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禮記/禮器


禮器,是故大備。大備,盛德也。禮釋回,增美質。措則正,施則行。其在人也,如竹箭之有筠也;如松柏之有心也。二者居天下之大端矣。故貫四時而不改柯易葉。故君子有禮,則外諧而內無怨,故物無不懷仁,鬼神饗德。

〈訳:NDLJP:1118535/135 れいとす、是の故におほいにそなはる、おほいにそなはるは盛徳せいとくなり。禮はよこしま美質びしつす。けば則ちたゞしく、ほどこせば則ちおこなはる。其の人に在るや、竹箭ちくせんきんあるが如きなり。松柏しようはくの心あるが如きなり。二の者は天下の大端だいたんに居るなり。 故に四つらぬきて、えだあらたへず。故に君子禮あれば、則ちほかかなひて、 うちうらみなし。故にものじんなつかざるなく、鬼神きしんとくく。〉

先王之立禮也,有本有文。忠信,禮之本也;義理,禮之文也。無本不立,無文不行。

〈先王の禮をつるや、もと ありぶんあり。忠信ちうしんは禮の本なり、義理ぎりは禮のぶんなり。本なければたず、文なけ ればおこなはれず。〉

禮也者,合於天時,設於地財,順於鬼神,合於人心,理萬物者也。是故天時有生也,地理有宜也,人官有能也,物曲有利也。故天不生,地不養,君子不以為禮,鬼神弗饗也。居山以魚鱉為禮,居澤以鹿豕為禮,君子謂之不知禮。故必舉其定國之數,以為禮之大經,禮之大倫。以地廣狹,禮之薄厚,與年之上下。是故年雖大殺,眾不匡懼。則上之制禮也節矣。

〈禮なる者は天時てんじがつし、地財ちざいまうけ、鬼神きしんしたがひ、人心に合し、 萬物ばんぶつする者なり。是の故に天時てんじせいあり、地理ちりよろしきあり、人官、のうあり、物 曲、あり。故にてんしやうぜず、やしなはざるものは、君子以て禮と爲さず、鬼神きしん けず。山に居りて魚鼈ぎよべつを以て禮と爲し、たくに居りて鹿豕ろくしを以て禮と爲すは、君子 之を禮を知らずとふ。故に必ず其のさだまれるくにかずげて、以て禮の大經だいけいと 爲す。禮の大倫たいりん廣狹くわうけふを以てし、禮の薄厚はく(判読困難)は、とし上下しやうかす。是の故に とし大殺だいさいと雖も、しう匡懼きやうくせざるは、則ちかみの禮をせいすることせつあり。〉

禮,時為大,順次之,體次之,宜次之,稱次之。堯授舜,舜授禹。湯放桀,武王伐紂。時也。《詩》云:「匪革其猶,聿追來孝。」

NDLJP:1118535/136 れいは時をだいと爲し、じゆん之れにぎ、たい之れに次ぎ、之れに次ぎ、しよう之れに 次ぐ。げうしゆんさづけ、しゆんさづけ、たうけつはなち、武王ぶわうちうつは、時な り。に云ふ、其のはかりごとすみやかにせんとにはあらず、ひて來りかうならんとす。〉

天地之祭,宗廟之事,父子之道,君臣之義,倫也。

〈天地のまつり宗廟そうべうの事、父子ふしみち、君臣のは、りんなり。〉

社稷山川之事,鬼神之祭,體也。

社稷しやしよく山川さんせんの事、鬼神きしんまつりは、たいなり。〉

喪祭之用,賓客之交,義也。

喪祭さうさいの用、賓客ひんかくかうは、義なり。〉

羔、豚而祭,百官皆足;大牢而祭,不必有餘,此之謂稱也。諸侯以龜為寶,以圭為瑞。家不寶龜,不藏圭,不臺門,言有稱也。

かうとんしてまつるも、百官ひやくくわんみなり。 大牢たいらうしてまつるも、必ずしもあまりあらず。此れ之れをかなへりとふなり。諸侯しよこうを以 てはうと爲し、けいを以てずゐと爲す、いへはうとせず、けいざうとせず、もんだいにせ ず、しようあるをふなり。〉

禮,有以多為貴者:天子七廟,諸侯五,大夫三,士一。天子之豆二十有六,諸公十有六,諸侯十有二,上大夫八,下大夫六。諸侯七介、七牢,大夫五介、五牢。天子之席五重,諸侯之席三重,大夫再重。天子崩,七月而葬,五重八翣;諸侯五月而葬,三重六翣;大夫三月而葬,再重四翣。此以多為貴也。

〈禮におほきを以てたふとしと爲す者あり。天子は七べう、諸 侯は五、大夫たいふは三、士は一。天子のとうは二十有六、諸公は十有六、諸侯は十有二、 上大夫は八、下大夫は六。諸侯は七かいらう、大夫は五かいらう天子てんしせきは五ぢゆう、 諸侯のせきは三ぢゆう、大夫は再重さいぢゆう、天子ほうずれば、七月にしてはうむり、五重八さふ、諸 侯は五月にしてはうむり、三重六さふ大夫たいふは三月にしてはうむり、再重さいぢゆうさふ、此れおほき を以てたふとしと爲すなり。〉

有以少為貴者:天子無介。祭天特牲。天子適諸侯,諸侯膳以犢。諸侯相朝,灌用鬱鬯,無籩、豆之薦。大夫聘禮以脯、醢。天子一食,諸侯再,大夫士三,食力無數。大路繁纓一就,次路繁纓七就。圭、璋特,琥、璜爵。鬼神之祭單席。諸侯視朝,大夫特,士旅之。此以少為貴也。

NDLJP:1118535/137 すくなきを以てたふとしと爲す者有り。天子はかいなし。天をまつるに特牲とくせいをもてし、天子 諸侯しよこうけば、諸侯ぜんとくを以てす。諸侯あひてうすれば、くわんするに鬱鬯うつちやうもちひ、 へんとうせんなし。大夫の聘禮へいれいかいを以てす。天子は一食、諸侯はさい、大夫士に三、 食力しよくりよくにはすうなし。大路たいろ繁纓はんえいしう次路じろ繁纓はんえいしうけいしやうひとりあり、くわうしやくとともにす。鬼神きしんまつり單席たんせき、諸侯、てうるときは、大夫はひとり、士は之 をりよにす。此れすくなきを以てたふとしと爲すなり。〉

有以大為貴者:宮室之量,器皿之度,棺椁之厚,丘封之大。此以大為貴也。

〈大を以て貴しと爲す者あり。宮室きうしつりやう器皿きべい棺椁くわんくわくこう丘封きうほうの大は、此れ大を以てたふとしと爲すなり。〉

有以小為貴者:宗廟之祭,貴者獻以爵,賤者獻以散;尊者舉觶,卑者舉角。五獻之尊:門外缶,門內壺,君尊瓦甒。此以小為貴也。

せうを 以てたふとしと爲す者あり。宗廟そうべうまつりは、たふとき者は、けんずるにしやくを以てし、いやしき 者はけんずるにさんを以てし、たふとき者はぐ、いやしき者はかくぐ。五けんそん門外もんぐわい門内もんだい、君のそん瓦甒ぐわぶ、此れせうを以てたふとしと爲すなり。〉

有以高為貴者:天子之堂九尺,諸侯七尺,大夫五尺,士三尺。天子諸侯臺門,此以高為貴也。

たかきを以 てたふとしと爲す者あり。天子のだうは九尺、諸侯は七尺、大夫は五尺、士は三尺、天 子諸侯は臺門たいもん、此れたかきを以て貴しと爲すなり。〉

有以下為貴者:至敬不壇,埽地而祭。天子諸侯之尊廢禁,大夫士棜、禁,此以下為貴也。

ひくきを以て貴しと爲す者あり、至 けいだんせず、地をはらひてまつる。天子諸侯のそんきんはいし、大夫、士はきんあり。 此れひくきを以てたふとしと爲すなり。〉

禮有以文為貴者:天子龍袞,諸侯黼,大夫黻,士玄衣纁裳。天子之冕,朱綠藻,十有二旒,諸侯九,上大夫七,下大夫五,士三,此以文為貴也。

NDLJP:1118535/138 れいぶんを以てたふとしと爲す者あり。天子てんし龍袞りようこん諸侯しよこう、大夫はふつ、士は玄衣げんい 纁裳くんしやう、天子のべんは、朱緑しゆりよくさう十有二りう、諸侯は九、上大夫は七、下大夫は五、士 は三、此れぶんを以てたふとしと爲すなり。〉

有以素為貴者:至敬無文,父黨無容,大圭不琢,大羹不和,大路素而越席,犧尊疏布鼏,樿杓;此以素為貴也。孔子曰:「禮,不可不省也!禮不同,不豐,不殺。」此之謂也。蓋言稱也。

を以てたふとしと爲す者あり。至敬しけいぶんな く、ちゝたうにはようなく、大圭たいけいたくせず。大羹たいかうくわせず。大路たいろにして越席くわつせき そん疏布そふべき樿杓ぜんしやくす。此れを以てたふとしと爲すなり。孔子曰く、禮あきらかにせ ざるべからざるなり。禮おなじからざれどもゆたかにせずそがずとは、此れのひなり。 けだしようを言ふなり。〉

禮之以多為貴者,以其外心者也;德發揚,詡萬物,大理物博,如此,則得不以多為貴乎?故君子樂其發也。禮之以少為貴者,以其內心者也。德產之致也精微,觀天下之物無可以稱其德者,如此,則得不以少為貴乎?是故君子慎其獨也。

れいの多きを以てたふとしと爲す者は、其の心をほかにする者を以てなり。とく發揚はつやうして 萬物ばんぶつあまねし、おほいにものをさむることひろし。かくの如くなれば則ち多きを以て貴し と爲さざるを得んや。故に君子くんしはつたのしむなり。禮のすくなきを以て貴しと爲す者 は、其の心をうちにする者を以てなり。徳産とくさん精微せいびなり。天下の物をるに、 以て其とくかなふべき者なし。かくの如くなれば則ち少きを以て貴しと爲さざるを んや、是の故に君子は其ひとりつゝしむなり。〉

古之聖人,內之為尊,外之為樂,少之為貴,多之為美。是故先王之制禮也,不可多也,不可寡也,唯其稱也。

いにしへ聖人せいじんうち之れたふとぶことを 爲し、ほか之れたのしむことをし、すくなきを之れ貴しと爲し、多きを之れよしと爲す。是の故に先王せんわうの禮をせいするや、多くすべからず、すくなくすべからず。たゞ其れかなへ り。〉

是故君子大牢而祭,謂之禮;匹士大牢而祭,謂之攘。管仲鏤簋、朱紘,山節、藻梲,君子以為濫矣。晏平仲祀其先人,豚肩不揜豆。澣衣濯冠以朝,君子以為隘矣。 是故君子之行禮也,不可不慎也;眾之紀也,紀散而眾亂。孔子曰:「我戰則克,祭則受福,蓋得其道矣。」君子曰:「祭祀不祈,不麾蚤,不樂葆大,不善嘉事,牲不及肥大,薦不美多品。」

〈是の故に君子大牢たいらうにしてまつる、之れをれいひ、匹士ひつし大牢たいらうにしてまつる、之れ をじやうと謂ふ。管仲くわんちう鏤簋るき朱紘しゆくわうあり、せつを山にしせつさうせり。君子以てらんと爲せ り。晏平仲あんぺいちう其の先人せんじんまつるに、豚肩とんけんとうおほはず、澣衣かんい濯冠たくくわんして以ててうせり、君子 以てあいと爲せり、是の故に君子の禮をおこなふや、つゝしまざる可からざるなり。しうなり。さんじてしうみだる。孔子曰く、われたゝかへば則ちち、まつれば則ちふくく と。けだし其みちを得ればなり。 NDLJP:1118535/139 君子くんし曰く、祭祀さいしもとめず、はやきよしとせず、はうだいたのしまず、嘉事かじしとせず、 せい肥大ひだいに及ばず、せん多品たひんよしとせず。〉

孔子曰:「臧文仲安知禮!夏父弗綦逆祀而弗止也。燔柴於奧,夫奧者,老婦之祭也,盛於盆,尊於瓶。」 禮也者,猶體也。體不備,君子謂之不成人。設之不當,猶不備也。禮有大有小,有顯有微。大者不可損,小者不可益,顯者不可揜,微者不可大也。故經禮三百,曲禮三千,其致一也。未有入室而不由戶者。君子之於禮也,有所竭情盡慎,致其敬而誠若,有美而文而誠若。君子之於禮也,有直而行也,有曲而殺也,有經而等也,有順而討也,有摲而播也,有推而進也,有放而文也,有放而不致也,有順而摭也。三代之禮一也,民共由之。或素或青,夏造殷因。

〈孔子曰く、臧文仲ざいぶんちういづくんれいを知らんや、 夏父弗綦かほふつき逆祀ぎやくしす。而るにとゞめざりき。さいさんけり。夫れさん老婦らうふまつりな り、ぼんり、へいそんするのみ。禮なる者はたいのごときなり、たいそなはらざ るを、君子之れを不成人ふせいじんふ。之をまうくることのあたらざるは、そなはらざるが ごとし。禮に大あり小あり、けんありあり。大なる者はそんすべからず、小なる者 はすべからず、けんなる者はおほふべからず、なる者は大にすべからず。故にけい れい三百、曲禮きよくれい三千、其のむね一なり。いましつに入るにらざる者はあらず。 君子の禮に於けるや、じやうつくつゝしみつくし其けいいたしてまことなる所あり。にして ぶんありてまことなるあり。君子の禮に於けるや、ちよくにしておこなふあり、きよくにしてぐ あり、けいにしてとうなるり、じゆんにしてつるあり、りてほどこすあり、してすゝ むるあり、ならひてぶんなるあり、ならうてきはめざるあり、じゆんにしてひろふあり。 NDLJP:1118535/140 三代のれいは一なり。たみともに之をもちふ。あるひあるひせいはじいんる。〉

周坐尸,詔侑武方;其禮亦然,其道一也;夏立尸而卒祭;殷坐尸。周旅酬六尸,曾子曰:「周禮其猶醵與!」

しうせしめ、せういうつねし、其の禮亦然り、其のみち一なり。たしめ てまつりふ。いんせしむ、しうは六旅酬りよしうす。曾子そうし曰く、しうの禮は其れ きよのごときか。〉

君子曰:「禮之近人情者,非其至者也。郊血,大饗腥,三獻爓,一獻孰。」是故君子之於禮也,非作而致其情也,此有由始也。是故七介以相見也,不然則已愨。三辭三讓而至,不然則已蹙。故魯人將有事於上帝,必先有事於頖宮。晉人將有事於河,必先有事於惡池。齊人將有事於泰山,必先有事於配林。三月繫,七日戒,三日宿,慎之至也。

〈君子曰く、禮の人情にんじやうちかき者は、其のいたれる者にあらざるな り。かうにはけつ大饗だいきやうにはせい、三獻にはせん、一獻にはじゆく、是の故に君子の禮に於 けるや、して其のじやういたすにあらざるなり。此れ由りてはじまるところるなり。 是の故に七かい以てあひるなり。然らざれば則ちはななかくなり、三じやうして至る。 然らざれば則ちはなはしゆくなり、故に魯人ろひとまさ上帝じやうていことあらんとすれば、必ず先づ 頖宮はんきうに事あり。晉人しんびとまさに事あらんとすれば、必ず先づ惡池をちに事あり。齊人せいひとまさ泰山たいざんに事あらんとすれば、必ず先づ配林はいりんに事あり。三月つなぎ、七日かいし、三日 宿しゅくす、しんいたりなり。〉

故禮有擯詔,樂有相步,溫之至也。禮也者,反本(脩)〔循〕古,不忘其初者也。故凶事不詔,朝事以樂。醴酒之用,玄酒之尚。割刀之用,鸞刀之貴。莞簟之安,而稾鞂之設。是故先王之制禮也,必有主也,故可述而多學也。

〈故に禮に擯詔ひんせうあり、がく相歩しやうほあり、をんいたりなり。禮は もとかへいにしへをさめ、其のはじめわすれざる者なり。故に凶事きようじにはげず、朝事てうじに はがくを以てす。醴酒れいしゆを之れもちひ、玄酒げんしゆを之れかみにし、割刀かつたうを之れ用ひて、鸞刀らん(判読困難)を 之れたふとび、莞簟くわんてんに之れやすんじて、稾鞂かうかつを之れまうく。是の故に先王の禮をせいする や、必ずしゆあるなり。故にべて多くまなぶべきなり。〉

君子曰:「無節於內者,觀物弗之察矣。欲察物而不由禮,弗之得矣。故作事不以禮,弗之敬矣。出言不以禮,弗之信矣。故曰:禮也者,物之致也。」

NDLJP:1118535/141 君子曰く、うちせつなき者は、物をても之をさつせず、物をさつせんとほつして禮に 由らざれば、之を得ず。故に事をすに禮を以てせざれば、之れをけいせず、げんいだすに禮を以てせざれば、之れをしんぜず。故に曰く、禮なる者は物のむねなり。〉

是故昔先王之制禮也,因其財物而致其義焉爾。故作大事必順天時,為朝夕必放於日月,為高必因丘陵,為下必因川澤。是故天時雨澤,君子達亹亹焉。 是故昔先王尚有德,尊有道,任有能。舉賢而置之,聚眾而誓之。是故因天事天,因地事地,因名山升中于天,因吉土以饗帝于郊。升中于天,而鳳凰降,龜龍假。饗帝於郊,而風雨節,寒暑時。是故聖人南面而立而天下大治。

〈是 の故にむかし先王せんわうの禮をせいするや、其財物さいぶつりて、其義をいたすのみ。故に大事だいじ すには、必ず天時てんじしたがひ、朝夕てうせきを爲すには、必ず日月じつげつならひ、たかきを爲すには 必すママ丘陵きうりようり、ひくきを爲すには必ず川澤せんたくる。是の故にてん雨澤うたくを時にし、 君子みな亹亹びびす。是の故にむかし先王せんわう有徳いうとくたふとび、有道いうだうたふとび、有能いうのうにんじ、けんげて之をき、しうあつめて之れにちかふ。是故にてんりて天につかへ、り てつかへ、名山めいざんりて、ちうてんぐ、吉土きつどりて、以てていかうきやうす。 ちうてんげて、鳳皇ほうわうママくだり、龜龍きりよういたる。ていかうきやうして、風雨ふううせつあり、寒暑かんしよとき あり。是の故に聖人せんママじん南面なんめんしてち、而して天下てんかおほいにをさまる。〉

天道至教,聖人至德。廟堂之上,罍尊在阼,犧尊在西。廟堂之下,縣鼓在西,應鼓在東。君在阼,夫人在房。大明生於東,月生於西,此陰陽之分,夫婦之位也。 君西酌犧象,夫人東酌罍尊,禮交動乎上,樂交應乎下,和之至也。

NDLJP:1118535/142 天道てんだう至教しけうなり、聖人せいじん至徳しとくなり。廟堂べうだうかみに、罍尊らいそんに在り、犧尊ぎそん西に在り、 廟堂べうだうしもに、縣鼓けんこ西に在り、應鼓おうこ東に在り、君に在り、夫人ばうに在り。大明たいめい東 に生じ、月西に生ず。此れ陰陽いんやうぶん夫婦ふうふの位なり。君は西に犧象ぎしやうみ、夫人 は東に罍尊らいそんむ。れいかみまじはうごき、がくしもまじはおうず、くわの至なり。〉

禮也者,反其所自生;樂也者,樂其所自成。是故先王之制禮也以節事,脩樂以道志。故觀其禮樂,而治亂可知也。蘧伯玉曰:「君子之人達。」故觀其器,而知其工之巧;觀其發,而知其人之知。故曰:君子慎其所以與人者。

〈禮は、 其のりてしやうずる所に反る。がくは、其のりて成る所をたのしむ。是の故に先王の 禮を制するや、以て事をせつし、がくをさめて以てこゝろざしみちびく、故に其禮樂を治亂ちらん知るべきなり。蘧伯玉きよはくぎよく曰く、君子の人は達す、故に其て其こうたくみ を知り、其はつて、其人の知を知る。故に曰く、君子其の人をともにする所以の 者をつゝしむと。〉

(太)〔大〕廟之內敬矣!君親牽牲,大夫贊幣而從。君親制祭,夫人薦盎。君親割牲,夫人薦酒。卿大夫從君,命婦從夫人。洞洞乎其敬也,屬屬乎其忠也,勿勿乎其欲其饗之也。納牲詔於庭,血、毛詔於室,羹定詔於堂,三詔皆不同位,蓋道求而未之得也。設祭于堂,為祊乎外,故曰:於彼乎?於此乎?

大廟たいべううちけいす。君みづかせいき、大夫へいさんして從ふ。君みづかせいして祭り、夫人あうすゝむ。君親らせいき、夫人さけすゝむ。けい大夫たいふは君に從 ひ、命婦は夫人に從ひ、洞洞とうとうとして其れけいなり。屬屬しよくとして其れ忠なり、 勿勿ふつとして其れ其の之れをけんことをほつす。せいるゝときていげ、けつまう は室にげ、あつものにえたるときはだうげ、三せう皆位を同じくせず。けだし求めて未 だ之を得ざるをふなり。祭をだうまうけ、はうほかに爲す。故に曰く、れに於け るか、此れに於けるか。〉

一獻質,三獻文,五獻察,七獻神。

NDLJP:1118535/143けんしつ、三けんぶん、五獻はさつ、七けんしんなり。〉

大饗,其王事與?三牲、魚、腊,四海九州之美味也,籩、豆之薦,四時之和氣也。內金,示和也。束帛加璧,尊德也。龜為前列,先知也。金次之,見情也。丹、漆、絲、纊、竹、箭,與眾共財也。其餘無常貨,各以其國之所有,則致遠物也。其出也,《肆夏》而送之,蓋重禮也。

大饗たいきやうは其れ王事わうじか。三せいぎよせき は、四かい九州きうしう美味びみなり。へんとうせんは、四時しじ和氣くわきなり。きんるゝはくわを示す なり。束帛そくはくへきを加ふるはとくたふとぶなり。前列ぜんれつに爲すはを先にするなり。 きん之れに次ぐはじやうあらはすなり。たんしつくわうちくぜんは、しうざいを共にするなり。其 常貨じやうくわなし。各〻おの國の有る所を以てするは、則ち遠物ゑんぶつを致すなり。其の づるや、肆夏がいかして之をおくる。けだれいおもんずるなり。〉

祀帝於郊,敬之至也。宗廟之祭,仁之至也。喪禮,忠之至也。備服器,仁之至也。賓客之用幣,義之至也。故君子欲觀仁義之道,禮其本也。君子曰:「甘受和,白受采;忠信之人,可以學禮。苟無忠信之人,則禮不虛道。是以得其人之為貴也。」

ていかうまつるは、けいの至 なり。宗廟の祭は、仁の至なり。喪禮さうれいちういたりなり。服器ふくきそなふるは、仁の至な り。賓客ひんかくへいを用ふるは、いたりなり。故に君子仁義じんぎの道をんと欲せば、禮は 其のもとなり。君子くんし曰く、かんくわを受け、はくさいを受け、忠信ちうしんの人、以て禮をまな ぶ可し。いやしくも忠信の人無くば、則ち禮むなしくおこなはれず。是を以て其人を得る を之れたふとしと爲すなり。〉

孔子曰:「誦詩三百,不足以一獻。一獻之禮,不足以大饗,大饗之禮,不足以大旅,大旅具矣,不足以饗帝。毋輕議禮!」 子路為季氏宰。季氏祭,逮闇而祭,日不足,繼之以燭。雖有強力之容,肅敬之心,皆倦怠矣。有司跛倚以臨祭,其為不敬大矣。他日祭,子路與,室事交乎戶,堂事交乎階,質明而始行事,晏朝而退。孔子聞之,曰:「誰謂由也而不知禮乎?」

〈孔子曰く、三百をしようするも、以て一けんらず、一 けんの禮は、以て大饗たいきやうに足らず、大饗たいきやうれいは、以て大旅たいりよに足らず、大旅たいりよそなはる も、以てていきやうするに足らず、輕〻かろがろしくれいするなかれ。子路しろ季氏きしさいたり。 季氏きしまつりに、あんおよびて祭り、日も足らずして、之れにぐにしよくを以てせり。 強力きやうりよくようママ肅敬しゆくけいの心ありと雖も、皆倦怠けんたいせり。有司いうし跛倚ひいして以て祭に臨めり。 其の不敬ふけいたること大なり。他日たじつまつるとき、子路しろあづかる。室事しつじまじはり、堂事だうじかいまじはり、質明しつめいにして始めて事をおこなひ、晏朝あんてうにして退けり。孔子之れを聞きて 曰く、誰か由や禮を知らずとふや。〉

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原文:

この作品は1930年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。

 
翻訳文:

この著作物は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の発効日(2018年12月30日)の時点で著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以上経過しているため、日本においてパブリックドメインの状態にあります。


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