初等整数論講義/第1章/原始根,指数

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§11.原始根.指数[編集]

1. フェルマーの定理に由れば, が素数で, で 割り切れないとき,

である.特に, が  よりも小なる正指数を以ってしては, このような合同式に適合しないとき,( が指数 に対応するとき) を法としての 原始根という. 又は の原始根と略称する.

この定義の意味を理解するには,合同式 を方程式 と比較して考察するがよい.然らば, を法としての 原始根は,恰(あたか)も の原始 乗根に類するものである. で,且つ よりも小なる正指数を以っては, このような合同式が成り立たないときには, の 約数であることは既に述べた(定理1.26). これは の原始 乗根に相当するものである.故にこのような をば, を法としての原始 乗根と名づけるのが 適当である.指数が なる場合に,特にそれを略して単に原始根というのである. 本節で述べることは,合同式 の解と 方程式 との解とが平行であることを主眼とするのである.

先ず原始根が必ず存在することを証明せねばならない.今 で 割り切れない任意の整数として, の冪は 乗冪に至って 始めて となるとする. 即ち に対応する指数とする. 然らば であるから,

(1)

は合同式

(2)

の解であるが,これらは互いに不合同である.

とすれば,, 従って の倍数であることを要するから, から までの中の指数では不可能である.

故に (1) 個の数が 即ち合同式 (2) のすべての解である. (定理 1.15

さて ならば, が既に原始根である. 若しも ならば, よりも大なる指数に対応する数が必ず求め得られることを示そう. そうすれば竟(つい)には原始根に到達することになるから, 吾々の目的は達せられるのである.

ならば (1) の各数と合同でない整数 ( で割り切れぬ整数)が存在する. その一つを とし, は指数 に対応するものとする().

(一) ならば, は指数 に対応する. 先ず . 又逆に とすれば, . 仮定に由って , 故に , 従って の倍数, 従って に由って, は  の倍数である. 同様に から の倍数, 即ち の公倍数, 従ってその最小公倍数 の倍数でなければならぬ. 故に は指数 に対応する, 即ち よりも大なる指数に対応する.

(ニ) ならば, の最小公倍数を とするとき, と置いて, の約数, の約数で且つ ならしめることができる. (§4, 問題11).

さて は指数 に対応し, は指数 に対応するから, (一)に由ってその積 は指数 即ち に対応する. さて は  の約数ではない.

の約数ならば, , 従って は合同式 (2) の解となり, に関する仮定に矛盾する.

故に .故にこの場合にも, より大なる指数に対応する数がえられたのである.

これに由って原始根の存在が確定し,同時に実際原始根を求める方法が示されたのである.(補遺6参照)

[例]

.

とすれば,

から までは上記 から までの剰余の符号を変えたものと合同である.)

故に は指数 に対応するから,原始根でない.

上記 の冪の中にない( の冪と合同でない)数の中で最も小さい を取って見る.

故に は指数 に対応する.

さて は指数 に対応する. 故に は指数 に対応する. 即ち は原始根である.

上記を要約して次の定理を得る.

定理 1.27.

素数 を法として原始根が存在する. をその一つとすれば

は既約代表の一組である.

[証]

原始根の存在することは既に証明された. を一つの原始根であるとすれば, 上記 個の数は に関して互いに不合同であることも既知である. (74頁) 故にそれらが既約代表の一組である.即ち ならば なる指数 が唯一である.

[注意] 

ならば は原始根である.故に原始根は だけある( に関して言う). 一般に ならば, とするとき, は指数 に対応する.(§10問題1.

2. 定理1.27 に述べたように, の原始根とすれば, なる任意の整数に対して

なる指数 なる範囲に必ず,而も唯一つ存在する. この を底としての 指数 (index) といい, それを次のように記す

しかし指数を 乃至 なる範囲に限る必要はない.一般に

(3)

とすれば

由って (3) を満足せしめる をも の指数という. 然らば の指数は を法として一定である.即ち

(4)

§10 の注意(65頁)に述べたように, は負数でもよい.

(3) に於いて を法として, 又 を法として考えるべきである.即ち

ならば
ならば

勿論底 は不動としていう.

[例]

は原始根である.

由って各既約類の指数表は次の通り.

用法

1) を求めること.

2) を求めること. から を求めること. の欄で を求め,それに対する の欄の をとる.

4) から を求めること. に対する

定理 1.28.

素数 を法として,原始根 を底とするとき,

[証]

とすれば,

故に

故に

因数が二つより多くても同様である.特に同一の因数 個のとき

このように に類似する性質を有するから, の表を に関する計算に使用することができる.

Jacobi のCanon arithmeticus(1839) [1] 以下の素数を法とする指数の表が計算されてある.

(Cunningham の調査した正誤表が Messenger of mathematics 46巻(1916) に載っている.)

本書の終わりに 以下の素数を法とする指数表を掲げる.

次に上掲 を法とする指数表に由ってニ三計算の例を示すであろう.


[例 1]
を解くこと.


[解]

指数表に由って

由って表から


[例 2]

を解くこと.


[解]

表に由って

表に由って


[検算]


[例 3]

を解くこと.


[解] 表から を得る.由って を掛けて

或いは

即ち

表に由って

[1]

表から

故に


命題 1.

底の如何に関せず, 但し

[証]

は 原始根だから 故に

命題 2.

ならば 但し

[証]

故に


命題 3.

底の変換も と同様である.

[2]
[証]

とすれば, から

命題 4.

で割り切れないときは(素数)

[証]

を法 の原始根とすれば,この和は

(分子は 分母は であるから).

[注意] 

で割り切れるならば,和の各項が 故に和は

命題 5.

が素数ならば,Wilson の定理

[証]

3 指数の理論に由って容易に次の著しい定理を得る.

定理 1.29.

は素数, で割り切れぬとき, 二項合同式

が解を有するが為に必要且つ充分なる条件は

である.但し

[証]

を解くには

を解けばよい.

とすれば,この合同式が解を有するが為に必要且つ充分なる条件は で割り切れることである.(定理1.13).

さて底を とすれば, で割り切れるとき, と置けば

故に

また逆に ならば . 故に で割り切れる, 従って で割り切れる. 故に で割り切れるというのは と同一に帰する. 即ち定理は証明されたのである.

[注意] 

解があるとき,解の数は


合同式 が解を有するか,又は有せざるかに従って 冪剰余 または 非剰余 という.

冪剰余ならば, なる は勿論 冪剰余である. 冪剰余であるとか,非剰余であるとかいうことは, を法としての数の類に関する性質である. 故に冪剰余,非剰余の問題に関しては, 数を を法としての類を代表するものと見てよい.

は勿論 冪剰余である.

なる のみについて言えば, 定理1.29に由って, なるときには,任意の 冪剰余である. これらは興味少なき場合である.

なるときには, の倍数なる だけが 冪剰余である.

即ち と置けば,

故に 冪剰余は を法としての 個の既約類の中の 分の一( 個)だけである.



  1. 原文は「又は」
  2. 原文には「但し」があり