春秋左氏傳/002 桓公/17

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訓読文

【經】　十有《いう》七年、春正月丙辰《へいしん》、公、齊侯《せいこう》・紀侯《きこう》に會《くわい》して黄《くわう》に盟《ちか》ふ。二月丙午《へいご》、公、邾《ちゆ》の儀父《ぎほ》に會して趡《し》に盟ふ。夏五月丙午、齊の師《し》と奚《けい》に戰《たゝか》ふ。六月丁丑《ていちう》、蔡侯《さいこう》封人《ほうじん》卒《しゆつ》す。秋八月、蔡季《さいき》、陳《ちん》より蔡に歸《かへ》る。癸巳《きし》、蔡の桓侯《かんこう》を葬《はうむ》る。宋人《そうひと》・衞人《ゑいひと》、邾を伐《う》つ。冬十月朔《さく》、日《ひ》之を食《しよく》するあり。

【傳】　十七年（周ノ莊王二年）春、黄^[1]に盟ふとは、齊・紀を平《たひら》がせ、且《ま》た衞の故《こと》を謀《はか》る^[2]なり。（→莊公五年）邾の儀父と趡^[3]に盟ふは、（隱公元年→）蔑《べつ》の盟《ちかひ》^[4]を尋《あたゝ》むるなり。
　夏、齊と奚^[5]に戰ふは、疆《さかひ》の事《こと》なり。是《こゝ》に於《おい》て齊人、魯の疆を侵《おか》す。疆吏《きやうり》來《きた》りて告ぐ。公曰く、『疆場《きやうえき》の事は、慎《つゝし》んで其一《いつ》を守《まも》り^[6]て、其不虞《ふぐ》に備《そな》へよ。姑《しばら》く、備ふる所《ところ》を盡《つく》せ。事至《いた》らば戰へ。又何ぞ謁《と》はん』と。
　蔡の桓公［＃「公」はママ］卒す。蔡人、蔡季^[7]を陳より召《まね》く。秋、蔡季、陳より蔡に歸るとは、蔡人、之を嘉《よみ》す^[8]ればなり。
　邾を伐つは、宋の志《こゝろざし》なり。
　冬十月朔、日之を食するあり。書せざるは、官《くわん》、之を失《うしな》ひしなり。天子に日官《にちくわん》あり、諸侯《しよこう》に日御《にちぎよ》^[9]あり。日官は卿《けい》に居《ゐ》て、以て日《ひ》を底《いた》す^[10]、禮なり。日御は日を失はず、以て百官に朝《てう》に授《さづ》くるなり。
　初《はじ》め、鄭伯^[11]將《まさ》に高渠彌《かうきよひ》を以て卿となさんとせり。昭公《せうこう》、之を惡《にく》み、固《かた》く諫《いさ》めしかど、聽《き》かれざりき。昭公の立つや、其の己《おのれ》を殺さんことを懼《おそ》れ、辛卯《しんぼう》、昭公を弑《し》して公子亹《こうしび》を立つ。君子《くんし》謂《い》へらく、『昭公、惡む所《ところ》を知《し》れり』と。公子達《こうしたつ》^[12]曰く、『高伯《かうはく》は其れ戮《りく》せられんか。惡《にくみ》に復《むく》^[13]ゆること已甚《はなはだ》し』と。（→桓公十八年）

註

1. 齊の地。
2. 十三年、紀、齊を敗る。故に紀を齊に平がするなり。衞朔、齊に在り、齊、之を納れんと欲す、故に其事を謀る也。其後、齊、卒に紀を遷し、魯卒に齊に會して朔を納る。則ち齊魯の強弱具さに見ゆ。
3. 魯の地。
4. 蔑の盟は、隱公元年に在り。
5. 魯の地。
6. 一定の分界を守る也。
7. 桓公の弟。
8. 蔡人、之を嘉するを以て字を稱して告ぐる也。
9. 日官日御は歴數を司どるもの。
10. 底は至す也。其期度を推至する也。
11. 先代莊公。
12. 魯の大夫。
13. 復は報復する也。