金槐和歌集/卷之上/秋部
表示
秋 部
七月一日のあしたよめる | 類從本に「七月一日の朝に……」とあり。 | ||
(一八〇) | 新續古今 きのふこそ夏は暮れしか |
定家所傳本には第三句「あさといでの」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
秋 風 |
|||
(一八一) | ながむれば |
||
(一八二) | 新勅撰 夕されば衣手 |
類從本には、第二句「衣手さむし」とあり。また、新勅撰集には、初句「夕暮は」とあり。 眞淵この歌に○○を附す。 | |
海邊秋來 |
類從本には「……といふことを」とあり。 | ||
(一八三) | 霧たちて秋こそ空に |
眞淵この歌に○を附す。 | |
(一八四) | うちはへて秋は來にけり |
||
初秋の歌 |
類從本には「秋のはじめの歌」とあり。 | ||
(一八五) | 野となりてあとは絕えにし |
||
(一八六) | すむ人もなき宿なれど萩の葉の尋ねて秋は來にけり | 定家所傳本には第三句「荻の葉の」とあり。眞淵はこの歌を「四の句後なり」と評せり。 | |
白 露 |
|||
(一八七) | 秋ははや |
||
(一八八) | 續古今 今よりは凉しくなりぬ日ぐらしの鳴く山かげの秋のゆふ風 | 類從本にはこの歌に「詞書闕」と註して、「一本及印本所載歌」の部に入れたり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
蟬のなくをききて |
類從本には「寒蟬啼」とあり。 | ||
(一八九) | 吹く風 |
類從本・定家所傳本には初句「吹く風の」とあり。 眞淵この歌に○○を附す。 | |
山家秋思 |
|||
(一九〇) | ことしげき世をのがれにし山里にいかで尋ねて秋の |
類從本には「雜」の部にあり。 類從本・定家所傳本には第四句「いかに」とあり。 | |
(一九一) | 類從本には「雜」の部にあり。 | ||
秋のはじめによめる |
|||
(一九二) | 天の川みなわさかまきゆく水のはやくも秋の立ちにけるかな | ||
(一九三) | |||
(一九四) | 新勅撰 彥星の |
眞淵この歌に○○を附す。 | |
(一九五) | 夕されば秋風凉したなばたの |
||
七 夕 |
|||
(一九六) | |||
(一九七) | こひこひて稀にあふ夜の天の川 |
||
(一九八) | 七夕の |
眞淵は「七夕と書きて、萬葉に七日のよひとよめるこそよけれ。後にたなばたてふ語に七夕と書くはひがごとぞ」と評せり。 | |
(一九九) | 今はしもわかれもすらし |
類從本・定家所傳本には第三句「たなばたは」とあり。 | |
秋のはじめ月あかかりし夜 |
|||
(二〇〇) | 天の原雲なき宵に久かたの月さへわたるかささぎの橋 | 眞淵この歌に○を附す。 | |
(二〇一) | 新續古今 秋風に夜のふけ行けばひさかたの天の河原に月かたぶきぬ | 眞淵この歌に○○を附す。 | |
七月十四日の夜勝長壽院の廊に侍りて月さし入りたりしによめる |
類從本には「……樓に侍りて月のさし入たりしをよめる」とあり。 | ||
(二〇二) | ながめやる軒のしのぶの露の間にいたくな |
原本、第四句「ふきそ」とあり。一本によりて改む。 | |
草 花 |
類從本には「草花をよめる」とあり。 | ||
(二〇三) | 野邊にいでてそぼちにけりな |
||
萩をよめる |
|||
(二〇四) | 秋はぎの下葉もいまだうつろはぬにけさ吹く風は袂さむしも | 原本、第三句「うつろはぬ」と「に」を脫せり。一本によりて改む。 | |
(二〇五) | 見る人もなくて散りにき時雨のみふりにし里の秋萩の花 | ||
(二〇六) | 花におく露をしづけみ |
原本、第二句「露ぞ」とあり。一本によりて改む。 | |
庭 萩 |
類從本には「庭のはぎをよめる」とあり。 | ||
(二〇七) | 秋風はいたくな吹きそ我が宿のもとあらの |
||
故 鄕 萩 |
|||
(二〇八) | 新勅撰 故鄕のもとあらの小萩いたづらに見る人なしみ咲きか散るらむ | 類從本には下句「見る人なしに咲かちりなん」定家所傳本には「見る人なしみ咲きか散りなん」とあり。 眞淵は下句につき「見る人なしにとあるべし。みわろし。旣にもいへり」と評せり。 | |
路 頭 萩 |
|||
(二〇九) | 新勅撰 路のべの |
眞淵この歌に○を附す。 | |
庭の萩わづかにのこれるを月さしいでて後見るに散りわたるにや花の見えざりしかばよめる |
類從本には、「庭の萩はつかに……散りにたるにや……見えざりしかば」とあり。 | ||
(二一〇) | 萩の花くれぐれまでもありつるが月出でてみるになき |
類從本・定家所傳本には結句「はかなさ」とあり。 | |
曙󠄁に庭の萩を見て |
|||
(二一一) | 朝ぼらけ萩のうへ吹く秋風に下葉おしなみ露ぞこぼるる | 類從本・定家所傳本には「萩」を「荻」とせり。 | |
夕べのこころをよめる |
|||
(二一二) | 玉葉 たそがれに物思ひをればわが宿の萩の葉そよぎ秋風ぞふく | 類從本・定家所傳本及び玉葉集には第四句の「萩」を「荻」とせり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
(二一三) | われのみやわびしとは思ふ花薄ほにいづる宿の秋の夕ぐれ | 類從本には第二句「わびしと思ふ」とありてはの字なし。貞享本本文第二句「分しとは思ふ」とあり。傍註によりて改む。 | |
野 苅 萱 |
類從本には「野べのかるかやをよめる」とあり。 | ||
(二一四) | 新後撰 夕されば野路の |
眞淵この歌に○を附す。 | |
蘭 |
|||
(二一五) | 藤ばかま |
||
類從本には「……蘭さけるををみてよめる」とあり。 | |||
(二一六) | 秋風に |
||
女 郞 花 |
|||
(二一七) | よそにみてをらで |
類從本・定家所傳本には、第二句「をらでは過ぎじ」とあり。 | |
葛 |
|||
(二一八) | 白露のあだにもおくか葛の葉にたまればきえぬ風たえぬまに | 類從本・定家所傳本には、結句「風たたぬまに」とあり。 | |
(二一九) | 秋風はあやな |
類從本・定家所傳本には第二句「あやなな」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
槿 |
|||
(二二〇) | 風を待つ草の葉におく露よりもあだなるものは朝顏の花 | ||
故鄕の心を |
|||
(二二一) | 鶉鳴くふりにしさとの |
類從本には「雜」の部にあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
野 邊 露 |
類從本には「野べの露」とあり。 | ||
(二二二) | 久かたの空飛ぶ雁の淚かもおほあらき野の笹の上の露 | 類從本・定家所傳本には第二句の「空」を「天(あま)」に作り、また定家所傳本には結句を | |
夕 雁 |
|||
(二二三) | 夕されば |
眞淵この歌に○を附す。 | |
田家夕雁 |
|||
(二二四) | かりのゐる |
眞淵この歌に○を附す。 | |
海 上 雁 |
類從本には「海の邊をすぐるとてよめる」とあり。 | ||
(二二五) | 新勅撰 和田の原 |
眞淵この歌に○を附す。 | |
月 前 雁 |
|||
(二二六) | |||
(二二七) | 鳴きわたる雁の |
眞淵この歌に○を附す。 | |
(二二八) | あまの戶を |
原本第二句「明がたの」の「の」なし。 | |
( |
天の原ふりさけみればます鏡きよき月夜に雁なきわたる | 眞淵この歌に○○を附す。 | |
(二三〇) | ぬば玉の夜はふけぬらし雁がねのきこゆる空に月かたぶきぬ | ||
雁をよめる |
|||
(二三一) | 雁鳴きて秋風さむくなりにけり |
眞淵この歌に○○を附す。 | |
(二三二) | 秋風に山とびこゆる初雁の翅にわくる峰の白雲 | ||
(二三三) | |||
(二三四) | 雁がねは友まどはせり |
眞淵この歌に○を附す。 | |
鹿の歌に |
類從本には「しかをよめる」とあり。 | ||
(二三五) | 妻こふる鹿ぞ鳴なるをぐら山やまの夕霧たちにけむかも | 貞享本に結句「たちけんかもと」とあるは誤ならむ。 眞淵この歌に○を附す。 | |
(二三六) | 新千載 夕されば霧たちくらしをぐら山やまのとかげに鹿ぞ鳴くなる | ||
(二三七) | 新勅撰 雲のゐる |
眞淵この歌に○○を附す。 | |
(二三八) | 月をのみあはれ |
類從本・定家所傳本には第二句「思ふを」とあり。 | |
(二三九) | さ夜ふくるままに |
類從本には第四句「月を」とあり。原本第四句「誘ふる」とあり。類從本によりて改む。 | |
(二四〇) | 朝まだき |
||
(二四一) | さを鹿のおのが住む野の女郞花はなに飽かずと |
||
(二四二) | はぎが花 |
類從本・定家所傳本には、第二句「うつろひ行けば」とありて、「て」なし。 | |
(二四三) | 續後撰 朝な朝な露にをれふす秋萩の花ふみしだき鹿ぞ鳴くなる | 眞淵この歌に○を附す。 | |
(二四四) | 秋萩のむかしの露に袖ぬれてふるきまがきに鹿ぞ鳴くなる | ||
夕 鹿 |
|||
(二四五) | なく鹿のこゑより袖におくか露もの思ふ頃の秋の夕ぐれ | 眞淵はこの歌の第三句につき、「おくか露、このことば、一時のはやりことにて聞きにくし」と評せり。 | |
田 家 秋 |
類從本には「田家秋といふことを」とあり。 | ||
(二四六) | 山田もる |
||
(二四七) | からごろもいな葉の露に袖ぬれて物思へともなれるわが身 |
類從本・定家所傳本には、結句「わが身か」とあり。 | |
蟲 |
|||
(二四八) | 類從本・定家所傳本には、結句「わぶらん」とあり。 | ||
(二四九) | 庭草の露の |
||
故 鄕 蟲 |
類從本には「雜」の部にあり。 | ||
(二五〇) | たのめこし人だに |
||
蟋 蟀 |
眞淵はこの歌に○を附し、且つ題の「蟋蟀」につき、「蟋蟀をば萬葉にはこほろぎとよむ事と見ゆるを誤りて、早くよりきり〴〵すとよめり」と評せり。 類從本には、第一二句「秋ふかみ露さむきとや」定家所傳本には、初句「秋深み」とあり。 | ||
(二五一) | 秋深 |
||
(二五二) | あさぢ原露しげき庭のきりぎりす秋深き夜の月に鳴くなり | ||
(二五三) | 秋の夜の月のみやこのきりぎりす鳴くは昔のかげやこひしき | 類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | |
(二五四) | きりぎりす鳴く夕ぐれの秋風に我さへあやな物ぞ悲しき | ||
長月の夜蟋蟀のなくを聞きてよめる |
|||
(二五五) | きりぎりす |
||
ある僧に衣をたまふとて |
|||
(二五六) | 野邊みれば露霜寒 |
類從本には第二句「露霜さむし」定家所傳本には「露霜さむき」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
秋の野におく白露は玉なれやといふことを人々におほせてつかうまつらせし時よめる |
|||
(二五七) | ささがにの玉ぬくいとの |
||
山邊眺望といふ事を |
|||
(二五八) | 聲たかみ林にさけぶ |
眞淵はこの歌の初句につき「聲たかくとあるべし」と評せり。 | |
(二五九) | 暮れかかる夕べの空をながむればこだかき山に秋風ぞふく | 類從本には「山家眺望といふことを」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
(二六〇) | 秋を經てしのびもかねに物ぞ思ふ |
類從本には第二句「かねず」第三句「物おもふ」とあり。 | |
田 家 露 |
|||
(二六一) | 秋田もる |
類從本には結句「いくへおくらむ」定家所傳本には結句「いくへおきけむ」とあり。 | |
田家秋夕 |
類從本には「田家夕」とあり。 | ||
(二六二) | かくてなほ |
類從本・定家所傳本には第二句「たえてしあらば」とあり。眞淵はこの歌につき、「春曙、秋夕暮といひつづめたるは後の人のわざなり。それにつけてしきりに悲しきよしを思ひ入てよむも亦後なり。此公古へを好み給へども、猶さることまでは、えおぼしわき給はざりし。されどこれらは、まだはじめのほどの歌故か。よりてここの歌共は皆後のあかにそみたり」と評せり。 | |
海のほとりをすぐとて |
|||
(二六三) | 定家所傳本には、第二句「心もたえぬ」とあり。 眞淵はこの歌を「ながめわび行へも知らぬ物ぞおもふ。斯樣に此公はよみ給ふ例なし。後になほしけんかし」と評せり。 | ||
秋の夕べによめる |
類從本には「ゆふべの心をよめる」とあり。 | ||
(二六四) | 大かたに物思ふとしもなかりけりただわがための秋のゆふぐれ | ||
夕秋風といふことを |
|||
(二六五) | 秋ならでただ大かたの風のおとも夕べはことに悲しきものを | ||
秋 の 歌 |
|||
(二六六) | 玉だれのこすのひまもる秋風 |
類從本には第三句「秋風は」定家所傳本には「秋風の」とあり。 | |
(二六七) | 秋風はやや肌寒くなりにけり |
眞淵この歌に○を附す。 | |
(二六八) | むかし思ふ秋の寢覺めの床の |
定家所傳本には第三句「床の上を」とあり。 | |
聲うちそふるおきつしら浪といふ事を人々あまたつかうまつりしついでに |
類從本には「……といふふるごとを人々あまたつかうまつりてし次によめる」とあり。 | ||
(二六九) | 住 |
眞淵はこの歌の初句につき「住吉と書てもすみの江とよむべし」といへり。類從本には「雜」の部に入れ、初句を「住の江の」と書きたり。 | |
月の歌とて |
類從本には「秋歌」と題せり。 | ||
(二七〇) | 月きよみ秋の夜いたく |
眞淵この歌に○を附す。 | |
(二七一) | 新拾遺 天の原ふりさけみれば月きよみ秋の夜いたく更けにけるかな | 眞淵この歌に○○を附す。 | |
(二七二) | 我ながらおぼえずおつる袖の露月に物思ふ夜頃へぬれば | 類從本には「月をよめる」と題し、類從本・定家所傳本には第二句「おぼえずおくか」とあり。眞淵はこの歌を「二の句後なり」と評せり。 | |
(二七三) | 新勅撰 思ひ出でて昔を忍ぶ袖の上にありしにもあらぬ月ぞやどれる | 類從本には「月をよめる」と題し「雜」の部にあり。新勅撰集には第四句のもなし。眞淵は「四の句後なり」と評せり。 | |
閑居望月 |
|||
(二七四) | 草の庵にひとりながめて年もへぬ友なき宿の秋の夜の月 | 類從本・定家所傳本には初句「苔の庵に」第四句「友なき山の」とあり。 | |
荒 屋 月 |
類從本には「あれたる宿の月といふ事を」と題して、「雜」の部にあり。 | ||
(二七五) | 新勅撰 淺茅原ぬしなき |
定家所傳本及び新勅撰集には結句「月かすみけむ」とあり。 | |
故 鄕 月 |
|||
(二七六) | 行きめぐりまたも |
類從本には「月をよめる」と題して「雜」の部にあり。 | |
(二七七) | 類從本には「月をよめる」と題し「雜」の部にあり。 | ||
水 邊 月 |
|||
(二七八) | わくらはに行きても見しが |
類從本には「雜」の部にあり。 | |
海 邊 月 |
|||
(二七九) | たまさかに見る物にもが伊勢の |
類從本・定家所傳本には第三句「伊勢の海の」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
(二八〇) | いせの海や浪に |
類從本には第二句「かけたる」とあり。 | |
(二八一) | 須磨のあまの袖ふきかへす鹽風にうらみてふくる秋の夜の月 | 定家所傳本には第三句「秋風に」とあり。眞淵は「うらみてふくる、後なり」と評せり。 | |
(二八二) | 鹽がまの浦ふく風に秋たけて |
定家所傳本には第四句「まがきの島に」とあり。 眞淵この歌に○○を附す。 | |
名所秋月 |
|||
(二八三) | さざ浪やひらの山風さ夜ふけて月影さびししがのからさき | 定家所傳本には第四句「月影さむし」とあり。 眞淵この歌に○を附し、次に一首と共に「この二首、俗の思はん巧を皆はぶきて末をいひはなちたり」と評せり。 | |
(二八四) | 續千載 月見れば衣手さむしさらしなや |
眞淵この歌に○○を附す。 | |
(二八五) | 山寒み衣手うすし |
||
八月十五夜のこころを |
類從本には「八月十五夜」とあり。 | ||
(二八六) | |||
月前擣衣 |
|||
(二八七) | 秋たけて |
定家所傳本には結句「うつなる」とあり。 | |
(二八八) | 新後拾遺 さよふけてなかば |
類從本・定家所傳本には第二句「たけ行く」とあり。 | |
(二八九) | 風雅 夜を寒みねざめて聞けば |
定家所傳本には初句「夜をながみ」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
故鄕擣衣 |
|||
(二九〇) | みよし野の |
類從本・定家所傳本には第四句「ふる里に」とあり。 | |
擣衣をよめる |
|||
(二九一) | |||
月夜菊花をたをるとて |
類從本には「月夜菊の花をおるとて」とあり。 | ||
(二九二) | 新勅撰 ぬれてをる袖の月影ふけにけりまがきの菊の花の上の露 | 眞淵この歌に○を附す。 | |
雨のふれるに庭の菊をみて |
類從本には「雨のふれる夜に菊を見てよめる」とあり。 | ||
(二九三) | 露を重みまがきの菊のほしもあへずはるればくもる |
類從本・定家所傳本には結句「宵の村雨」とあり。 | |
菊 を |
|||
(二九四) | ませの內に |
類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | |
さほ山のははその紅葉しぐれぬるといふことを人々によませしついでによめる |
類從本には「……紅葉時雨にぬるる……」とあり。 | ||
(二九五) | さほ山の |
||
水上落葉 |
|||
(二九六) | くれて行く秋の |
||
深山紅葉 |
|||
(二九七) | 神無月またで時雨や降りにけむみ山にふかき紅葉しにけり | ||
名所紅葉 |
|||
(二九八) | 初雁の |
眞淵この歌に○を附す。 | |
(二九九) | 雁鳴きてさむき嵐のふくなべに |
眞淵この歌に○を附す。 | |
雁のなくを聞きて |
類從本には「雁のなくをききてよめる」とあり。 | ||
(三〇〇) | けさ |
類從本・定家所傳本には結句「紅葉しぬらん」とあり。 眞淵この歌に○を附す。 | |
秋のすゑによめる |
|||
(三〇一) | 雁鳴きて吹く風さむみたかまとの野邊のあさぢは色づきにけり | 眞淵この歌に○を附す。 | |
(三〇二) | 新勅撰 雁鳴きてさむきあさけの露霜に矢野の神山いろづきにけり | 眞淵この歌に○○を附し、次の如く評せり。「萬葉に、つま隱る矢野の神山露霜に匂ひそめたりちらまくも惜し、また、雁がねの來鳴しなべにから衣たつたの山はもみぢそめたり、てふなどの心ことばなるが、矢野の神山をこともなくとり出られたるに、器量はみゆ。名所をよむには必らず其古歌その所の樣などをいはでは所の動くなどいふめるは、いとまだしきほどの人のいひごとぞや。いにしへ人、その所に向ひてはただ其所の名をいふのみ。此歌もただちに矢野の神山をとり出られしが、雄々しきなり。すべて名所に緣ある言葉などやうのちひさきことをのみ思ひていへるより、ことせばく、こころくして、ひくし。ただ何となくこの歌にはこの名所こそさもあるべきと思ふ心をえて用ふべきなり。こはたやすきに似て、かたし。されどかく心えていひならふべきのみ」と。また曰く「古人の歌によまぬ所はよむべからぬ事とすることもいまだしきなり。その古人は又の古人の跡をもとめてよめるにあらず。今も古人の心詞をえば、などか、かたくなに古人のあとにのみよらん。古人の心に似たる樣をこそねがはめ、名所のみならずよろづにこの心を思ふべきなり。まして古人のよみしあとある所に、何のよせか用ひん。されどよせなけれど、其頭によく居ると居らぬとの味は功によるべし」と。 | |
(三〇三) | はかなくて暮れぬと思ふをおのづから有明の月に秋ぞ殘れる | 類從本には「一本及印本所載歌」の部にあり。 | |
惜秋といふ事を |
|||
(三〇四) | 長月の有明の月のつきずのみ |
||
(三〇五) | 年ごと |
類從本・定家所傳本には初句「年ごとの」とあり。 | |
九月霜降秋早寒といふ心を |
|||
(三〇六) | 續古今 蟲の音もほのかになりぬ |
||
暮秋の歌 |
類從本には「戀」の部にありて、「戀のこゝろをよめる」と題せり。 | ||
(三〇七) | 秋ふかみすそ野の |
||
(三〇八) | 秋はぎの |
以下三首、類從本には「秋歌」と題せり。第三句原本に「うつろひて」とあり。類從本によりて改む。 | |
(三〇九) | もみぢ葉は道もなきまで散りしきぬわが宿をとふ人しなければ | 第三句、原本に「散りしきて」とあり。類從本によりて改む。 | |
(三一〇) | 木の葉ちる秋の山べは |
||
九月盡のこころを人々におほせてつかうまつらせしついでに |
類從本には「……ついでによめる」とあり。 | ||
(三一一) | 第二句、原本に「今日も限りと」とあり。傍註及び類從本・定家所傳本によりて改む。 定家所傳本には第三句「眺めつる」とあり。 |