代数的整数論/第1章/代数的整数

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首項の係数はで,その他の係数は有理整数なる方程式を満足せしめる数を代数的整数という.即ち§1.1の標準形に於てが整数である場合である.

定理 1 代数的整数の和,差及び積は代数的整数である.
〔証〕 §1.1定理の記号を用いるならば,この場合,係数が整数だから,(5)に於ける係数も整数である.故にが代数的整数である.

に関しても同様である.

有理整数は方程式の根だから,上記定義に従って代数的整数であるが,逆に次の定理が成立つ.

定理 2 有理数が代数的整数ならば,それは有理整数である.
〔証〕 有理数[* 1]が代数的整数ならば

即ち

故にの倍数である.とは互に素であるから,.従っては有理整数である.

〔注意〕上記,代数的整数の定義に於て,が満足せしめる方程式

が既約であることを仮定しなかった.実際それは必要でない.

が有理的に分解されるならば,各因子,従て特に規約なる因子も§1.1の標準形に於て整係数を有する.──そのような因子を

とすれば,その根の根,従て代数的整数だから定理1によって整数,従て定理2によって有理整数である.も同様.

定理 3 代数的の数は,それに或る有理整数を掛けるとき,代数的整数になる.
〔証〕 が整係数の方程式の根ならば,,従ては整数である.
定理 4 方程式
(1)

に於て,が代数的整数ならば,その根は代数的整数である.

〔証〕 がそれぞれ次の方程式を満足せしめるとして,
(2)

とする.文字で表わした係数は勿論有理整数とする.

なる個の積を,任意の順序で

とする.然らば

(3)

に於て,ならば,であるが,ならば,(3)に於てに(1)からを代入する.然らばの指数はよりも小さくなるが,の指数はになることもある.その場合には,に(2)から等を代入すれば,結局

のようになる.ここで係数は有理整数である.故に§1.1と同様に

から,が整数であることが分かる.

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〔注意〕有理整数を拡張して代数的整数を定義したのと同様の手段によって,更に代数的整数を拡張することは出来ないのである.その意味に於て,代数的整数は完結せる整範囲を成す; 所謂 ganz-abgeschlossen である.


方程式

(4)

に於て,係数が代数的整数ならば,をその根とするとき,定理3と同様にして,は代数的整数であることが分かる.なお一般に,次の定理が成立つ.

定理 5 方程式(4)の根を(複根は重複度数だけ入れて)

とすれば,は整数である.

約言すれば: 整なる乗数(4)の根の積を整数化する力を有するのである.

これは次の定理と同値である.

定理 6 (4)の左辺の多項式が整係数のみを有するならば,多項式
(5)

も同様である.

実際,定理6が成立つならば,それを繰返し適用して,多項式

が整係数で,従てその末項に等しいが整である.それが定理5の主張である.

逆に定理5が成立つならば,だけを除いた外の個の根からの積は整,従てそれらの対照的な和なる(5)の係数も整であるから,定理6が成立つのである.

よって定理5の代わりに定理6を証明する.そのために,の番号を省いて,の任意の根として

が整係数であることを示そう.さて,が一次でならば,だから,定理は成立つ.よって帰納法を用いるために,よりも低次の多項式に関しては,定理6は正しいと仮定する.

然らば

と置けば,次以下で,であるが,は整数だから,は整係数である.故に

から,が整係数であることが分かる.(証終)

§1.3の定理12によれば代数的整数は有理整数の拡張というべきものである.しかし,代数的整数の定義が突然として与えられたのであったから,少しく解説を試みる.

代数的の数の中の一部分──それを仮にとする──を取って,それを有理整数の拡張とすることを目標として,次の要求をする.

() ならば,

() ならば,と共軛なるに属する.

() 有理整数は凡てに属し,又有理数でに属するものは有理整数に限る.

() は(),(),()なる条件の下に於て,成るべく広汎である.

上記条件に適合する代数的の数の集合を以て,整数の範囲を限定することを承認するならば,が整数なるとき,()によって,と共軛なるも整数だから,それらの基本対称式なる有理数は()によって整数,従て()によって有理整数でなければならないから,が満足せしめる既約方程式

に於て,係数は有理整数なることを要する.然るに,前節に述べたように,このような方程式の根を凡て整数と名付けても,条件は(),(),()に適合するから,()によって§1.3に掲げた定義で,丁度吾々の要求が充たされる.

問題 1 二次体(二次の代数体)に属する数はの形に表わされる.は一定の(正又は負の)有理整数で,(以外の)平方因子を有しない.は任意の有理数.
問題 2 上記の場合,を有理整数とすれば,は整である.ならば,それは必要条件である.ならば,その外が共に奇数なるが整である.例えば乗根)は整,は整でない.



  1. の最大公約数の記号.即ちここではは互に素とする.