コンテンツにスキップ

第三次近衛声明

提供:Wikisource

本文

[編集]

日支國交調整方針に關する聲明

( 昭和十三年十二月二十二日
內閣總理大臣
)

 政府は本年再度の聲明に於て明かにしたる如く、終始一貫、抗日國民政府の徹底的武力掃蕩を期すると共に、支那に於ける同憂具眼の士と相携へて東亞新秩序の建設に向つて邁進せんとするものである。今や支那各地に於ては更生の勢澎湃として起り、建設の氣運愈々高まれるを感得せしむるものがある。是に於て政府は、更生新支那との關係を調整すべき根本方針を中外に闡明し、以て帝國の眞意徹底を期するものである。

 日滿支三國は東亞新秩序の建設を共同の目的として結合し、相互に善隣友好、共同防共、經濟提携の實を擧げんとするものである。之が爲には支那は先づ何よりも舊來の偏狹なる觀念を淸算して抗日の愚と滿洲國に對する拘泥の情とを一擲することが必要である。卽ち日本は支那が進んで滿洲國と完全なる國交を修めんことを率直に要望するものである。

 次に東亞の天地にはコミンテルン勢力の存在を許すべからざるが故に、日本は日獨伊防共協定の精神に則り、日支防共協定の締結を以て日支國交調整上喫緊の要件とするものである。而して支那に現存する實情に鑑み、この防共の目的に對する十分なる保障を擧ぐる爲には、同協定繼續期間中、特定地點に日本軍の防共駐屯を認むること及び內蒙地方を特殊防共地域とすべきことを要求するものである。

 日支經濟關係に就いては、日本は何等支那に於て經濟的獨占を行はんとするものに非ず、又新しき東亞を理解しこれに卽應して行動せんとする善意の第三國の利益を制限するが如きことを支那に求むるものにも非ず、唯飽く迄日支の提携と合作とをして實效あらしめんことを期するものである。卽ち日支平等の原則に立つて、支那は帝國臣民に支那內地に於ける居住營業の自由を容認して日支兩國民の經濟的利益を促進し、且つ日支間の歷史的經濟的關係に鑑み、特に北支及內蒙地域に於てはその資源の開發利用上、日本に對し積極的に便宜を與ふることを要求するものである。

 日本の支那に求むるものが區々たる領土に非ず、又戰費の賠償に非ざることは自ら明かである。日本は實に支那が新秩序建設の分擔者としての職能を實行するに必要なる最小限度の保障を要求せんとするものである。日本は支那の主權を尊重するは固より、進んで支那の獨立完成の爲に必要とする治外法權を撤廢し且つ租界の返還に對して積極的なる考慮を拂ふに吝ならざるものである。

JIS X 0208版

[編集]

日支國交調整方針に關する聲明

( 昭和十三年十二月二十二日
内閣總理大臣
)

 政府は本年再度の聲明に於て明かにしたる如く、終始一貫、抗日國民政府の徹底的武力掃蕩を期すると共に、支那に於ける同憂具眼の士と相携へて東亞新秩序の建設に向つて邁進せんとするものである。今や支那各地に於ては更生の勢澎湃として起り、建設の氣運愈々高まれるを感得せしむるものがある。是に於て政府は、更生新支那との關係を調整すべき根本方針を中外に闡明し、以て帝國の眞意徹底を期するものである。

 日滿支三國は東亞新秩序の建設を共同の目的として結合し、相互に善隣友好、共同防共、經濟提携の實を擧げんとするものである。之が爲には支那は先づ何よりも舊來の偏狹なる觀念を清算して抗日の愚と滿洲國に對する拘泥の情とを一擲することが必要である。即ち日本は支那が進んで滿洲國と完全なる國交を修めんことを率直に要望するものである。

 次に東亞の天地にはコミンテルン勢力の存在を許すべからざるが故に、日本は日獨伊防共協定の精神に則り、日支防共協定の締結を以て日支國交調整上喫緊の要件とするものである。而して支那に現存する實情に鑑み、この防共の目的に對する十分なる保障を擧ぐる爲には、同協定繼續期間中、特定地點に日本軍の防共駐屯を認むること及び内蒙地方を特殊防共地域とすべきことを要求するものである。

 日支經濟關係に就いては、日本は何等支那に於て經濟的獨占を行はんとするものに非ず、又新しき東亞を理解しこれに即應して行動せんとする善意の第三國の利益を制限するが如きことを支那に求むるものにも非ず、唯飽く迄日支の提携と合作とをして實效あらしめんことを期するものである。即ち日支平等の原則に立つて、支那は帝國臣民に支那内地に於ける居住營業の自由を容認して日支兩國民の經濟的利益を促進し、且つ日支間の歴史的經濟的關係に鑑み、特に北支及内蒙地域に於てはその資源の開發利用上、日本に對し積極的に便宜を與ふることを要求するものである。

 日本の支那に求むるものが區々たる領土に非ず、又戰費の賠償に非ざることは自ら明かである。日本は實に支那が新秩序建設の分擔者としての職能を實行するに必要なる最小限度の保障を要求せんとするものである。日本は支那の主權を尊重するは固より、進んで支那の獨立完成の爲に必要とする治外法權を撤廢し且つ租界の返還に對して積極的なる考慮を拂ふに吝ならざるものである。

常用漢字版

[編集]

日支国交調整方針に関する声明

( 昭和十三年十二月二十二日
内閣総理大臣
)

 政府は本年再度の声明に於て明かにしたる如く、終始一貫、抗日国民政府の徹底的武力掃蕩を期すると共に、支那に於ける同憂具眼の士と相携へて東亜新秩序の建設に向つて邁進せんとするものである。今や支那各地に於ては更生の勢澎湃として起り、建設の気運愈々高まれるを感得せしむるものがある。是に於て政府は、更生新支那との関係を調整すべき根本方針を中外に闡明し、以て帝国の真意徹底を期するものである。

 日満支三国は東亜新秩序の建設を共同の目的として結合し、相互に善隣友好、共同防共、経済提携の実を挙げんとするものである。之が為には支那は先づ何よりも旧来の偏狭なる観念を清算して抗日の愚と満洲国に対する拘泥の情とを一擲することが必要である。即ち日本は支那が進んで満洲国と完全なる国交を修めんことを率直に要望するものである。

 次に東亜の天地にはコミンテルン勢力の存在を許すべからざるが故に、日本は日独伊防共協定の精神に則り、日支防共協定の締結を以て日支国交調整上喫緊の要件とするものである。而して支那に現存する実情に鑑み、この防共の目的に対する十分なる保障を挙ぐる為には、同協定継続期間中、特定地点に日本軍の防共駐屯を認むること及び内蒙地方を特殊防共地域とすべきことを要求するものである。

 日支経済関係に就いては、日本は何等支那に於て経済的独占を行はんとするものに非ず、又新しき東亜を理解しこれに即応して行動せんとする善意の第三国の利益を制限するが如きことを支那に求むるものにも非ず、唯飽く迄日支の提携と合作とをして実効あらしめんことを期するものである。即ち日支平等の原則に立つて、支那は帝国臣民に支那内地に於ける居住営業の自由を容認して日支両国民の経済的利益を促進し、且つ日支間の歴史的経済的関係に鑑み、特に北支及内蒙地域に於てはその資源の開発利用上、日本に対し積極的に便宜を与ふることを要求するものである。

 日本の支那に求むるものが区々たる領土に非ず、又戦費の賠償に非ざることは自ら明かである。日本は実に支那が新秩序建設の分担者としての職能を実行するに必要なる最小限度の保障を要求せんとするものである。日本は支那の主権を尊重するは固より、進んで支那の独立完成の為に必要とする治外法権を撤廃し且つ租界の返還に対して積極的なる考慮を払ふに吝ならざるものである。

関連項目

[編集]

この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)


この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。