よ。地ヂ 搖ユルげり。震聲トヨミゴヱ 聞キコえたり。[嘗カツて]脅オビヤカしたる泰赤兀惕タイチウト 來キつるならん。母ハヽ 疾トく起オきよ」と云イへり。
§99(02:43:02)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
訶額侖 額客ホエルン エケ 言イはく「子コともを疾トく喚ヨび覺サマせ」と云イひて、訶額侖 額客ホエルン エケも疾トく起オきたり。帖木眞テムヂン 等ラの子コどもも疾トく起オきて、馬ウマどもを執トりて、帖木眞テムヂン 一ヒトつの馬ウマに乘ノれり。訶額侖 額客ホエルン エケ 一ヒトつの馬ウマに乘ノれり。合撒兒カツサル 一ヒトつの馬ウマに乘ノれり。合赤溫カチウン 一ヒトつの馬ウマに乘ノれり。帖木格 斡惕赤斤テムゲ オツチギン 一ヒトつの馬ウマに乘ノれり。別勒古台ベルグタイ 一ヒトつの馬ウマに乘ノれり。孛斡兒出ボオルチユ 一ヒトつの馬ウマに乘ノれり。者︀勒篾ヂエルメ 一ヒトつの馬ウマに乘ノれり。帖木侖テムルンをば、訶額侖 額客ホエルン エケ 懷フトコロに駄ツけたり。[帖木眞テムヂンのみは、](原文に脫ちたるを、明譯に據りて補ふ。)一ヒトつの馬ウマを牽馬ヒキウマに備ソナへたり。孛兒帖 兀眞ボルテ ウヂンには、馬ウマ 闕カけたり。
§100(02:44:04)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
車に乘ノれる孛兒帖ボルテ 豁阿黑臣ゴアクチン
帖木眞テムヂン 兄弟アニオトヽども馬ウマに乘ノりて、夙ツトに卽スナハち不兒罕ブルカンに上ノボれり。豁阿黑臣 嫗ゴアクチン オウナは、孛兒帖 兀眞ボルテ ウヂンを匿カクさんと、一ヒトつの黑クロき輿コシある車クルマに乘ノらしめて、腰花牛エウクワギウ(腰に花紋ある牛)に引ヒかせて、騰格里 豁囉罕テンゲリ ゴロカンに(騰格里 小河、卷一の統格黎克 小河と異なり。)泝サカノボり動ウゴきて來キつる時トキ、曙アケボノの仄ホノカに明アくる時トキ、向ムカヒより軍イクサの眾シウ、馬ウマを走ハシらして旋メグりて到イタりて來キて、「何人ナニビトぞ、汝ナンヂ」と問トへり。豁阿黑臣 嫗ゴアクチン オウナ 言イはく「我ワレは、帖木眞テムヂンのなり。大家オホヤの內ウチに羊ヒツジの毛ケを剪キりて來キつ。己オノが家イヘに回カヘりて來クるなり」と云イへり。それより[彼等カレラ]言イはく「帖木眞テムヂンは、家イヘにありや。家イヘは、いかに遠トホき」と云イへり。豁阿黑臣 嫗ゴアクチン オウナ