← 冬眠の夢
太陽相尅 →
大塚徹・あき詩集 祭礼の印象作者:大塚徹昭和8年1933年
野のはてに、 白紙のような月が昇った。 そのしたで 昔、農民たちの貧しい祭礼があった。 オトコとオンナが、 魚のように悲しげな瞳で、 ぱらりぱらり踊りくるっていた。 耳をすますと こほろぎのように とぎれては、また ほぞぼそと音頭の唄がきこえた。 雲のむこうから ひえびえと風が吹いてきた。 水のように焚火をめぐって、 農民たちの寂しい秋の祭礼があった。
〈昭和八年、神戸詩人〉