちにてさとさるゝなり。『われとわがちちいへしゅつかへん』〔ナワィン二十四の十五〕。


かみあいするにたつしたるものさらこのとどまらんことを最早もはやねがはざるべし、なんとなればあいおそれほろぼせばなり。愛者あいしゃよ、おちいりしにより、みつまもりてもくするあたはず、兄弟けいていえきせんがため無智むちとなりぬ、なんとなれば真実しんじつなるあいかくごときものにして、此愛このあい其愛そのあいするところものため或事あることひそかするあたはざればなり。此事このことしょするときは、ゆびは、かみしたがふのもあらざることたゞ一回いつかいのみにあらずして、こころ突進とつしんし、をして感覚かんかくもくせしめたるかいため忍耐にんたいまもあたはざりき。さりながらつねかみことおもひ、すべてぞくするものをきんじ、ひとかみともとどまりてその認識にんしきだんものさいはひなり、かれ忍耐にんたいるあるも、けつるをながくはゆうせざらん。


かみためよろこびこの生命いのちよろこびよりつよくして、このよろこびたるものは、たゞなんざるのみならず、その生命いのちをさへかへりみざるなり。もしじつこのよろこびゆうするならば、彼処かしこ感覚かんかくおこらざるべし。あい生命せいめいよりあまくして、あいりてしょうずるかみおけるの通暁つうぎょうみつよりもなり。あいそのあいするところものためくるしきくるもかなしまず。あい認識にんしき所産しょさんにして、認識にんしき心霊しんれい健全けんぜん所産しょさんなり、しかして心霊しんれい健全けんぜんながつづ忍耐にんたいよりしょうじたるちからなり。


問 認識にんしきとはなんぞや。

答 不死ふしなる生命いのち感触かんしょくなり。


問 不死ふしなる生命いのちとはなんぞや。

答 かみおけるの感触かんしょくなり、けだしあい通暁つうぎょうよりしょうじて、かみ認識にんしきことごとくの願望がんぼうおうなり、しかしてこれくるこころにはじょうなんかんぜいならざるなし、けだしかみ認識にんしきごとくなるかんいつもあらざればなり。

しゅよ、こころ永遠えいえん生命いのちたしめたまへ。

永遠えいえん生命いのちかみおけしゃなりしかしてかみおけしゃたるものこのしゃぜいす。


問 かみより聡慧そうけいけたるをひとなにによりかくするか。

答 ひと隠密おんみつおいてもまた感覚かんかくおいても謙遜けんそんなる品性ひんせいおしふる聡慧そうけいそのものによりかくせん、しかして謙遜けんそん如何いかけらるゝはひとそのおいてあらはるゝなり。


問 謙遜けんそん到達とうたつしたるをひとなにによりかくするか。

答 交際こうさいあるい言論げんろんによりこびるをもつおのれためしゅうなりとするによりかくすべし。しかしてこのえいかれ眼中がんちゅうきらはしかるべし。


問 よくとはなんぞや。

答 身体しんたいもつともくべからざる要求ようきゅう満足まんぞくせしめんとして、このぶつためおこところげきなり、このげきこの存在そんざいするあいだまざらん。さりながら神聖しんせいなる恩寵おんちょうたまはりて、さら高上こうじょうなるものをあじはひ、かつこれかんじたるひとこのげきこころらしめざるなり、なんとなればかれにはきはめてなる願望がんぼうこれかはしゅとなるありて、このげきまたこれによりてしょうずるところのものもかれこころちかづかずして、これどうにしてそんするによる、よくなるげき最早もはやらざるためあらずして、そのこころなに動乱どうらんもなく、そのしきものたのしみ、これもつあきるによるなり。


霊界れいかい感触かんしょく来世らいせい直覚ちょくかくとを充分じゅうぶんけたるこころは、よくおくたいしてかくすることあたかこうなる食物しょくもつけるひとこれおなじからざる食物しょくもつそなへられたるにたいするごとくなるべし。これその注意ちゅういまつたけずまたこれねがはざるのみならず、ことこれかろんじ、これきらはん、これその食物しょくもつけがらはしくかつきらはしきためにはあらずして、ひと第一だいいち上等じょうとうしょくかしめられ、これもつやしなはるゝこと、かれちちとみあらかじ消費しょうひし、自己じこ分前わけまへすで蕩尽とうじんして、其後そののち豆莢まめのさやねがはじめたるものごとくなるにはあらざるによる。それたからたくせられしものねむらざるべし。


もし謹粛きんしゅくほうりょあるこうとを認識にんしきによりまもりてそのけつ生命いのちならば、格闘かくとうよくなるげきとはまつたこころちかづかざらん。しかれどもこのげきこころるをさまたぐるは格闘かくとうけつにはあらずして、かく認識にんしきとがおほいり、これもつ霊魂れいこんたさるゝと、心中しんちゅうおこところ神妙しんみょうなる直覚ちょくかくねがふとにる。これぞこのげきこころちかづくをさまたぐるものなる、これすでひしごとく、しん認識にんしきひかり保護ほごするりょの守りとそのこうとにより退去たいきょしたるためにはあらずして、上述じょうじゅつゆうにより格闘かくとうさゞるによるなり。けだし貧者ひんしゃ食物しょくもつ富者ふうしゃためにはけがらはしかるべく、病人びょうにん食物しょくもつ健康者けんこうしゃおけるもまたこれ同様どうようなるべくして、とみ健康けんこうとは謹慎きんしん配慮はいりょとによりてるなり、ひと生存せいぞんするあいだ謹慎きんしんと、配慮はいりょと、みんとに必要ひつようゆうす、そのたからせんためなり。さりながらもしこれためさだめられたる界限かいげんてつするならば、病者びょうしゃとなるべく、そのたからぬすられん。當然とうぜんはたらくをようするときは、たゞけつまでにはあらずして、するまでなるべし、けだし成熟せいじゅく白雨ひょうためたちまがいこうむること度々たびたびあればなり。うきことたちだんふけものこれにより健康けんこうまもらるゝことは、いま保証ほしょうするあたはざるなり。


とうするときがんはつすべし。『しゅよ、このまじはためにはじつしゃとならんことをわれあたたまへ』と、しかしてなんぢはあらゆる願求がんきゅう此中このうちめたるをり、これを実行じつこうせんことをつとむべし。けだしとうともなふに実行じつこうもつてするときは、じつなんぢハリストスゆうたん。しかれどもためおのれころすは、たゞひとにあるところのものと交通こうつうだんするよりとほざかるのみにあるにはあらずして、心中しんちゅうだんおいても幸福こうふくねがはざるにあり。


もし善良ぜんりょうなるちん黙想もくそうおのれならはすときは、よくかいするや、ただちにこれぢん。みづから実験じつけんもつこころみたるものこれる。さりながらよくつみなるにるもこれちかづくをぢん。かみあいするにより、或事あること遂行すいこうせんとほつするときは、もつそのねがひ界限かいげんすべし、かくのごとくならば、各種かくしゅよくたたかふにおいめい階段かいだんのぼるを実際じつさいたまはるべく、をはりいたまで忍耐にんたいしてよわらずんば、限内げんないおいなんぢあいかいするところのものよりなにがいけざらん。薄弱はくじゃくなるせいそう忍耐にんたいちからよわむれども、けんなるは、そのそうしたがもの天性てんせいゆうせざるちからあたふるなり。


しゅなんぢおけ生命いのちため自己じこ生命いのちにくむことをわれあたたまへ。


この生涯しょうがい表中ひょうちゅうしるせるもんうちよりたゞもんをを引出ひきいだものたるあり、たれほつするあり、またねがふあらば、王印おういんしたるきよ巻軸かんじくうつしれる文書ぶんしょごとし、これぞうすることも、また減削げんさくすることも、けつしてゆるされざるなり。ゆえわれへんうちあいだみづからおのれ注意ちゅういすべく、自己じこもつしるせる自己じこ生命せいめい文書ぶんしょけんゆうするあいだ善良ぜんりょうなる生涯しょうがいもつこれぞうすに尽力じんりょくすべし、これによりてぜん生涯しょうがいきず消滅しょうめつせん。けだしわれこのあいだは、かみぜんなるものにもあくなるものにもいんさず、もつわれ生国しょうごくこと仕終しをへて、方面ほうめんむかるのときいたらんせいエフレムひしごとし、いはく『われ霊魂れいこんそうする大艦たいかんたるあり、これむかつて逆風ぎゃくふうおこるはなんときなるをらず、また軍隊ぐんたいたるあり、たたかひ喇叭らつぱ吹散ふきさんずるはなんときなるをらず、かくのごとかんがふるは、われ當然とうぜんなり』といへり。そのおもへらく、さいのぞみなきにあらざるあいおいしょうなるものをんがためにさへかくのごとくならば、おそるべきさきだち、はしまへおいしんかいもんまへおいて、われ豫備よびかつそうするは如何いか肝要かんようなるか。われ生命せいめいだいしゃなるハリストスぼうかくとして表示ひょうしするの準備じゅんびわれたまふべし。かれ光栄こうえい叩拝こうはい感謝かんしゃ世々よよす。「アミン」。