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府藩縣交涉訴訟准判規程

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府藩縣管轄交涉之訴訟是迄民部省ニ於テ裁判候處自今府藩縣ニ於テ裁判被仰付侯條別紙規程ヲ照準シ處置可政事

(別紙)

府藩縣交涉訴訟准判規程

第一條

凡訴訟ヲ准判スルハ其本人ニ限ルヘシ若シ疾病老幼或ハ癈疾等ニテ親族其他ノ代人ヲ請フトキハ事實ヲ糺訊シ止ヲ得サレハ其請ヲ許スヘシ

第二條

凡訴狀士族卒ハ官長平民ハ里正ノ奧印ヲ押スヘシ其奧印ナキハ訟詞理アリト雖トモ之ヲ准理スヘカラス

但官長里正依怙偏頗ヲ狹ヨ其情實ヲ壅塞セシムル時ハ審案廉察シ奧印ナシト雖トモ准理シテ冤枉ナキヲ要ス

第三條

治下ノ士民他ノ管內ノ者ト紛議ヲ生シ其裁判ヲ請フトキハ知事或ハ參事親シク推糺審問シ善ク訴狀ノ情實證據ヲ明ニシ條理正當ナレハ副書ヲ作リ廳印ヲ押シ訟者士卒ハ差添人平民ハ里正ト其本人トニ授付シ對答人ノ管轄廳ニ送リ其裁判ヲ受シム可シ

第四條

他管轄廳ノ副書ヲ以テ我カ斷訟ヲ請フ者アラハ先ツ其訴狀ヲ案シ訴人ヲ推問シ原情ヲ得ルトキハ訴ラルヽノ本人並ニ士卒ハ差添人平民ハ里正ヲ呼出シ右訴訟ノ件十日ヲ限リ證據確實譎詐ナク答書セシムヘシ

但中元歲終ノ兩季ニ近ツクトキハ必ス十日ヲ限ラスシテ可トス

第五條

日限中訴答ノ者對談熟議シ共ニ內濟ヲ請フトキハ雙方ノ連署狀ヲ出サシメ後言ナキヲ相證セハ之ヲ允シ其旨趣ヲ記載シ訟者ノ管轄廳ニ復スヘシ

但對談熟議ノタメ日限猶豫ヲ請フトキハ五日乃至十日ノ延期ヲ許スヘシ

第六條

對答者ノ事實訟者ノ旨意ト大ニ反スル際ハ其顚末ヲ認メ答書ヲ作ラシメ官長或ハ里正コレニ奧印ヲ押シ士卒ハ差添人平民ハ里正ヲ副ヘ本人ト共ニ訟者ノ管轄廳ニ送ラシム

第七條

聽訟第一次ハ必ス知事或ハ參事庭ニ蒞ンテ審判ス掛リ屬モ之レニ陪ス其日裁決セサルトキハ第二次ヨリ屬ヲシテ聽カシムルモ

可トス
若シ事重大ニ

涉リ或ハ訴ヘ重罪ニ至ルヘキハ再三知參事糺問スヘシ

第八條

訴訟斷決スルトキハ雙方連署ノ受書ヲ出サシメ冰ク異論ナキヲ證セシメ其書ノ寫ヲ訟者ノ管轄廳ニ送達スヘシ

第九條

聽訟初日ヨリ百日ニ至リ事理盤錯兩情乖戾シテ決シ難キハ其糾問ノ始末審ニ記載シ之レヲ訴答ノ者ニ示シ謬違ナキヲ證印セシメ且廳印ヲ押シテ訴答ノ者ニ授付シ民部省ニ出シテ裁斷ヲ受シムヘシ

但金穀其他貸借ノ訴訟ハ解訟ヲ度トナシ限ルニ百日ヲ以テスヘカラス且訴答ノ者疾病其他ノ事故アリテ時日遷延スルトモ宜シク斟酌シテ日ヲ限ルヘカラス

第十條

百日ニ至リ決シ難キ訟ヲ民部省ニ出ストキハ其始末ヲ記載シテ訟者ノ管轄廳ニ達シ民部省ノ裁決ヲ請フヘキ事ヲ報スヘシ此時ニ至リ訟者ノ廳官異議アルヘカラス

第十一條

民部省ニ出シテ裁斷ヲ請フ事ヲ訟答ノ者ニ達シテ後十五日ヲ以テ發途ノ期トナス若シ其期ヲ遲緩セハ越度タルヘキ旨ヲ示スヘシ

但訴答者ノ內鄕里其廳ト遠隔シ往復調度ノ事ニ付十五日ニシテ發途シ難キ者ハ相當ノ日限猶豫スヘシ

第十二條

發途前ノ日限中對談熟議シ內濟ヲ請フ者ハ第五條ノ如クシテ之ヲ許スヘシ

第十三條

百日ニ至ラサルモ訟者倔强頑憸ニシテ其裁判ヲ非理トシ他ノ聽訟ヲ請フトキ第八十條ノ如クシテ民部省ヘ出スヘシ

第十四條

堤防用惡水及ヒ村市山林等境界彼我管轄交牙ノ地ニ關涉ノ訴訟ハ訟者ノ管轄廳ヲ主ト爲シ訴狀ニ其廳印ヲ押シ關涉ノ廳ニ達ス其知參事答者並ニ里正ヲ出シテ答書ヲ作ラシメ狀情證據ヲ糺問シ事理至當ナルトキハ其廳屬ヲ副テ訟者ノ管轄廳ニ送リ聽訟ノ庭ニ蒞マシメ與ニ地圓ヲ檢査シ契券ヲ照準シ簿册ヲ檢閱シ或ハ實地ニ就テ協議審判スヘシ其裁決ニ至リテハ都テ斷案ヲ作リ民部省ヘ伺ヒ出ツヘシ

但訴狀ヲ受ルヨリ答書ヲ送ルノ間尋常十日ヲ以テ期トス然レトモ尙査案ヲ加ヘキ事件ハ此期ヲ必トスヘカラス

第十五條

隄防用惡水ハ實地水路ヲ檢査シ彼我害ナキハ宜シク說諭ヲ加ヘ熟議解訟セシムヘキモ境界論地ニ至リテハ極テ詳裁審斷シ必ス對談熟議ヲ許スヘカラス

第十六條

田畑山林質地等ノ訴訟ハ總テ其管轄ノ廳ニ於テ裁決ス故ニ訟者田畑山林ト共ニ我管內ノモノナレハ第十四條ノ如クシテ

他ノ答者ヲ召シ
訟者我管內ノ者ニシテ

田畑山林他ノ管轄ナルトキ第三條ノ如クシ答者ノ廳ニ遣シ裁判ヲ受シムヘシ熟談等ハ前ニ揭ル條々ノ如シ

第十七條

既ニ裁斷スル事件ト雖トモ訟者再訴スル所ノ證據ニ比較シ前裁斷至當ナラサルトキハ民部省ヘ伺ヒ更ニ裁斷スヘシ

但再認セサルモ前裁斷ヲ改メサルヘカラサル事件アラハ條理本末詳ニ記載シ明確ノ證據ヲ以テ民部省ヘ伺ヒ更ニ裁斷スヘシ

第十八條

遠國ノ者其滯留スル地ノ士民ト爭論ヲ生シ直チニ其地ノ廳裁ヲ請フ者ハ旅宿主人又ハ其地親族ノ者差添訴出ルトキハ准理裁判シ且斷決ノ止其始末ヲ記載シ訟者ノ管轄廳ニ達スヘシ

但百日ニ及ヒ斷決ニ至ラサルトキハ之ヲ訟者ノ廳ニ達シ民部省ニ出スヘシ

第十九條

管內滯留スル兩箇ノ旅人
紛議ヲ起シ

其他ノ旅宿或ハ親族ヲ證人トシ直チニ其裁判ヲ請フトキ前條ノ如シ

第二十條

訴訟中訴答者ノ內死スルトキハ其狀ヲ審案シ疑事アラハ精覈ニ窮治スヘシ疑事ナキモ差添人又ハ里正ノ藏書ヲ取リ其管轄廳ニ達スヘシ

第二十一條

訴訟中訴答者ノ內亡命スルトキハ其管轄廳ニ達シ百日ヲ期トシ搜索セシムヘシ

第二十二條

凡訴訟ノ原由訴答者ノ管轄廳吏ニ連及シ裁斷シ難キハ速ニ民部省ニ出スヘシ其裁判シ得ヘキモ決ヲ同省ニ伺フヘシ

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。