← 吹雪の幻灯
祭礼の印象 →
大塚徹・あき詩集 冬眠の夢作者:大塚徹昭和8年1933年
野晒の 氷雨に打たれ、打ち拉がれ 白雪の下積に冬眠する 雑草よ! 来る日も 来る日も 黒衣の太陽―― 耳をすませば えいえいと忍従する野晒の合掌。 ぼうぼうと呻吟する雑草の祈念。 ――春は南の海よりつばめの翼にのって訪ず れる。 暖き微風に胎んで蝶の子は生まれる。 雑草は貧しきながら花を掬(むす)ぶ。 今は冬。ああ、野晒の よりかたまって裂風を弾き、積雪を突き、 昂然と伸びあがらんとする気概をみせて、 されど、気息焉々 雑草の あえかにも春を待つ冬眠の夢よ。
〈昭和八年、神戸詩人〉