<< 至聖神母にささぐる祈祷。 >>
童貞なる女宰神母や、恩寵にみたされたる生神女、大に祝讃せられたる生神女や、大に祝讃せられ、聖寵を満被り、不死にして見る可らざる父の独生子の神性を納れたる蔵所や、汝の耳をかたむけて、我がけがれてきよからざる口よりいひいづる我の言を注意してきき給へ。けだし視よ、われ悔悟の霊と、謙遜の智とを以て、汝の仁心に趨り就く。我、不幸なるものをかろんずるなかれ、我、当らざる汝の僕に永く亡ぶるをゆるすなかれ、汝の母たる祈祷を以て、我、悪欲の為に無慚にくだかれたる我があはれむべき霊魂をいやし給へ。悪敵は耽慾の罪を以てこれをくじきて、塵にふみにじれり。故に我は悉くの耻にみたされたれば、我が罪の夥しきを赦さるると、我が治すべからざる傷のいやさるるとを、我が仁慈なる神に何の顔ありて敢て願ふを得ん。けだし我は身体の殿をけがし、己が不当なる望を以てこれに多くの不潔を入れたり、さればすべて五感は許すべからざる行にてそこなはれたり。故に我はあしく用ひてけがされたる手を天に挙ぐるの健気を有せざるなり。况や我が悪言と近者を誹謗したるとによりてけがされたる口を祈祷に於て開くを得んや。故に至りて玷なき女宰や、我、不幸なる者及び迷へる者は、汝のいひ難き鴻恩の前に附伏す。けだし我が唯一の慰めたり又速なる保護たる汝の外に、他の希望又は避所は我にあらざればなり、----我が霊魂を喜ばし、哀みより脱し、虜より贖ひ、死すべき者を神に近づかしめ、我等が洗罪所及び避所となり、陥りし者を起し、我が霊魂と体とを再造し、我が諸の罪をあがなひ、我が枯れたる心の為に神より流さるるうるほひとなり、我がくらまされたる霊の為にひかりかがやく燈となり、我が裸体を掩ひ、わが嘆息を止め、わが運命を変ずるものは、汝の外にこれあらざればなり。われは汝を望み、汝を以て自から誇る、汝の代願を我等よりうばふなかれ、つねに助け、保護して我等をすつるなかれ。汝の願は汝の独生子の欣ぶ所なり。けだし僕の中に算入れらるるをゆるしたまひし者は、その建設したる所をいよいよ保護し、いひ得ざる産にてつとめたる汝をあはれむべければなり。故に彼は汝の代求をよろこび、汝の栄を以て己の栄と思ひ、汝の願を遂げしむるを以て己の分と為す。我れ独り最不幸なる者を汝かろんずるなかれ、願くは我が行の不適当は汝が無量のあはれみを絶たざらん、神母や、我が為に最慕はしき名や、けだし汝の助けより堅きものあるあたはざるなり。故に最非難し得ざる世界の代求者や、我多くの罪に陥りて罰をうくべき者は、悔改を以て、汝、窮迫に於るの速なる扶助者、神に依る保護者、我が為に依頼すべき有力なる代願者の前に俯伏して、心の深きよりよぶ、我もろもろの悪臭と怠慢とにみちみてる者をあはれみ給へ、アア善を好みんずる仁心なる者や、我が此の憐むべき無なる願をうけ給へ。そも我おこたり且なほざりにこれを汝に願ふといへども、汝の母たる祈祷を以て、我を汝の子と神とにうけらるる者となし、天国をうくるに堪ふる者となし、父と子と聖神を讃美頌揚するを得しめ給へ、今も何時も世々に。アミン。