初等整数論講義/第1章/Fermatの定理

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§10 Fermat の定理[編集]

1. なるとき, を法としての 一つの剰余系の値を与えるならば, からも一つの剰余系が生ずる. (定理1.13, 証参照) 特に が既約剰余系の値を取るとき, からも一つの 既約剰余系が生ずる.( と素だから)[1]

由って を既約剰余系とすれば,

は全体に於いて一つずつ と合同になるから,

であるから,

(1)

特に,法を素数 をするとき, で割り切れないならば, . 故に次の定理を得る.

定理 1.25.

フェルマーの定理 が素数で, で割り切れないならば,

.

或いは両辺に を掛けて

とすれば, で割り切れるときにも成り立つ.


この定理は整数論に於いて基本的で,絶えず応用せられるものである. (1) はこの定理の拡張で オイラーの定理 と称せられる.

[例]


定理 1.25 乗が なることを言うのであるが, 個々の数 に関しては, よりも低い冪が既に なることはあり得る. 例えば

の冪の中で, なる最小指数を とすれば, の倍数なるときにのみ 成り立つのである. なぜならば,若しも ならば,, 従って から, が得られるから, これは矛盾である. 特に であるから, の約数である. このような最小正指数 に対応する指数という.

合同式 (1) に関しても同様である.即ち:

定理 1.26.

が法 に関して指数 に対応するならば, の倍数 を指数とするときに限って . 特に の倍数である.

なるときに限る.

[注意] 

§6 に述べた分数記号と同様の意味で, の 負数冪を用いることも,しばしば便利である. すなわち に関して を表す. 規約に由って,それは の解である. 今 とすれば であるから,

換言すれば, ならば

由って一般に が正でも負でも, なるときは,

又一般に . 勿論 なることを要す.


命題 1.

に関して が指数 に対応するとき (又はそれと同類の数)は, なるときは, 指数 に対応する. 一般には指数 に対応する.

[解]

と置いて, とする. 然らば

[2]

逆に とすれば, の倍数である.(定理1.26) 即ち で割り切れるが だから, は  の倍数でなければならない. 故に は指数 に対応する.


2. フェルマーの定理を応用して の形の素数が無限に存在することを証明することができる.

先ず の形の数の素因数は 又は の形の 素数である.

例えば

その証明は次の通り

が素数 で割り切れるとすれば,

即ち

故に

のみならず, は指数 に対応する. さもなくば 又は , 従って で, だから, これは不可能である.[3]

が指数 に対応するから, の倍数である. [4] 由って とすれば,

この定理を応用して, の形の素数が無限に存在することを証明する為に, の形の一つの素数とし, 以下の の形の素数のすべてと との 累乗積の平方に を加えて

と置けば, が素数ならば,それは勿論 の形で, よりも大きい素数である. 又 が合成数ならば,その素因数 は奇数であるから, 上記の通り の形の素数でなければならぬ. 然るに では割り切れない[5] から,. いずれにしても, よりも大きくて の形の素数が存在するから, これらの素数は無限に存在する.


3 上記 は 即ち 定理1.24 に於ける である. それを拡張して次の著しい定理を得る(素数の分布を参照).

定理1.24 に掲げた多項式, を任意の整数とすれば, の素因数は の約数又は の形のものである. (勿論,,又 と仮定する.)

の形の素数は無限に存在する.

[証]

定理1.24 に由って,次の恒等式が成り立つ,

ここで は整係数の多項式である.由って

に於いて は整数であるから,今素数 の約数とすれば, の倍数, 即ち

さて, に対応する指数を とすれば,(定理1.26

故に とすれば, とは共通の因数を有せぬから,

は勿論整係数の多項式である.或いは で割って

[6]

を代入して, を用いるならば,

故に の約数,従って の約数である.

次に とすれば, が即ち に対応する最小指数であるから, の約数である.由って . 即ち

特に の倍数(又は に含まれる凡ての相異なる素数の倍数) とすれば, に由って であるから, の約数であることを得ない. 故に必ず の形である.

例えば に於いて, とすれば,

上文では と仮定した. になるような があっても, それは有限個に限る(方程式 の根)から, その他の を取ればよい.

是に由って を任意の整数とするとき, なる形の素数が 実際存在することが証明された.

さて とするとき, に代用すれば, の形の素数 が存在する. はやはり の形で,且つ よりも大きい. 即ち の形の素数に最大のものがないのだから,かような素数は無限に存在する.


  1. すなわち, ともに と互いに素であるとき,その積も と互いに素である.これは の既約剰余系は積に関して閉じている, あるいは積に関して群を成していることを意味する.群の要件のうちの一つである逆元の存在は, 定理1.13の 「実際, となるのは で割り切れるときに限り,仮定に由って であるから, .それは, なるときに限る.」 を使って論拠だてることができる.
  2. officious:
  3. officious: のとき, の指数は のいずれか. 指数が のときは から . これは に矛盾. 指数が のときは これは に矛盾. なお指数定理.1.26よりありえない.
  4. officious: フェルマーの定理より,これまでに述べてきた「指数が に対応する」素数 が存在するが,それが のどれかを具体的に特定することにまでは言及していない. フェルマーの定理により素数 について . したがって,. 一方 の整数が素因数に を持つ場合,
  5. officious: