第十三「カフィズマ」
第九十一聖詠[編集]
- 一詠。「スボタ」の日に用いる歌。
二至上者よ、主を讃詠し、爾の名に歌い、
三爾の憐れみを朝に宣べ、爾の真を夜に宣べ、
四之を宣ぶるに十絃の楽器と琴とを以てし、歌と瑟とを以てするは美なる哉。
五蓋主よ、爾は爾の作爲を以て我を楽しませたり、我爾が手の工作を歓び楽しむ。
六主よ、爾の工作は何ぞ大いなる、爾の思念は極めて深し。
七不知なる人は之を知らず、愚なる者は之を悟らず。
八悪者は草の如く生じ、不法を行う者は花さけども永く亡ぶ、
九唯爾主よ、永遠に高し。
一〇蓋視よ、主よ、爾の敵、視よ、爾の敵は滅び、凡そ不法を行う者は散ず、
一一然れども我が角は、爾之を野牛の角の如くに挙ぐ、我新たなる膏を傅けられたり、
一二我が目は我が敵を見、我が耳は起ちて我を攻むる悪者の事を聞く。
一三義人は繁ること棕櫚の如く、高くなることリワンの栢香木の如し。
一四彼等は主の宮に植えられて、我が神の庭に榮ゆ、
一五彼等は老いても実を結び、潤いあり、且つ新たにして、
一六主我が防固の義にして、其の中に不義なきを表すを致す。
第九十二聖詠[編集]
- （ダワィドの讃歌。「スボタ」の前日、即地の生殖せられし日に用いる所。）
一主は王たり、彼は威厳を衣たり、主は能力を衣、又之を帯にせり、故に世界は堅固にして動かざらん。
二爾の寶座は古より堅く立ち、爾は世々の前より在せり。
三諸川聲を騰げ、主よ、諸川其の聲を騰げ、諸川其の波を騰ぐ。
四然れども主が最高きに於いて強きは、多くの水の聲に勝り、海の強き浪に勝れり。
五爾の啓示は誠に正し。主よ、聖徳は爾の家に属して永遠に至らん。
第九十三聖詠[編集]
- （ダワィドの詠。七日の第四日に用いる所。）
一仇を報ゆる神よ、主、仇を報ゆる神よ、己を顕わし給え、
二地の審判者よ、起ちて驕慢の者に報い給え。
三主よ、悪者は何れの時に至らんとするか、悪者は勝鬨を挙ぐること何れの時に至らんとするか。
四彼等は軽蔑の言葉を吐き、凡そ不法を行う者は自らを誇る、
五主よ、彼等は爾の民を践み、爾の業を害い、
六寡婦と旅客とを殺し、孤子を滅ぼして
七謂う、主は視ざらん、イアコフの神は知らざらん。
八不智なる人々よ、悟れ、愚なる者よ、爾等は何れの時にか智ならんとする。
九耳を植えし者豈に聞かざらんや、目を造りし者豈に視ざらんや、
一〇諸民を諭し、人の智を開く者、豈に譴めざらんや。
一一主は人の思念の虚しきを知る。
一二主よ、爾が諭しし、爾の法を以て誨えて、
一三艱難の日、即悪者の爲に陥穽の掘り出さるるに至るまで、平安を得しむる人は福なり。
一四蓋主は其の民を棄てず、其の業を離れざらん。
一五蓋審判は義に帰し、心の正しき者は皆之に従わん。
一六誰か我が爲に起ちて悪者を攻めん、誰か我が爲に起ちて不法を行う者を攻めん。
一七若し主我を助けざりしならば、我が霊速やかに緘黙の地に移り住まいしならん。
一八我足を失うと謂いし時、主よ、爾の憐れみは我を扶けたり。
一九我が心に我が憂いの増す時、爾の慰めは我が霊を悦ばしむ。
二〇残害者、法に背きて暴虐を謀る者の座は、豈に爾の傍らに設けられんや。
二一彼等は群がりて義人の霊を攻め、辜なき血を罪に定む。
二二然れども主は我が守護なり、我の神は我が避所の固めなり、
二三彼等の不法を彼等に反し、彼等の悪業を以て彼等を滅ぼさん、主我が神は彼等を滅ぼさん。
- 光榮讃詞
第九十四聖詠[編集]
- （ダワィドの讃歌）
一来りて主に歌い、神我が救いの防固に呼ばん、
二讃揚を以て其の顔の前に進み、歌を以て彼に呼ばん、
三蓋主は大いなる神、大いなる王にして諸神に勝る。
四地の深き處は其の手に在り、山の頂も彼に属す、
五海は彼に属す、彼之を造れり、陸も亦其の手の造りし所なり。
六来たれ叩拝俯伏して、主我が造物主の顔の前に膝を屈めん、
七蓋彼は我が神なり、我等は其の草苑の民、其の手の羊なり。今日爾等彼の聲を聞かば、
八嘗て野に在りて、試みの日に、メリワに於けるが如く、爾等の心を頑なにする毋れ。
九彼處に在りて、爾等の先祖は我を試み、我を験し、我が作爲を見たり。
一〇四十年間我其の代に縁りて憤れり、彼等は常に心迷い、我が道を識らざりき。
一一故に我は我が怒りに於いて誓えり、彼等は我が安息に入らざらんと。
第九十五聖詠[編集]
- （ダワィドの讃歌。宮室の造営に用いる所。）
一新たなる歌を主に歌え、全地よ、主に歌え、
二主に歌いて其の名を崇め讃め、其の救いを日々に福音せよ、
三其の光榮を諸民の中に伝え、其の奇跡を萬族の中に伝えよ。
四蓋主は大いにして讃美せらるべく、彼は悉くの神より畏るべし。
五蓋諸民の悉くの神は偶像なり、惟主は諸天を造れり。
六光榮と威厳とは其の顔の前に在り、能力と美好とは其の聖所に在り。
七諸民の諸族よ、主に帰せよ、光榮と尊貴とを主に帰せよ、
八其の名の光榮を以て主に帰せよ、禮物を携えて其の院に入れ、
九美しき聖所に於いて主を拝め。全地よ、其の顔の前に戦け。
一〇諸民に言うべし、主は王たり、故に世界は堅固にして揺かざらん。彼は義を以て諸民を審判せん。
一一諸天は楽しむべし、地は祝うべし、海と其の中に盈つる者とは鳴るべし、
一二田と其の中に在る者とは喜ぶべし、林の諸木は主の顔の前に舞うべし。
一三蓋来たりて地を審判せん、彼は義を以て世界を審判し、真実を以て諸民を審判せん。
第九十六聖詠[編集]
- （ダワィドの詠。其の国の治まる時に此を作れり。）
一主は王たり、地は歓ぶべし、多数の島は楽しむべし。
二雲と闇冥とは彼を環る、公義と審判とは其の寶座の基なり。
三火は其の前に行き、四周に其の敵を焚く。
四其の電は世界を照らし、地は見て震う。
五山は蝋の如く主の顔に縁りて融け、全地の主の顔に縁りて融く。
六諸天は其の義を伝え、萬民は其の榮光を観る。
七凡そ刻める像に事うる者、偶像を以て自ら誇る者は羞を蒙るべし。彼の悉くの天使は彼を拝すべし。
八主よ、シオンは聞きて悦び、イウダの女は皆爾の審判に因りて楽しむ。
九蓋主よ、爾は全地より高く、諸神に愈りて貴し。
一〇主を愛する者よ、悪を悪め。彼は其の聖人の霊を護り、之を悪者の手より脱れしむ。
一一光は義人を照らし、楽しみは心の正しき者に注がる。
一二義人よ、主の爲に悦べ、其の聖を思いて讃美せよ。
- 光榮讃詞
第九十七聖詠[編集]
- （ダワィドの）詠。
一新たなる歌を主に歌え、蓋彼は奇迹を行えり。其の右の手、其の聖なる臂は彼の爲に勝を獲たり。
二主は其の救いを顕わし、諸民の目の前に其の義を示せり。
三彼は其のイアコフに於ける憐れみと、イズライリの家に於ける誠とを記憶せり。凡そ地の極は我が神の救いを見たり。
四全地よ、主に呼べ、祝い、楽しみ、歌え、
五琴を以て主に歌え、琴と聖詠の聲とを以てせよ、
六喇叭と角との聲を以て主、王の前に祝え。
七海と其の中に満つる者、世界と其の中に居る者は聲を揚ぐべし、
八河は掌を拍つべし、山は之と共に主の顔の前に歓ぶべし、
九蓋彼来たりて地を審判せん。彼は義を以て世界を審判し、誠を以て諸民を審判せん。
第九十八聖詠[編集]
- （ダワィドの詠）
一主は王たり、諸民戦くべし、彼はヘルワィムに坐す、地は震うべし。
二主はシオンに在りて大いなり、彼は萬民の上に高し。
三願わくは彼等爾の大いにして畏るべき名を讃榮せん、是れ聖なり。
四王の能力は審判を好む、爾は正理を堅く立てたり、爾はイアコフの中に審判と公義とを行えり。
五主我が神を崇め讃め、其の足台に伏し拝めよ、是れ聖なり。
六司祭の中にモイセイ及びアアロンあり、彼の名を呼ぶ者の中にサムイルあり、彼等主に呼びしに、主之に聴けり。
七彼は雲柱の中に於いて之に謂えり、彼等は其の誡めと其の之に賜いし律とを守れり。
八主我が神よ、爾彼等に聴けり、爾は彼等の爲に恕す神、又其の行いを罰する神たりき。
九主我が神を崇め讃め、其の聖山に於いて伏し拝めよ、主我が神は聖なればなり。
第九十九聖詠[編集]
- （ダワィドの）讃詠。
一全地よ、主に呼べ。
二楽しみを以て主に事えよ、呼び聲を以て其の顔の前に詣れ。
三主は神にして、我等を造り、我等彼に属して、其の民、其の草苑の羊なるを知れ。
四讃頌を以て其の門に入り、讃美を以て其の院に入れ、彼を讃榮し、其の名を崇め讃めよ。
五蓋主は仁慈にして、其の憐れみは永遠に在り、其の真実は世々に至らん。
第百聖詠[編集]
- ダワィドの詠。
一我憐れみと審判とを歌わん、主よ、爾に歌を奉らん。
二我瑕なき道を思わん、爾何れの時我に至るか、我瑕なき心を以て我が家の中を行かん。
三我が目の前には邪なる物を置かざらん、法に背く行いは我之を疾む、其れ必ず我に附かざらん。
四壞れし心は我に遠ざかり、悪しき者は我之を識らざらん。
五隠かに己の隣を謗る者は我之を逐い、目傲り、心高ぶる者は我之を容れざらん。
六我が目は斯の地の忠信なる者を顧みて、彼等を我が傍らに居らしめん、瑕なき道を行く者は我に事えん。
七二心を行う者は我が家に居るを得ず、詭りを言う者は我が目の前に止まらざらん。
八晨に我此の地の悉くの不虔者を滅ぼして、凡そ不法を行う者を主の城邑より絶たれしめん。
- 光榮讃詞