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  • 六千五百四十二戸戸口は大正六年十二月末調あり。 半島の地たる関東山脈の支派小仏(こぼとけ)峠の東南に延長し、久良岐、鎌倉両郡の地よりさらに南方海中に出せる丘陵性の山地にして、海岸及河流に沿ふて極めて狭少なる平野を有するに過ぎず、土地概して高崇なり。 半島における著名なる山岳は、概ね中央部に駢列し…
    39キロバイト (5,823 語) - 2024年2月12日 (月) 08:34
  •  そのころ、本家の梅屋では隣村湯舟沢から来る人足たちの宿をしていた。その縁故から、初代夫婦はなじみの人足に頼んで、春先の食米(くいまい)三ずつ内証で借りうけ、秋米(あきまい)で四ずつ返すことにしていた。これは田地を仕付けるにも、旅籠屋(はたごや)片手間では芝草の用意もなりかねるところから、麦で少しずつ刈り造ることに生活の方法を改めたからで。…
    704キロバイト (133,425 語) - 2019年9月29日 (日) 05:04
  • と名づくる小渠を溯洄するを無上の樂とす。余は與らず。此一二日は天候一變し、冷雨窓を打ち、夜は纊を襲ぬる程なり。 頃日又十字街頭に老婦の小車を停むるあり。是れ櫻の實を賣るなり。圓にて量り、新聞反古を卷きて之を包む。これを「ヂユウテ」 Dute と名づく。一包五乃至十片錢 Pfennige…
    1キロバイト (53,077 語) - 2020年6月18日 (木) 15:55
  • 望を収むるは、米を計りて人に渡すがごとし。升(ます)取りの巧みなる者は一の米を一三合に計り出し、その拙なる者は九升七合に計り込むことあり。余輩のいわゆる分に適するとは、計り出しもなくまた計り込みもなく、まさに一の米を一に計ることなり。升取りには巧拙あるも、これによりて生ずるところの差はわず…
    277キロバイト (54,794 語) - 2023年8月22日 (火) 12:51
  • ものである。その縄にも縛られずに平気で黙りたい間黙っていることは、或る年齢を過ぎては容易に出来なくなる。大村と純一とはまだそれが出来た。  純一が炭(すみとり)を引き寄せて炭をついでいる間に、大村は便所に立った。その跡で純一の目は、急に青い鳥の脚本の上に注がれた。Charpentier(シャルパンチエエ)…
    404キロバイト (79,999 語) - 2023年10月17日 (火) 13:52
  • 上げたかたが、こんな時に一肌(ひとはだ)脱がないのはうそです。」 「いえ、ですからね、あの兼吉(かねきち)に二俵、道之助に七、半四郎に五俵二――都合、三口合わせて三石七は容赦すると言っているんですよ。」  金兵衛の挨拶(あいさつ)だ。  半蔵はこの人の言うことばかりを聞いていられなかった。庄…
    648キロバイト (123,779 語) - 2019年9月29日 (日) 05:04
  • ら集まって来て、洗いたての芋殻(いもがら)(ずいき)が半蔵の眼前に山と積まれた。梅酢(うめず)と唐辛子(とうがらし)とを入れて漬ける四樽(しとだる)もそこへ持ちばれた。色も紅(あか)く新鮮な芋殻を樽のなかに並べて塩を振る手つきなぞは、お民も慣れたものだ。…
    731キロバイト (142,362 語) - 2019年9月29日 (日) 05:05
  • ですこしづゝ刈り作り、その頃本家蜂屋では隣村湯舟澤から來る人足の宿をしてゐたところから思ひ付いて、その馴染の人達から米三づゝ内證で借り受け、それを食米に宛てた。そして秋米で四づゝ返すほどに苦心した。これとても彼の祖母が口をきいて、隣村の人足達に特に頼んだから出來たことであつたといふ。…
    282キロバイト (57,833 語) - 2021年5月19日 (水) 16:37
  • るまで、空(くう)に憑(よ)って思い浮べることが出来たのである。  貞固(さだかた)は謹んで聴(き)いていた。そして抽斎が「子曰(しのたまわく)、噫筲之人(ああとしょうのひと)、何足算也(なんぞかぞうるにたらん)」に説き到(いた)ったとき、貞固の目はかがやいた。…
    642キロバイト (126,753 語) - 2022年3月23日 (水) 18:11
  • の古い法諡に、軒と云ひ室と云つて、ことさらに院字を避けたらしい形迹のあるのは、伊藤東涯の「本天子脱屣之後、居于其院、故崩後仍称之、臣下貴者亦或称、今筲之人、父母既歿、必称曰某院、尤不可也、蓋所謂窃礼之不中者也、有志者忍以此称其親也哉」と云つた如く俗を匡(たゞ)すに意があつたのではなからうか。…
    1.54メガバイト (342,889 語) - 2024年3月25日 (月) 01:52