けれいど◦並びにひいですのあるちごの事
弟子◦右の理は◦でうす のおらしよを以て◦よく賴み奉る樣を敎へ給へり。今又◦確かに信じ奉る道を敎へ給へ
師匠◦けれいどと◦それに籠るひいですの條々を知る事也。今之を敎ゆべし。けれいどとは◦
- 萬事叶ひ給ひ◦天地を作り給ふおん親 でうす と◦そのおん子一人子我等がおん主 でうす を誠に信じ奉る。このおん子すぴりつ◦さんと◦おん奇特をもつて宿され給ひ◦びるぜん◦まりやより生れ給ふ。ぽんしよ◦ぴらとが下にをひて◦呵責を受こらへ◦くるすにかけられ死し給ひて◦御棺に納められ給ふ。大地の底へ下り給ひ◦三日目によみがへり給ふ。天に上り給ひ◦萬事叶ひ給ふおん親 でうす のおん右に備り給ふ。それより生きたる人◦死したる人を糺し給はん爲に◦天降り給ふべし。すぴりつ◦さんとを誠に信じ奉る。科のおんゆるし◦肉身よみがへるべき事◦終りなき命とを誠に信じ奉る。あめん
弟子◦たゞ今のけれいどは何事ぞ
師匠◦信じ奉るべきひいですの肝心の條々なり
弟子◦けれいどは誰人の作り給ふぞや
師匠◦御主 ぜすきりしと のあぽすとろ達◦すぴりつ◦さんとの御導きを以て◦一緖に集り給ひて◦御主 ぜすきりしと の御口より◦直に聞奉られたる旨を連ね給ふもの也
弟子◦何の爲に連ね給ふぞ
師匠◦ひいですに受奉るべき條々◦我等に敎へ給はん爲也
弟子◦ひいですとは何事ぞ
師匠◦でうす 我等に吿知らせ給ふ程の事を◦さんた◦ゑけれじやより示し給ふ如く信じ奉る樣に◦きりしたんのあにまに でうす 與へ下さる◦人智を超へたる御恩の光を輝く善也
弟子◦でうす 吿給ふとは何事ぞ
師匠◦さんた◦ゑけれじやより信じ奉れと現し給ふ程の事也。中にもけれいどに籠るひいですの條々則これ也
弟子◦けれいどに籠るひいですの條々は◦何箇條ぞや
師匠◦之を連ね給ふあぽすとろ十二人なる如く◦その數も十二箇條也。又これをつぶさに分けて◦十四の條々に數ゆることもあり。七ツには でうす の御所に當り◦又七ツは◦ぜすきりしと の人にておはしますおん所に當り給ふ也。然りといへども◦こゝにはけれいどを敎ゆるが故に◦十二箇條に積りて現はすべし
- 第一には◦萬事叶ひ給ひ天地を作り給ふ御親 でうす を◦誠に信じ奉ること
- 第二◦その御一人子我等が御主 ぜすきりしと を◦誠に信じ奉ること
- 第三◦この御子すぴりつ◦さんとの御奇特を以て宿され給ひ◦びるぜん◦まりやより生れ給ふこと
- 第四◦ぽんしよ◦ぴしと〔ママ〕が下にをひて◦苛責を受こらへ◦くるすに懸られ◦死し給ひて御棺に納められ給ふこと
- 第五◦大地の底へ下り給ひ◦三日目によみがへり給ふ事
- 第六◦天に上り給ひ◦萬事叶ひ給ふ御親 でうす の御右に備はり給ふ事
- 第七◦それより生きたる人◦死したる人を糺し給はん爲に◦天降り給ふべき事
- 第八◦すぴりつ◦さんとを誠に信じ奉ること
- 第九◦かとりかにて在ますさんた◦ゑけれじや◦さんとす皆通用し給ふこと
- 第十◦科の御許の事
- 第十一◦肉身よみがへるべき事
- 第十二◦終りなき命を誠に信じ奉ること
弟子◦最初の箇條に◦萬事叶ひ給ひ◦天地を作り給ふ御親 でうす を誠に信じ奉ると申す心を現し給へ
師匠◦まことの でうす は只御一體の外座しまさず◦これ卽ちぱあてれと◦ひいりよと◦すぴりつ◦さんとと申し奉りて◦ぺるぞうなは三ツにて在ませども◦すすたんしやと申す御正體は◦たゞ御一體にて在ます也。これ卽ち◦各々きりしたん信じ奉らで叶はざる事也。ぱあてれとは御親◦ひいりよとは御子と申し奉る心也。すぴりつ◦さんととは◦御親 でうす と御子 でうす より出給ふ◦互ひの御大切にて在ます也。この最初の一箇條には◦三のうち一番のぺるぞうなにて在ます御親 でうす の御事を◦沙汰し奉る者也
弟子◦でうす 三ツのぺるぞうなにて座しましながら◦御一體なりと言へる理は◦分別しがたし
師匠◦それは尊きちりんだあでのみすてりよとて◦我等がひいですの題目のうちにては◦極意最上の高き理り也。其故は でうす は無量廣大に座しまし◦我等が智惠は纔かに限ある事なれば◦分別には及ばず◦たとひ分別に及ばずといふとも◦でうす にて座します御主 ぜすきりしと 直に示し給ふ上は◦誠に信じ奉らずして叶はざる儀也
弟子◦此儀をよく分別する爲に◦そのたとへなしや
師匠◦譬あり。我等があにもはたゞ一體にてありながら◦三の精根あり。一ツにはめもうりやとて◦覺へたる事を思出す精◦二ツにはゑんてんぢめんととて善惡を辨へ分別する精◦三つにはおんだあでとて◦善きと思ふ事を望み◦惡きと思ふことを嫌ひ◦物を愛する精。かくの如くあにまは一體なりといへども◦三ツの精根ある如く◦でうす 御一體にておはしましながら◦ぱあてれ◦ひいりよ◦すぴりつさんとと三ツのぺるぞうなにておはします也
弟子◦萬事叶ひ給ひ◦天地を作り給ふとは何事ぞや。
師匠◦その言葉の心は◦でうす 萬事叶ひ給ふによつて◦天地萬事を◦一物なくして作り出し給ひ◦御身の御威光◦我等が德の爲にかゝへ◦納め計らひ給ふと申す義也
弟子◦御主 でうす 一物なくして天地萬像を作り出し給ふとある事を分別せず。其故は◦御作の物は◦皆 でうす の御智惠◦御分別より出し給ふと見ゆる也。然る時んば◦一物なくして作り給ふとは何事ぞや
師匠◦この不審を開く爲に◦一ツの心得あり。それと言ふは でうす の御分別のうちには◦御作の物の體は一ツもなしといへども◦それ〴〵の諸相こもり給ふ也。これをいでやと云ふ也。このいでやといふ諸相は◦作の者にあらず◦たゞ でうす の御體也。然るに萬像を作り給ふ時◦でうす の御分別に持給ふいでやに應じて◦御作の物は御體を分て作り出し給ふには非ず◦たゞ一物なくして作り給ふ也。たとへば大工は家を建てんとする時◦まづその指圖をわが分別の內に持ち◦それに應じて家を作るといへども◦家は分別の內の指圖の體にはあらず◦たゞ格別の物也。その如く◦でうす 御分別の內に持給ふ御作のもののいでやに應じて作り給ふといへども◦御作の物はそのいでやの體には非ず◦たゞ萬事叶ひ給ふ御力を以て◦一物なくして作り給ふ也
弟子◦でうす の御分別に持給ふ指圖に應じて◦作の物を作り給ふといへども◦作の物は でうす の御體に非ず◦たゞ格別の體なりと分別せり。一物なくして作り給ふとは何事ぞや
師匠◦一物なくして物を作るといふは◦無かりし物を道具も下地も種もなくして出來さする時◦一物なくして作ると言ふ也。然るに でうす は萬事叶ひ給ふ尊體にて在ませば◦萬物を作り給はん爲に◦下地も種も道具もいらずして◦唯あれと思召すばかりを以て作り給ふが故に◦一物なくして作り給ふと申す也。譬へば大工は指圖に應じて家を作るといへども◦材木◦道具以下なくして◦あれと思ふ許りを以て作る事叶ふにをひては◦その家は◦誠に一物なくして作りたりと言ふまじきや
弟子◦でうす 一物なくして萬物を作り給ひ◦作の物は御體にあらずといふ事は分別せり。でうす 尊體と作の物の體とその差別如何
師匠◦でうす と◦御作の物の差別といふは大きなり。雲泥懸隔といふもなほ餘りあり。その故は◦でうす と申し奉るは◦すぴりつあると申す尊體にて◦始め終り在まさず◦萬事叶ひ給ひ◦量りなき御智惠の源◦諸善萬德圓滿◦無際の源也。御作の物と云ふは◦或は色相あり◦又無色相ありといへども◦皆その限りあり◦生滅する事叶ふ也。その精力も智德も少き也。かるが故に◦御作者と作の物の差別は量りなき懸隔なり
弟子◦右 でうす と御作の物の差別は承りぬ。今又◦御作の物は◦何れも互ひに一體か◦別體かといふ事を顯し給へ
師匠◦御作の物は何れも別體也。其故は でうす より作り給ふ時◦夫々に應じたる格別の精を與へ給へば也。その證據には◦作の物に現はるゝ各隔の精德あり。この儀をよく分別すべき爲に◦心得べき事あり。それと云ふは◦色相ある萬づの作の物は◦二ツの根本を以て◦和合したるもの也。一ツにはまてりやとてその下地の事。二ツにはほるまとてその精これ也。右の下地と云ふは◦四大を以て和合し現はるゝ色相なり。又ほるまと云ふは◦萬づの物に性體と精德を施す者なり。目に見へる御作の物は◦四大を以て和合したる◦一ツの下地なれども◦性體とその精德を施すほるまは◦各隔なるに依て◦皆別體なる物也。かるが故に◦畜類と◦四大和合のその下地は一ツなりといへども◦人の性體と畜類の性體格別なるに依つて◦別體なる者也。是等の事を委しく分別したく思はゞ◦別の書に載するが故に◦よく讀誦せよ
弟子◦その御一人子◦我等が御主 きりしと を誠に信じ奉ると申す心を◦顯はし給へ
師匠◦御主 ぜすきりしと でうす にておはしますおん所は◦御親 でうす と同じき御性體◦おん智惠◦御精力◦一ツとして變る事なき◦誠の御一人子にておはしますと申す心也
弟子◦でうす 何とやうに御子を生じ給ふぞ
師匠◦でうす おん子を生じ給ふと聞き奉る時は◦人間の業の樣に卑しき道と思ふべからず。すぴりつあるおん體と申して◦色相を離れ給ふ淸淨の御體にて座せば也。でうす 御子を生じ給ふ事は◦廣大無邊のゑんてんぢめんととて◦量りなき御知力を以て生じ給ふ也。この儀は◦人間のうすき智惠には及ぶ所にあらず
弟子◦譬を以て◦この儀を少々顯はし給へ
師匠◦及ばずながら一ツの譬を云ふべし。鏡に向ふ時は◦我影のそれに浮ぶが如く◦御親 でうす 御身の尊體を諸善萬德ともに達して分別し給へば◦我身に影に映るが如く◦御身のゑんてんぢめんとに◦二番のぺるぞうなと申し奉る御子 でうす を映し出し給ふ也。然れば御親 でうす と◦御子 でうす のぺるぞうなは◦各隔にて在ませども◦尊體はたゞ御一體の でうす にて在ます也
弟子◦第三の箇條に◦この御子すぴりつ◦さんとの御奇特を以て宿され給ひ◦びるぜん◦まりやより生れ給ふと申す心を◦顯はし給へ
師匠◦御親 でうす の眞の御子にて坐します二番のぺるぞうな◦尊きびるぜん◦まりやの御胎內にをひて◦我等が肉體に變らざる眞の色身と眞のあにまを受合せ給ひて◦眞の人となり給ふといへども◦でうす にて座します御所は變り給ふ事なく◦いつも同じき でうす にて座します也。このびるぜん◦さんた◦まりやより生れ給ふを名付けて◦ぜすきりしと と申し奉る也。またこの御出世は◦人の仕業を以ての事にあらず◦たゞ御親 でうす と御子 でうす◦又すぴりつ◦さんとの御奇特を以てはからひ給ふといへども◦御大切の御仕業なるが故に◦すぴりつ◦さんとの御奇特と申し奉る也。所以如何となれば◦御親 でうす には萬事叶ひ給ふおん所◦御子 でうす には量りなき御智惠の所をあてがひ奉るごとく◦御大切の御所は◦すぴりつ◦さんとにあてがひ奉る者也。すぴりつ◦さんとの御奇特を以て計ひ給ふ事なれば◦すぴりつ◦さんとより宿され給ふと申し奉る也。同じく◦御母びるぜんも人間の所作を以て御懷妊なされざるが故に◦御誕生の後も相變らざるびるぜんにて座します也
弟子◦第四の箇條には◦ぽんしよ◦ぴらとが下にをひて◦苛責を受こらへ◦くるすに懸られ◦死し給ひて◦御棺に納められ給ふと申す心を顯し給へ
師匠◦御主 ぜすきりしと でうす にて座しますおん所は◦苛責を受こらへ給ふ事叶ひ給はずといへども◦人にて座しますおん所は◦ぽんしよ◦ぴらとが守護なる時代に◦御自由の上より一切人間の科を送り給はん爲に◦くるすに懸られ死し給ふと申す心なり
弟子◦人にておはします所は◦何とやうに死し給ふぞ
師匠◦でうす に當り奉る御所は◦おんあにまにも御色身にも離れ給はず◦人となり給ふおん所のおんあにまは◦御色身に離れ給ふに依て◦死し給ひ御棺に納められ給ふと申す義也
弟子◦御子 でうす 人になり給ひ◦人間の科に對せられて◦くるすにて死し給ふ事は何の故ぞや。科を許し給ふべき別の道なしや
師匠◦樣々あるべし。然りといへどもこのくるすの道は◦數多の道理に依て◦第一相應の道と選びとり給ふ者也
弟子◦その道理を少々示し給へ
師匠◦先一ツには◦我等に對せられて御大切の深く甚しき程を知らしめ給ふを以て◦でうす を御大切に存ずる事も深からん爲也。二ツには科の深き事を辨へさせ給ん爲也。その故は◦でうす 人となり給ひ死し給ふを以て◦許し給ふ程の御事なれば也。三ツにはこの御恩の深き所を思案し◦その御禮を爲し奉るべき爲也。其故は でうす かほどの御苦みをこらへ給はずして◦たゞ假染に許し給ふにをひては◦人々さほど御恩をも見知り奉るまじきに依て也。四ツには でうす の御憲法正しく在ます事と◦又科に當る過怠の深かるべき事を知らしめ給はん爲也。その故は御主 ぜすきりしと まことの でうす の御子にて在ませば◦毛頭ほどの御科も在まさずして◦たゞ我等が科を御身の上に受かゝり給ひ◦種々樣々の苛責の思案を盡して◦御身に受こらへ給へば也。五ツには天狗は善惡を辨へさする木實を服さするを以て◦我等が先祖を忖りすまし◦又あだん一人の科を以て◦一切人間をかの天狗の手より取放し給ひ◦自由解脫の身と爲し給はん爲に◦御主 きりしと かくの如くなり給ふ事◦尤相應の道也。彼と是との道理に依て◦でうす の御子◦我等に對し給ひて人となり◦死し給はんとの御內證にて座しませし者也
弟子◦第五の箇條に◦大地の底へ下り給ひ◦三日目によみがへり給ふと申す心を顯し給へ
師匠◦御主 ぜすきりしと くるすにて死し給へば◦おんあにまは大地の底へ降り給ふ也。御主の御上天までは◦昔の善人達上天せらるゝ事叶はざるが故に◦大地の底にをひてその御出世を待奉られし人々を召上給はんが爲に◦かの所に下り給ひて◦善人達のあにまをそれより召出し給ふ者也。
弟子◦御主 ぜすきりしと の御あにまの下り給ふ大地の底といふは何たる所ぞや
師匠◦大地の底に四樣の所あり。第一の深き底はいんへるのと云ひて◦天狗を始めとして◦もるたる科を以て死したる罪人等の居る所也。二ツには◦少しその上にぷるがとうりよとて◦がらさを離れずして死する人のあにま◦現世にて果たさざる科送りの償ひをして◦それよりぱらいぞの快樂に至るべき爲に◦その間こめおかるゝ所也。三ツには◦ぷるがとうりよの上にりんぼとて◦ぱうちいずもを受けずして◦未だもるたる科に落つる分別のなき內に死する童の至る所なり。四ツには◦このりんぼの上にあぶらはんのせよといふ所あり。この所に◦古への善人達◦御出世を待ち居られたる所に◦御主 ぜすきりしと 下り給ひ◦かのさんと達のあにまを◦この所より召上げ給ふ也
弟子◦三日目によみがへり給ふとは何事ぞ
師匠◦せすた◦へりやに御主 ぜすきりしと 死し給ふ時◦尊き御あにま御色身を離れ給ひ◦次のどみんごに御あにまは御棺に納められ給ふ御死骸に入給ふを以て◦並びなき御威光のかゝやきよみがへり給ひ◦數多の御弟子に見へ給ふと云へる事も◦この箇條に現はるゝ也
弟子◦第六の箇條に◦天に上り給ひ◦萬事叶ひ給ふ御親 でうす の御右に備はり給ふともうす心を顯はし給へ
師匠◦御主 ぜすきりしと よみがへり給ひて後◦天に上り給へば◦人にて在ますおん所は◦御主 でうす より諸々のべやと達の快樂を一ツにしたるよりも◦なほ並びなき快樂◦萬德を與へ給ふと申す儀也
弟子◦何とて御右に住し給ふとは申し奉るぞ。でうす にも御右左と申すことありや
師匠◦御主 でうす 御色相備はり給はねば◦御左右と申す事は無けれども◦御主 ぜすきりしと 人にて座します御所に與へ給ふ御位は◦諸々のあんじよ◦諸々のべやとの位よりも遥かに超へて與へ給ふによつて◦右を高上と用ひるが故に◦かく申し奉る也
弟子◦第七の箇條に◦生きたる人死したる人を糺し給はん爲に◦天降り給ふべきと申す心を顯し給へ
師匠◦御主 ぜすきりしと 世界の終りじゆいぞの日◦一切人間の所作を御糺明なされ◦それ〴〵に應じて◦不退の御返報を與へ給はん爲に◦でうす にて座します御所は申すに及ばず人にて座します御所も◦並びなき御威光を現し給ひて天降り給ふべしと申す儀也
弟子◦第八の箇條に◦すぴりつ◦さんとを眞に信じ奉ると申す心を顯し給へ
師匠◦この箇條には◦尊きちりんだあでの三番のぺるぞうなにて在ます◦すぴりつ◦さんとの御事を現し給ふ者也。このすぴりつ◦さんとは◦御親 でうす と御子 でうす より出給ふ互の御大切にて在ます也。このすぴりつ◦さんとのぺるぞうなは◦御親 でうす のぺるぞうなと御子 でうす のぺるぞうなと◦各隔にて在ませども◦尊體は御親 でうす と御子 でうす と◦すぴりつ◦さんと◦たゞ御一體の でうす にて在ます也
弟子◦第九の箇條に◦かとりかにて在ますさんた◦ゑけれじや◦さんとす皆通用し給ふと申す心を現し給へ
師匠◦この箇條に◦二ツの事を示し給ふ也。一ツにはかとりかにて在ますさんた◦ゑけれじやの御事。二ツにはさんと達通用し給ふこと是也。
弟子◦かとりかにて在ます◦さんた◦ゑけれじやとは何事ぞや
師匠◦ゑけれじやとは ぜすきりしと を信じ奉り◦共に御敎を相傳し◦顯し奉る諸々のきりしたんの群衆を名付る名也。このきりしたんの一味◦世界諸國に分れゐるといへども◦敎とひいです一ツのゑけれじやかとりかに當るに依て◦一味に譬ゆる也。その番ひはきりしたん一人づゝにて◦頭はろうまの尊きぱつぱにて座します也。又このゑけれじやをかとりかと申す心は◦すべて世界のきりしたんを一ツにしていふこころなり。このゑけれじやは御主 でうす の宣ふ如く◦すぴりつ◦さんと治め給ふが故に◦さんたとも名付け奉る也。すぴりつ◦さんと治め給ふが故に◦さんたとも名付け奉る也。すぴりつ◦さんと迷ひ給ふことましまさぬ如く◦このゑけれじやも迷ひ給ふこと叶ひ給はざる也。
弟子◦さんと達通用し給ふとある心は何事ぞや
師匠◦これを納得の爲に一ツの譬を云ふべし。五體の番ひは互ひに力を得◦色身の血氣を全身にくばる如く◦一切のきりしたん一味のところは一身の心なれば◦ゑけれじやの番ひとなり奉るが故に◦互ひのひいです◦さからめんと◦善事善行等の功力◦みな通用ありといふ心なり。又天に座しますさんと達のぷるがとうりよの人衆も◦このゑけれじやの番ひなりし人なれば◦これにも通用ありと申奉る心也。その故は御主 ぜすきりしと 並びにべやと達◦その取合せのおらしよとその功力を我等に施し給ひ◦又我等がおらしよ◦とぶらひの功力等をも◦ぷるがとうりよのあにまの爲に◦御主 でうす へ手向け奉る故也
弟子◦第十の箇條に◦科の御ゆるしとある心を顯し給へ
師匠◦ぱうちいずもとぺにてんしやのさからめんとを以て◦がらさを與へ給ひ◦科を許し給ふに依て◦科の御許しは眞實さんた◦ゑけれじやにのみありと申す儀也。かるが故に◦科に落るといふとも◦賴母敷を失ふこと勿れ。何時なりともこんひさんを申し◦まことの後悔を爲すにをひては許し給ふべきこと疑ひなし
弟子◦第十一の箇條に◦肉身よみがへるべきとの心を現し給へ
師匠◦世界の終◦じゆいぞの日◦一切人間のあにま◦いんへるのに落ゐたるも◦ぱらいぞに在ますべやと達も◦殘らずもとの身によみがへり◦わが爲したる善に依て◦あにまに蒙るぱらいぞの快樂を◦現世にて善事の合力となりたる色身もともに受け◦又いんへるのに落ちたるあにまの苦しみも◦科の合力となりたる色體ともに受くべしといふ義也
弟子◦灰埃となりたる色身よみがへるべきことは◦何と叶ふべきや
師匠◦萬事叶ひ給ふ御主 でうす の御所作なれば◦叶ひ給はずといふ事なし。その故は◦一物なくしてさへ◦天地萬像を在らせ給へば◦いかに況んや◦下地ある人間の色身◦たとひ灰埃となりゐたりと云ふとも◦いかでかよみがへし給はざるや。これらの證據◦日々目の前に現はるゝ物也。地に落ちたる五穀の種は腐るといへども。元の實を生ずるもの也
弟子◦十二の箇條に◦終りなき生命をまことに信じ奉ると申す心を顯はし給へ
師匠◦じゆいぞ◦ぜらるの日◦よみがへるべき一切の人間◦その後は再び死することあるまじきといふ事也。但し善人惡人の模樣◦その進退◦雲泥かはるべき也。その故は◦御主 ぜすきりしと を見知り奉らざる者と◦あしききりしたんとは◦終りなくいんへるのの苦みをうけて長らへ◦がらさに離れずして終りたるきりしたんは◦天にをひて樂みを極め◦不退の生命を持つべしといへる儀也。右條々は◦御主 でうす より知らせ給ふに依て◦信ぜずして叶はざる儀也。其故は◦眼を以て見る事よりも◦このひいですの條々◦なほ以て確かなる事なれば也
弟子◦でうす より吿給ふといふ事は◦誰人の傳へぞや。
師匠◦眞の でうす にて在ます御主 ぜすきりしと を始めとして◦すぴりつ◦さんとより導かれ給ふさんた◦ゑけれじやより斯の如く敎へ給ふ也。このさんた◦ゑけれじやは◦すぴりつ◦さんとよりをさめられ給ふことなれば迷ひ給ふこと少しも叶はざる者也
巻末附録「第三 欧語抄」より
- ○あだん Adán 人名
- ○あにま Anima 「たましひ」 霊魂
- ○あばらん Abrahã 人名
- ○あぽすとろす Apostros 宗徒 聖徒
- ○あるちご Artigo 箇條
- ○あんじよ Anjo 「天人」 天神
- ○いでや Idea 相 二〇七ノ四
- ○いんへるの Inferno 「地獄」
- ○ゑけれじや〔さんた〕Ecclesia 教会
- ○ゑんてんぢめんと Entendimento 「分別智」「善悪を辨へ分別する精」Understanding. 六〇ノ六、二〇六ノ一
- ○おらしよ Oratio 祈念、経
- ○おんだあで Vontade 「憎み愛するに傾く(あにまの)精」
- ○かとりか Catholica 公一、総統 二〇一ノ三、二二〇ノ二
- ○がらさ graça 聖寵
- ○きりしたん Christão 基督教人
- ○くるす Cruz 十字架
- ○けれいど Credo 信経 二〇〇ノ一
- ○こんひさん Confissão 「こんちりさんの後時々に行ふ言葉にてさんげすること」告解
- ○さからめんと Sacramento 秘蹟
- ○じゆいぞ Juizo 「御糺明」審判
- ○じゆいぞ ぜらる Juizo geral 二二三ノ一二 「押なべての御糺明」公審判
- ○すすたんしや Substancia 実体
- ○すぴりつさんち、すぴりつさんと Spiritus Sanctus, Espiritu Santo, Espirito Santo 聖神
- ○すぴりつある Spiritual 霊の
- ○ぜすゝきりしと Jesu Christo
- ○せすたへりや Sextaferia 六日目(金曜日)
- ○ちりんだあで Trindade 三位一体
- ○でうす Deus 「真の主」「天主」「天帝」
- ○でうす ぱあてれ Deus Padre 天主 聖父
- ○でうす ひいりよ Deus Filho 天主聖子
- ○どみんごす Domingos 日曜日
- ○ぱあてれ Padre 伴天連 神父
- ○ばうちいずも Baptismo 洗礼
- ○ぱつぱ Papa 教化皇 教皇
- ○ぱらいぞ Paraiso 天国
- ○ひいです Fides 「でうすの御教をまことに信じ奉る善」
- ○びるぜん Virgem 童貞
- ○ぷるがとうりよ Purgatorio いんへるのの「少し上、がらさを離れずして死する人のあにま、現世にて果さゞる科送りの償ひをして、それよりぱらいぞの快楽に至るべき為にその間とめおかるゝ所」煉獄 一九ノ六、二一六ノ一二
- ○ぺにてんしや Penitenncia 悔悛
- ○べやと Beato 福者
- ○ぺるぞうな Perusona 位
- ○ほるま Forma 「物の精」 二一〇ノ三
- ○ぽんしよ ぴらと Pontio Pilato 人名
- ○まてりや Materia 「物の下地」
- ○まりや〔さんた〕Maria, S. 聖母
- ○みすてりよ Mysterio 玄義
- ○めもうりや Memoria 「すぎにし事を思ひいだすあにまの精」
- ○もるたる(科) Mortal 「もるたるとは命をたつといふ意也」(どちりな)
- ○りんぼ Limbo 「天国と地獄との間の界」古聖所
- ○ろうま Roma 羅馬
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原文:
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この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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翻訳文:
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この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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