初等整数論講義/第1章/整数の整除

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§1. 整数の整除[編集]

1.本章では整数の整除,倍数,約数などに関する最も卑近なる理論を述べる.中には周知の事項もあろうが,一応根本から系統的に考察をしておく必要がある.

本章では文字は必ず整数を表すのであるから,一々それを断らない.尤も整数というのは

等,正及び負の整数と とを総括して言うのである.


整数の和,差及び積は整数であるが,商は特別なる場合の外は整数でない.商 が整数 に等しいとき,即ち

のとき, で割り切れるという.又 の倍数, の約数という.

この定義に由れば, は任意の整数 (但し )の倍数である.又 で割り切れるときは, . ( が整数であるから,それは ,従って . )

定理 1.1.
或る整数の倍数の和,又は倍数の倍数はその整数の倍数である.一般に の倍数ならば,

の倍数である.

[証]

で,仮定に由って右辺は整数の和であるから.


次の定理は基本的である.

定理 1.2.

は任意の整数で, ならば,

を満足せしめる整数 が唯一組に限って存在する.

[証]

の倍数を

のように大きさの順序に並べると,それらの中には絶対値に於いて如何程でも大きいものがあるから,実数 の全範囲が

のような無数の区間に分かたれる. はこれらの区間の中の唯一つに属するから

になるような が存在する.然らば

と置くとき,

が唯一組に限って存在することも明白であるが,念の為に証明すれば次の通り. 若しも

とすれば

即ち, で割り切れる.然るに仮定に由って ,故に [1] 従って .即ち

[例]

とすれば,

のとき,
のとき,
のとき,

定理 1.2 に於いて なるときが,即ち で割り切れる場合である. なるときには, を「 としての 最小正剰余」という.又 よりも大でなくて,それに最も近い整数である.一般に実数 よりも大ならざる最大の整数を で表わすことがある ( ガウス の記号).然らば

若しも より大きくても,小さくても,それに最も近い整数を とするならば

そのとき とおけば, .故に

になるような は必ずあるが,この場合には が二組生ずることもある.それは が偶数で, の奇数倍なる場合である. ならば, ,又は

上記のように なる を「 としての 絶対的最小剰余」という.

[例]

のとき,

ならば,
ならば,
ならば, または


  1. officious: で割り切れるときは,