大塚徹・あき詩集/太陽相尅

提供: Wikisource
ナビゲーションに移動 検索に移動


太陽相尅[編集]

拭えばとてきゆしみかよ。
しむしむとあばらにじたつきあまもり
ちくちくとせきずい刺す思想のつらら

まぶたの裏に描く、まぼろしの、華麗のミステリー
深夜、血に狂う、酒池肉林の、白狼の舞踏。

白昼、敬虔しきかめんの、飽くなき搾取の殿堂。
日夜、寒月に牙爪を研ぐ階級の相尅。

やがて生まれいづる嬰児のうぶぎ
掌に、寒々と焦衰のりんを焚いて、
妻よ!歎けばとてるる胸かよ
ひたひたと濃霧に濡れて、帰えりくるは
白鬼に屠られたる、血泥の、同志の屍のみ―。

嗚呼、腹立たしきは暴虐の湿風。
哀れ、口惜しきは忍従の雑草。
呪咀する、侵略の人柱。資本の奴隷。
打破する、宗教の伝統。労農の地獄。

今日もまた、血涙に燃ゆる屈辱の西天。
己れ自ら崩壊する第三朝の太陽。

妻よ!
生まれいづる吾子は革命の分身。
地軸に潜み、地殻を破り、東天に鶏鳴する新
 しき太陽。
嗚呼、黎明わが世の春も遠からじ、程遠から
 じ。

〈昭和八年、愛誦〉