甲陽軍鑑/品第十九
天文八年己亥正月大元日庚午
右亥の年中は晴信公無行儀にてましますこと中々其時代の衆物語り仕ながらも不㆑残申す事は成難き程の様子と相聞へ候其子細は若き小殿原衆或は若き女房達を集め給ひ日中にも御座敷の戸を立て廻し昼といへども蠟燭を立て一切昼夜の弁もなく夜るは乱れ鳥迄の狂ひ昼は九ツ時分迄おより候へば御前衆許り奉公申す様にて其余は夜昼つめても大将の御目にかゝることなしことさら日〳〵出仕の近習などの年来の侍は夜々に乱鳥迄罷有さて又夜をあかし腹中もちがひ迷惑さたのかぎりなり適おもてへ御出の時分は出家衆をあつめ詩を作り給ふ御会あれは猶以てしみこほりたる模様にて諸【 NDLJP:74】侍御目にかゝること少もならず家老衆いさめの御異見も申得ざるは晴信公父信虎公鬼神の如くに近国迄も申しならはす大将をなにの造作もなく押し出し給ひ其上其年中に信州の大将衆晴信公より老功なるがしかも味方の人数一倍にて甲州の内へ乱入たるに四度迄合戦をとげ四度ながら御旗本にて勝利を得給ふ故誰にても推参申す人なくて既に武田の家廿七代目にめつきやくせんとすと風聞は
甲州賢太守武田晴信公者本朝射騎之名家
万年葉巣野拙妙安子
新正口号
淑気未㆑融
風送鶯
鳥語花中管絃
飛
春山如㆑癸
簷外
古寺看㆑花
紺藍無㆔処
惜
檐外紅残
新緑
春去
薔薇
庭下
満院薔薇香露新 雨余紅色別留㆑春
旅舘聴㆑鵑
空山緑樹雨晴辰 残月
閏月花
妖艶紅花出㆓寿安
便面蘆間有㆑漁
山色水光烟接
便面有㆑鴈
水緑山青欲
便面水仙梅花
風送
昏月横斜欲
便面蘆間白鷺
蘆葦清風埀㆓頂糸㆒ 窺
寄㆓濃州僧
気
龍宝