正教要理問答/十誡問答の一

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十誡じっかい問答もんどう[編集]

一 われなんぢしゅかみなりわれほか何物なにものをもかみなか

二 偶像ぐうざうおよおようへてんにあるものしたにあるものならびしたにあるものならびしたみづうちにあるものなん形状かたちをも造揑つくなかれこれををがなか

三 なんぢしゅかみみだりくちとなふるなか

四 「スボタ」の安息日あんそくじつ)をおぼえてこれせいとすべし六日のあひだはたらきてなんぢ一切いっさいわざすべし第七日はなんぢしゅかみの「スボタ」のなり

五 なんぢ父母ふぼうやまふべし福祥さいはひなんぢのぞみて長寿いのちながき

六 ひところなか

七 いんおこななか

八 偸盗ぬすみするなか

九 妄證もうしようするなか

十 隣人となりつまおよそのぼくうしろばなどならびすべ隣人となりものむさぼなか

問 この十誡じっかいたれたれさづけられしものなりや

答 この十誡じっかいイヅライリたみエギペトのがでてハナアン旅行りょこうせしときシナイ山においかみよりモイセイさづけられしものなり

問 最初さいしょこの十誡じっかいなにしるされしや

答 ふたつの石板せきばんしるされたりしかしひとつの石版せきばんにははじめの四かでうしるされ其中そのうちにはかみたいするの本分ほんぶんめいぜられたりまた石版せきばんにはほかの六かでうしるされ其中そのうちにはひとたいするの本分ほんぶんめいぜられたり

問 十誡じっかいの第一かでう如何いかとなへらるるや

答 『われなんぢしゅかみなりわれほか何物なにものをもかみなかれ』

問 かみこのいましめもっ如何いかなることをきんたまふや

答 かみみとめてかみうやまふことすなはかみしんかみのぞかみあいかみむねしたがかみいのおよ独一ひとつかみをがほかかみをがむことをきんたま

問 まことかみみとむるのもっと便たよりはなになりや

答 教書をしへのほんむことなり

問 われかみ使つかひおよしょ聖人せいじん如何いかやうたつとむべきや

答 われかれたつとむはかみけるがごとくするにあらわれよりもなほ一層いつそうかみちかものとしてたつとまたわれためかみめぐみかはもとむるものとしていのるなり

問 このいましめやぶるのつみなになりや

答 独一ひとつまことかみをがまずしておほくのよこしまなるかみをがまことうたきづつけていつはりなるをしへて(端者たんしゃまことの教会にそむはなれ(教者けうしゃ卜筮うらなひ呪詛まじなひしんかみ行為しわざにあらざることをみだりにかみ行為しわざなりとしんかみいましめまなぶことをおこたかみらいせずしてかへりひとらいすることなどなり

問 十誡じっかいの第二か條は如何いかとなへらるるや

答 『偶像ぐうざうおよおようへてんにあるものしたにあるものならびしたにあるものならびしたみづうちにあるものなん形状かたちをも造揑つくなかれこれををがなかれ』

問 かみこのいましめもっ如何いかなることをきんたまふや

答 偶像ぐうざうすなは虚妄きょもうなる神仏しんぶつざうをがむことをきんたま

問 教人けうじん如何いかなるものをかみとしてをがむや

答 てんるものにては太陽たいやう月星つきほしごときものにあるものにてはとりけものくさごときもの水中にるものにては魚介さかなむしごときものなどなり

問 聖像せいざうをがむはこのいましめやぶるものにあらざるや

答 このいましめやぶるものにあら如何いかんとなればわれ聖像せいざうをがむは聖像せいざう其物そのものをがむにあらずして其中そのうちえがかれたるかみをがむがためなればなり

問 十誡じっかいの第三か條は如何いかとなへらるるや

答 『なんぢしゅかみみだりくちとなふるなかれ』

問 かみこのいましめもっ如何いかなることをきんたまふや

答 軽々かろがろしくかみぶことをきんたますなは談笑だんせうときかみまたいたづらちかひあるひいつはりてちかひなどなり

問 しからば如何いかなるときかみとなふべきや

答 たうときけうときちかひときとなふべしこれとなふるときおそれつつしみとをもってすべし

問 十誡じっかいの第四か條は如何いかとなへらるるや

答 『スボタの日をおぼえてこれせいとすべし六日のあひだはたらきてなんぢ一切いっさいわざすべし第七日はなんぢしゅかみのスボタの日なり』

問 かみこのいましめもっ如何いかなることをめいたまふや

答 いつ週間しゆうかんうち六日のあひだおのれ職業しよくげふいとなみ第七日には職業しよくげふやすみてもっぱこころかみくることをめいたますなはその聖堂せいだういたりてたういへりては教書をしへのほんまたぜんおこなひをなどのことをめいたま

問 いつ週間しゆうかんちう如何いかなる聖日せいじつてられしや

答 旧約きうやくおいてはかみ世界せかいつくおはりてやすたまひしスボタの聖日せいじつてられしが新約しんやくいたハリストス復活よみがへたまひしときよりしてその復活よみがへりを「スボタ」のへて聖日せいじつてられたり

問 しゅ復活よみがへたまひしほか聖日せいじつてられしはなきや

答 り第一しゅ祭日さいじつ例令たとへしゅ降誕かうたんさい(一月六日)しゅ洗禮せんれいさい(一月十八日)第二せい祭日さいじつ例令たとへせい誕生たんじやうさい(九月廿日)せい福音ふくいんさい(四月六日)第三しょ聖人せいじん祭日さいじつ例令たとへぜん約翰イオアンめいさい(九月十日)使徒しとちやう彼得ペートル保羅パエルおくさい(七月十一日)などなり

問 其外そのほか如何いかなることをこのいましめのうちにめいぜらるるや

答 教会けうくわいにてさだめられたる精進しやうじんまもることをめいぜらる

問 教会にて如何いかなる精進しやうじんさだめられしや

答 第一だい精進しやうじんなづけらるる四十日の精進しやうじんなりこの精進しやうじんわれしゅイイスス ハリストスあれおいて四十日の断食だんじきせられしことにのつとりててられしものにてしゅ復活ふくくわつさいむかふるのそなへをすがためたり

第二しゅ降誕祭かうたんさいぜん精進しやうじんすなは一名いちめいヒリップ精進しやうじんづけらるるものなり(十一月二十七日すなはち)せい使徒しとヒリップ記念きねんよりはじまりて翌年よくねん一月六日の降誕祭かうたんさいまでつづく)
第三せい就眠祭しうみんさいぜん精進しやうじんなり(八月十三日より同月二十七日まで)
第四彼得ペートル保羅パエルおくさい精進しやうじんなり(せい三者さんじゃさい一週間をはじまり七月十一日までにいたゆえこの精進しやうじんかずすべしゅ復活ふくくわつさいがふによりて長短ながきみじかき相違ちがひあり)
みぎほか一日の精進しやうじんあるひたん精進しやうじんづけらるるものありごと
第一きょえいせいさい(九月六日)
第二ぜん約翰イオアンめいさい(九月十日)
第三割禮くわつれいさい(一月十三日)
第四かく週間しうかん水曜すいやう金曜きんやう

問 何故なにゆえ水曜すいやう金曜きんやう両日りやうじつ精進しやうじんすや

答 水曜すいやうおいてするはわれしゅイイスス ハリストス悪人あくにんわたされたまひしをおくするがまた金曜きんやうおいてするはそのくるしみとをおくするがためなり

問 このいましめやぶるのつみなになりや

答 職業しよくげふをもつとめずしてむなしくらん放埓はうらつおく聖日せいじつ祭日さいじつなど信徒しんじやたるのおこなひさずまた精進しやうじんをもまもらざるなどなり