新・文化庁の組織体制の整備と本格移転に向けて

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新・文化庁の組織体制の整備と本格移転に向けて

平成29年7月25日

文化庁移転協議会


 文化庁の移転については、昨年3月の「政府関係機関移転基本方針」等の文書[1](以下「基本方針等」という。)において、外交関係や国会対応の業務、政策の企画立案業務(関係府省庁との調整等)の事務についても現在と同等以上の機能が発揮できることを前提とした上で、文化庁に期待される新たな政策ニーズ等への対応を含め、文化庁の機能強化を図りつつ、全面的に移転するものとされている。

 既に本年4月には、文化庁の組織として地域文化創生本部(以下「本部」という。)を京都に設置し、地元の協力等も得ながら先行的に事務・事業を進めているところである。

 文化庁の機能強化を図る抜本的な組織見直し、東京での事務体制の構築や移転時期等については、基本方針等において示された視点や、本部での先行的取組及びICTの活用等を通じた遠隔地の部局との連携の方法や課題についての検証を踏まえつつ検討することとされ、移転場所等を、平成29年8月末を目途に、決定するものとされている。

 文化庁移転協議会は、これまでの検討を踏まえ、新・文化庁の組織体制の整備と本格移転に向け、以下のとおり取りまとめた。

1.新たな文化芸術基本法の施行[編集]

 この度、文化芸術振興基本法が改正され、新たな文化芸術基本法(以下「改正基本法」という。)として6月23日に公布・施行された。

 改正基本法の趣旨は、文化芸術の振興にとどまらず、観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の分野における施策を同法の範囲に取り込むとともに、文化芸術により生み出される様々な価値を文化芸術の継承、発展及び創造に活用しようとするものである。法律の題名や文化芸術教育の重要性等の基本理念の改正のほか、文化芸術推進基本計画[2]の策定及び関係行政機関相互の連絡調整を行う文化芸術推進会議の設置や、食文化等の振興、地域の振興につながる芸術祭への支援、国際交流の推進や人材支援の充実、高齢者及び障害者の文化芸術活動の充実、文化芸術施策推進のための調査研究、民間事業者等との連携などの新たな政策ニーズについて、規定を追加している。

 さらに、改正基本法はその附則において、「政府は、文化芸術に関する施策を総合的に推進するため、文化庁の機能の拡充等について、その行政組織の在り方を含め検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」ものとしている。

2.新・文化庁の組織体制[編集]

 改正基本法を受け、文化芸術に関する施策を強力に推進するため、平成30年通常国会を目途に文部科学省設置法の改正法案を提出するとともに、平成30年度内に組織改革を行い、文化庁の機能の拡充を図る。

 新・文化庁においては、文化芸術によって公共的・社会的又は経済的な様々な価値が創出され、それが更なる文化芸術の継承、発展及び創造に活用されるような施策の展開が求められている。このため、新・文化庁は、文化芸術立国を目指し、文化芸術の固有の意義と価値を尊重しつつ、今日の政策ニーズに対応し、関連分野における施策との有機的な連携が取れる組織体制を構築する必要がある。

(1)国家行政組織としての文化庁の課題[編集]

 長い歴史とともに積み重ねられてきた我が国の多様な文化は、我が国や全国各地域のアイデンティティー形成の礎である。また、世界に向けて日本をアピールする源でもある。文化庁における行政はこれまで、文化財の保護や芸術の振興、国語や著作権制度等の文化の基盤整備に寄与してきたが、今日においては、対象分野の広がりや政策手法の多様化などの時代の変革に対応できていないという課題に直面している。

 現下の課題を集約すれば、次のとおりである。

① 規制や助成などの執行業務が多くを占め、機動的な政策立案が困難である。
② 文化芸術概念の拡張への対応と、資源としての活用策が不十分である。
③ 政策の基盤となる調査研究や効果分析が不十分である。

(2)新・文化庁構築に向けた機能強化と組織改革の方向性[編集]

 改正基本法の規定や昨年11月の文化審議会答申[3]を受けて、文化庁が強化すべき機能として、次の事項が挙げられる。

【文化政策の対象拡大】
  • 科学技術と融合した文化創造や若者文化の萌芽支援など新文化創造
  • 食文化をはじめとする生活文化など複合領域の文化芸術振興
  • 近現代の文化遺産や美術への対応
  • 文化芸術資源を活用した地方創生、地方公共団体文化政策との連携
【文化芸術活動の基盤充実】
  • 文化芸術教育・体験の充実を通じた世界トップレベルからボランティアまで多様な文化芸術人材の育成
  • 障害者、高齢者、外国人はじめ個のニーズに応じた文化芸術アクセスの拡大
  • 日本語教育の質の向上
  • 技術の発達など今日的ニーズを踏まえた著作権制度の整備
  • 文化芸術に係る多様な財源の確保と民間協働の促進
【文化政策形成機能の強化】
  • 様々な関連分野と有機的に連携した文化政策の総合的な推進
  • 国内外への日本文化の戦略的発信
  • 国内外の情報、各種データの収集・分析など文化政策調査研究

 改正基本法に立脚し、文化庁が文化行政を総合的に推進するため、新・文化庁への組織改革は、「縦割」を超えた開放的・機動的な文化政策集団の形成に向けて以下のような抜本的見直しを行う。

① 時代区分を超えた組織編制、分野別の縦割型から目的に対応した組織編制とすることによって、政策課題への柔軟かつ機動的な取組に対応するとともに、文化財をはじめ文化芸術資源の活用を促進する
② 関係府省庁、地方公共団体、民間、大学、文化芸術団体などに広く開かれた総参画体制により、新たな領域への積極的な対応を強化する

3.文化庁地域文化創生本部(先行移転)の取組状況と課題[編集]

(1)取組状況[編集]

 文化庁移転の意義としては、以下のことが考えられる。

① 東京一極集中の是正につながる。
② 地元(京都・関西)の先進的な知見・ノウハウ等を生かした新たな文化政策の企画立案や取組成果の全国波及を通じて、全国各地において文化の力による地方創生が図られる。
③ 文化庁が、オールジャパンの視点から、相乗的に、地域の多様な文化の掘り起しや磨き上げを行い、文化政策を総合的に推進することで、我が国の文化芸術全体の振興が図られる。
④ ICTの積極的な活用等により、公務員の働き方改革につながる。

 既に本部において先行移転の取組が進められているが、移転を成功させようとの機運が地元で高まっており、新たな文化政策の企画立案等に向けた地元の視点や知見・ノウハウ等を生かした連携・協力が進めやすくなっている。また、本部事務局は、地方公共団体、大学や産業界など様々な背景を持つ職員で構成されており、日常の業務を通じて、本部全体として地域や産業界の目線に立って文化政策を考えていく環境も整いつつある。

 一方、昨年のICT実証実験も踏まえたテレビ会議システムを本部と文化庁本庁の間に設置したところであり、地域文化創生本部会議をはじめ、庁内全体で当該システムが日常的に使用される状況になりつつある。

(2)課題[編集]

 本部の取組を通じて、次のような課題も挙がってきている。

① 全国を対象とした国の機関としての機能の維持・向上を図るという観点からは、テレビ会議等のICT活用を積極的に図っていくなど、全国対象の事務・事業をいかに効率的に運営していくか工夫が必要である。
② 国民及び移転先以外の地域から移転に対する理解と共感を得るという観点からは、報道発表やホームページ、リーフレット、通知文書等によるこれまでの取組に加えて、今後も様々な機会を捉えて周知及び理解促進に努める必要がある。また、地元以外のメディアも含め、国内外に効果的に情報発信していくことや、コミュニケーション機能を強化することも重要である。

 また、国会や予算関連業務等への対応については、本部が設置されて間もないこともあり、具体的な検証には至っていないが、今後更に年間を通じた検証を進め、課題を明らかにしていく必要がある。

 本格移転に際しては、これらの課題への対応等も含めて所要の措置を講じていくとともに、ICTを活用した業務効率化など業務そのものの在り方や業務プロセス全体の見直し、内部での意思決定過程の整理を進め、京都と東京で業務を行うに当たり重複のない効率的な体制を構築する必要があり、今後とも先行移転に関する検証を続けていくこととする。

4.本格移転に向けて[編集]

(1)本格移転における組織体制の大枠[編集]

 今後、平成30年通常国会を目途に提出される文部科学省設置法の改正法案等の法令整備を経て、平成30年度中に新・文化庁の組織体制を整備する。業務に一時の停滞も来さないよう、当面は東京においては文化庁庁舎、京都においては本部事務局庁舎において業務を行うとともに、引き続き、3.に述べた課題について検証を進めた上、京都における移転先の整備が完了し次第、本格移転を実施することとする。

 本格移転後は、本庁・京都と東京とで、おおむね以下のように業務を分離するものとする。

  • 文化庁・本庁を京都に置く。
  • 本庁に文化庁長官及び次長を置く。
  • 本庁においては、国会対応、外交関係、関係府省庁との連携調整等に係る政策の企画立案業務及び東京で行うことが必要な団体対応等の執行業務を除くすべての業務を行う。
 具体的には、文化政策の新たな展開を目指し、(a)長官直属の企画・発信、(b)国内外への日本文化の戦略的発信、(c)大学との連携を生かした文化政策調査研究、(d)科学技術と融合した文化創造や若者文化の萌芽支援など新文化創造、(e)食文化等の生活文化振興、(f)文化による地方創生、(g)文化財、(h)宗務等に関する政策の企画立案及び執行に係る業務を本庁で行うこととし、その職員数(定員及び定員外職員の数)は、全体の7割を前提に、京都府、京都市をはじめとする地元の協力も得ながら、250人程度以上と見込むものとする。

(2)文化関係独立行政法人の業務[編集]

 文化関係独立行政法人((独)国立文化財機構、(独)国立美術館、(独)日本芸術文化振興会)に関しては、政府関係機関移転基本方針の中央省庁の地方移転に係る検討の基本的視点(①地方創生の視点、②国の機関としての機能確保の視点、③移転費用等の視点)に基づき、各法人の業務内容や実態を踏まえた移転のメリットや課題、費用負担の問題等について検討を行った。

 その結果、一定の独立性を有し、東京に所在する施設と一体となって効率的な運営を行っている独立行政法人の移転には、機能確保の問題だけでなく、費用の増大等の点など課題が多い。一方、例えば、広報発信や相談に係る機能を京都に設けることは、一定の意義・効果が期待できる。このため、文化庁が本格移転を実施する時期にこうした機能を置くことについて、効果を含め具体的に検討を進める。

(3)移転場所等[編集]

 京都における移転先は、「新・文化庁」にふさわしいものであることが必要であり、諸外国からの来訪者をはじめ、京都以外の地方公共団体や全国の文化芸術団体等の関係者から見ても共感を得られる場所を選定すべきである。

 また、今回の移転は地元の協力・受入体制が整っていること、地方創生を目的として国が決定したものであるものの地元からも土地の提供や庁舎建設費用について応分の負担の意向が示されたことのほか、移転による過度な費用の増大や組織の肥大化を回避することに留意する必要がある。

 これらを踏まえ、「文化庁の移転について」で提示した本格移転先候補の4か所について、移転先に必要な五つの条件(文化的な環境、交通の便、適正な規模、ICT環境、耐震性)に併せて各候補についての工期や費用等を含めて総合的に検討した結果、現京都府警察本部本館を文化庁の移転先とする。

 また、本庁舎に加え、地元に既にある豊富で多様な施設やスペースを活用し、文化庁からの発信の拠点とする。

 京都府警察本部本館の建物は、京都で行われた昭和天皇の「即位の礼」に合わせて建設された京都の近代化遺産であり、その保存・継承は文化的価値も高い。こうした公益性を踏まえ、歴史的建造物を保存・活用するという考えや京都側が応分の負担を表明しながら文化庁の移転を要望してきた経緯に基づき、京都府が京都市などの協力を得て、文化庁の受入環境整備の一環として移転の規模に応じ、同本館の耐震化も含めた改修・増築を行うこととし、整備後、文化庁は、本庁の庁舎として、京都府の条例等に基づいた適切な貸付価額で、長期的に貸付を受ける。

 今後、設計に向けた準備を行い、速やかに庁舎整備の設計に着手し、工事、庁舎開設準備を着実に進めて、遅くとも平成33年度中の本格移転を目指す。

 なお、文化庁が本庁舎として使用する場合には、政府機関庁舎にふさわしい独立性・シンボル性の確保に配慮する必要がある。

(4)円滑な移転のための環境整備[編集]

 今後、本格移転に向けて、質の高い文化行政を担う職員を引き続き確保する観点から、職員の住環境の確保や、家族に関する教育・保育などを含めた福利厚生における適切な配慮について、地元の協力も得つつ、引き続き検討を進めるとともに、地域手当や本府省業務調整手当における適切な配慮等に関して、具体的な検討を着実に進める。

脚注[編集]

  1. 「政府関係機関移転基本方針」(平成28年3月22日 まち・ひと・しごと創生本部決定)、「まち・ひと・しごと創生基本方針2016」(平成28年6月2日 閣議決定)、「文化庁の移転の概要について」(平成28年8月25日 文化庁移転協議会決定)、「政府関係機関の地方移転にかかる今後の取組について」(平成28年9月1日 まち・ひと・しごと創生本部決定)、「文化庁の移転について」(平成28年12月19日 文化庁移転協議会決定)、「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」(平成29年6月9日 閣議決定)
  2. 改正基本法第7条の基本計画については、平成29年6月、文部科学大臣からその策定について文化審議会に諮問したところである。
  3. 文化芸術立国の実現を加速する文化政策-「新・文化庁」を目指す機能強化と2020年以降への遺産(レガシー)創出に向けた緊急提言-」(平成28年11月17日 文化審議会答申)

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