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新体詩抄/玉の緒の歌(巽軒居士)

提供:Wikisource

余蚤ニ新體ノ詩ヲ作ラント欲セシト雖モ、其容易ノ業ナラザルヲ慮リ、先ツ和漢古今ノ詩歌文章ヲ學ビ、ソレヨリ漸次ニ新體ノ詩ヲ作ルノ路ヲ為サントシケルニ、一日尚今居士ハムレツトノ譯詩ヲ示サル、其文俗語ヲ交フト雖モ、反リテ古歌ヤ漢詩ノ解シガタキニ勝ル、因リテ余之ヲ歎賞シテ學藝雜誌第六號ニ載ス、次イテ丶山仙士モ亦ハムレツト并ニカーヂナル、ウルシー等ノ作アリ、是ニ於テ余思フニ古今ヲ問ハズ、東西ヲ論セス、凡ソ新體ノ詩ノ流行スルハ、大抵偶然ニ出ヅル者ニテ、必ズシモ百方鍊磨ノ勞ヲ俟タサルナリ、サレバ尚今居土丶山仙士ノ作ル所モ新體ノ詩ノ始メナルヤモ知ルベカラズ、乃チ自カラロングフェロー氏ノ玉の緒の歌ヲ譯シ、二君ヲシテ新體ノ詩ヲ剏造スルノ功ヲ專ラニセシメザラント欲ス余ノ作ル所略二君ニ同ジ、但〻二君ハ韻ヲ蹈マズ余ハ試ニ韻ヲ蹈ム、是レ其差ナリ、或ル人余ガ譯詩ヲ見テ、大ニ笑フ、盖シ或ル人ノ如キハ文學ノ盛衰興廢スル所以ヲ知ラザル者ニテ、深ク尤ムルニ足ラズ、夫レ明治ノ歌ハ、明治ノ歌ナルベシ、古歌ナルベカラズ、日本ノ詩ハ日本ノ詩ナルベシ、漢詩ナルベカラズ、是レ新體ノ詩ノ作ル所以ナリ、若シ夫レ押韻ノ法、用語ノ格等ハ、次第ニ改良スベキノミ、一時ニ為スベカラズ、看官幸ニ之ヲ諒察セヨ、

巽軒居士識

玉の緒の歌(一名人生の歌)

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眠むる心死ねる 見ゆる形おほろ
あすをも知らね我命 れはき夢そかし
などゝあいふ惡し

我命こそまこと 我命こそたしか
終りの塲所 て又散ると
いふからだのうへのこと

人の願よろこび 人の願かなしみ
人の願これ 唯怠たらずはたらきて
今日よりまさる明日をまて

わざ久しく時馳す 强き胸たも亦たえ
皷の如く撃ち續け 一日
死出の旅をぞやす

爭ひ多き世の中 此身を寄せて先鞭さきがけ
りてま進むべし き啞とる勿れ
かるゝ牛とる勿れ

如何未來樂しき 如何空しき過去
之を捨ておきて われを忘れず神を知り
はたらくべき今日

すぐれたる人世多し われとても人相同じ
勉め勵ま斯くらん ゆめ怠ら勉め
長く殘さん此名を

海より荒き世の中 舟失ひて波の間
たゞよふ我友は 我名を聞きて勇ま
我名を聞きて進ま

さすれ氣を張りて 事業しわざかり心して
如何る運も事とせ 髙き至れ馳せゆけよ
樂あるぞはたらけよ
この文書は翻訳文であり、原文から独立した著作物としての地位を有します。翻訳文のためのライセンスは、この版のみに適用されます。
原文:

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。

 
翻訳文:

この著作物は、1944年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。