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新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針

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新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針

令和2年3月28日(令和3年3月5日変更)

新型コロナウイルス感染症対策本部決定

政府は、新型コロナウイルス感染症への対策は危機管理上重大な課題であるとの認識の下、国民の生命を守るため、これまで水際での対策、まん延防止、医療の提供等について総力を挙げて講じてきた。国内において、感染経路の不明な患者の増加している地域が散発的に発生し、一部の地域で感染拡大が見られてきたため、令和2年3月26日、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号。以下「法」という。)附則第1条の2第1項及び第2項の規定により読み替えて適用する法第14条に基づき、新型コロナウイルス感染症のまん延のおそれが高いことが、厚生労働大臣から内閣総理大臣に報告され、同日に、法第15条第1項に基づく政府対策本部が設置された。
国民の生命を守るためには、感染者数を抑えること及び医療提供体制や社会機能を維持することが重要である。
その上で、まずは、後述する「三つの密」を徹底的に避ける、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗いなどの手指衛生」等の基本的な感染対策を行うことをより一層推進し、さらに、積極的疫学調査等によりクラスター(患者間の関連が認められた集団。以下「クラスター」という。)の発生を抑えることが、いわゆるオーバーシュートと呼ばれる爆発的な感染拡大(以下「オーバーシュート」という。)の発生を防止し、感染者、重症者及び死亡者の発生を最小限に食い止めるためには重要である。
また、必要に応じ、外出自粛の要請等の接触機会の低減を組み合わせて実施することにより、感染拡大の速度を可能な限り抑制することが、上記の封じ込めを図るためにも、また、医療提供体制を崩壊させないためにも、重要である。
併せて、今後、国内で感染者数が急増した場合に備え、重症者等への対応を中心とした医療提供体制等の必要な体制を整えるよう準備することも必要である。
既に国内で感染が見られる新型コロナウイルス感染症に関しては、
  •  肺炎の発生頻度が、季節性インフルエンザにかかった場合に比して相当程度高く、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあること
  •  感染経路が特定できない症例が多数に上り、かつ、急速な増加が確認されており、医療提供体制もひっ迫してきていることから、全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある状況であること
が、総合的に判断されている。
このようなことを踏まえて、令和2年4月7日に、新型コロナウイルス感染症対策本部長(以下「政府対策本部長」という。)は法第32条第1項に基づき、緊急事態宣言を行った。緊急事態措置を実施すべき期間は令和2年4月7日から令和2年5月6日までの29日間であり、緊急事態措置を実施すべき区域(以下「緊急事態措置区域」という。)は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県とした。
以後、4月16日に、各都道府県における感染状況等を踏まえ、全都道府県について緊急事態措置を実施すべき区域とし、5月4日には、全都道府県において緊急事態措置を実施すべき期間を令和2年5月31日まで延長することとした。その後、各都道府県における感染状況等を踏まえ、段階的に緊急事態措置を実施すべき区域を縮小していった。
5月25日に、感染状況等を分析し、総合的に判断した結果、全ての都道府県が緊急事態措置を実施すべき区域に該当しないこととなったため、政府対策本部長は、法第32条第5項に基づき、緊急事態解除宣言を行った。
その後、新規報告数は、10月末以降増加傾向となり、11月以降その傾向が強まっていった。12月には首都圏を中心に新規報告数は過去最多の状況が継続し、医療提供体制がひっ迫している地域が見受けられた。
こうした感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況に鑑み、令和3年1月7日、政府対策本部長は、法第32条第1項に基づき、緊急事態宣言を行った。緊急事態措置を実施すべき期間は令和3年1月8日から令和3年2月7日までの31日間であり、緊急事態措置を実施すべき区域は東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県とした。
令和3年1月13日には、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置を実施すべき区域に栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県を加える変更を行った。
令和3年2月2日には、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、2月8日以降については、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置区域を埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県の10都府県に変更するとともに、これらの区域において緊急事態措置を実施すべき期間を令和3年3月7日まで延長することとした。ただし、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認められるときは、法第32条第5項の規定に基づき、速やかに緊急事態を解除することとした。
政府は、新型コロナウイルス感染症に係る対策を強化するため、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置(以下「まん延防止等重点措置」という。)の創設などを含む新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律案を国会に提出し、令和3年2月3日に成立した。これにより改正された法は令和3年2月13日に施行された。
令和3年2月26日には、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、3月1日以降については、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置区域を埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の4都県に変更することとした。
その後、令和3年3月5日に、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、法第32条第3項に基づき、引き続き埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の4都県を緊急事態措置区域とし、これらの区域において緊急事態措置を実施すべき期間を令和3年3月21日まで延長することとした。これらの都県については、対策の更なる徹底を図るとともに、感染の再拡大を防止するための取組を進め
また、緊急事態措置が解除された府県においては、感染の再拡大を防止するため、効果的な感染防止策を講じることとする。
本指針は、国民の生命を守るため、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況を的確に把握し、政府や地方公共団体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民が気持ちを一つにして、新型コロナウイルス感染症対策をさらに進めていくため、今後講じるべき対策を現時点で整理し、対策を実施するに当たって準拠となるべき統一的指針を示すものである。

一 新型コロナウイルス感染症発生の状況に関する事実

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我が国においては、令和2年1月15日に最初の感染者が確認された後、令和3年3月3日までに、合計433,290人の感染者、8,050人の死亡者が確認されている。
令令和2年4月から5月にかけての緊急事態宣言下において、東京都、大阪府、北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、兵庫県及び福岡県の13都道府県については、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要があったことから、本対処方針において特定都道府県(緊急事態宣言の対象区域に属する都道府県)の中でも「特定警戒都道府県」と位置付けて対策を促してきた。
また、これら特定警戒都道府県以外の県についても、都市部からの人の移動等によりクラスターが都市部以外の地域でも発生し、感染拡大の傾向が見られ、そのような地域においては、医療提供体制が十分に整っていない場合も多いことや、全都道府県が足並みをそろえた取組が行われる必要があったことなどから、全ての都道府県について緊急事態措置を実施すべき区域として感染拡大の防止に向けた対策を促してきた。
その後、5月1日及び4日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下「専門家会議」という。)の見解を踏まえ、引き続き、それまでの枠組みを維持し、全ての都道府県について緊急事態措置を実施すべき区域(特定警戒都道府県は前記の13都道府県とする。)として感染拡大の防止に向けた取組を進めてきた。
その結果、全国的に新規報告数の減少が見られ、また、新型コロナウイルス感染症に係る重症者数も減少傾向にあることが確認され、さらに、病床等の確保も進み、医療提供体制のひっ迫の状況も改善されてきた。
5月14日には、その時点における感染状況等の分析・評価を行い、総合的に判断したところ、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府及び兵庫県の8都道府県については、引き続き特定警戒都道府県として、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていくこととなった。
また、5月21日には、同様に、分析・評価を行い、総合的に判断したところ、北海道、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の5都道県については、引き続き特定警戒都道府県として、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要があった。
その後、5月25日に改めて感染状況の変化等について分析・評価を行い、総合的に判断したところ、全ての都道府県が緊急事態措置を実施すべき区域に該当しないこととなったため、同日、緊急事態解除宣言が発出された。
緊急事態宣言解除後、主として7月から8月にかけて、特に大都市部の歓楽街における接待を伴う飲食店を中心に感染が広がり、その後、周辺地域、地方や家庭・職場などに伝播し、全国的な感染拡大につながっていった。
この感染拡大については、政府及び都道府県、保健所設置市、特別区(以下「都道府県等」という。)が連携し、大都市の歓楽街の接待を伴う飲食店等、エリア・業種等の対象を絞った上で、重点的なPCR検査の実施や営業時間短縮要請など、メリハリの効いた対策を講じることにより、新規報告数は減少に転じた。
また、8月7日の新型コロナウイルス感染症対策分科会(以下「分科会」という。)においては、今後想定される感染状況に応じたステージの分類を行うとともに、ステージを判断するための指標(「6つの指標」。以下「ステージ判断の指標」という。)及び各ステージにおいて講じるべき施策が提言された。
この提言を踏まえ、今後、緊急事態宣言の発出及び解除(緊急事態措置区域の追加及び除外を含む。)の判断に当たっては、以下を基本として判断することとする。その際、「ステージ判断の指標」は、提言において、あくまで目安であり、これらの指標をもって機械的に判断するのではなく、政府や都道府県はこれらの指標を総合的に判断すべきとされていることに留意する。また、緊急事態措置区域を定めるに当たっては、都道府県間の社会経済的なつながり等を考慮する。
(緊急事態宣言発出の考え方)
国内での感染拡大及び医療提供体制・公衆衛生体制のひっ迫の状況(特に、分科会提言におけるステージⅣ相当の対策が必要な地域の状況等)を踏まえて、全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるか否かについて、政府対策本部長が基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断する。
(緊急事態宣言解除の考え方)
国内での感染及び医療提供体制・公衆衛生体制のひっ迫の状況(特に、緊急事態措置を実施すべき区域が、分科会提言におけるステージⅢ相当の対策が必要な地域になっているか等)を踏まえて、政府対策本部長が基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断する。
なお、緊急事態宣言の解除後の対策の緩和については段階的に行い、必要な対策はステージⅡ相当以下に下がるまで続ける。
8月28日には政府対策本部が開催され、「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」がとりまとめられ、重症化するリスクが高い高齢者や基礎疾患がある者への感染防止を徹底するとともに、医療資源を重症者に重点化すること、また、季節性インフルエンザの流行期に備え、検査体制、医療提供体制を確保・拡充することとなった。
夏以降、減少に転じた新規報告数は、10月末以降増加傾向となり、11月以降その傾向が強まっていったことから、クラスター発生時の大規模・集中的な検査の実施による感染の封じ込めや感染拡大時の保健所支援の広域調整等、政府と都道府県等が密接に連携しながら、対策を講じていった。また、10月23日の分科会においては、「感染リスクが高まる「5つの場面」」を回避することや、「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」を周知することなどの提言がなされた。12月には首都圏を中心に新規報告数は過去最多の状況が継続し、医療提供体制がひっ迫している地域が見受けられた。
こうした感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況に鑑み、令和3年1月7日、政府対策本部長は、法第32条第1項に基づき、緊急事態措置を実施すべき期間を令和3年1月8日から令和3年2月7日までの31日間とし、区域を東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県とする緊急事態宣言を行った。
令和3年1月13日には、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置を実施すべき区域に栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県を加える変更を行った。
令和3年2月2日には、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、2月8日以降については、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置区域を埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県の10都府県に変更するとともに、これらの区域において緊急事態措置を実施すべき期間を令和3年3月7日まで延長した。
令和3年2月26日には、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、3月1日以降については、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置区域を埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の4都県に変更することとした。
その後、令和3年3月5日に、感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、法第32条第3項に基づき、引き続き埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の4都県を緊急事態措置区域とし、これらの区域において緊急事態措置を実施すべき期間を令和3年3月21日まで延長することとした。
令和3年2月3日に成立した新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律(令和3年法律第5号)の施行(以下「改正法の施行」という。)を踏まえ、まん延防止等重点措置の実施及び終了の判断に当たっては、以下を基本として判断する。その際、「ステージ判断の指標」は、提言において、あくまで目安であり、これらの指標をもって機械的に判断するのではなく、政府や都道府県はこれらの指標を総合的に判断すべきとされていることに留意する。
(まん延防止等重点措置の実施の考え方)
都道府県の特定の区域において感染が拡大し、当該都道府県全域に感染が拡大するおそれがあり、それに伴い医療提供体制・公衆衛生体制に支障が生ずるおそれがあると認められる事態が発生していること(特に、分科会提言におけるステージⅢ相当の対策が必要な地域の状況になっている等)を踏まえ、政府対策本部長が基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断する。
また、都道府県がステージⅡ相当の対策が必要な地域においても、当該都道府県の特定の区域において感染が急速に拡大し、都道府県全域に感染が拡大するおそれがあると認められる場合や、都道府県がステージⅢ相当の対策が必要な地域において、感染が減少傾向であっても、当該都道府県の特定の区域において感染水準が高い又は感染が拡大しているなど、感染の再拡大を防止する必要性が高い場合に、政府対策本部長が基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断する。
(まん延防止等重点措置の終了の考え方)
都道府県の感染及び医療提供体制・公衆衛生体制のひっ迫の状況(特に、まん延防止等重点措置を実施している区域の感染状況が、都道府県全域に感染を拡大させるおそれがない水準か等)を踏まえて、政府対策本部長が基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断する。
新型コロナウイルス感染症については、以下のような特徴がある。
  •  新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化する人の割合や死亡する人の割合は年齢によって異なり、高齢者は高く、若者は低い傾向にある。令和2年6月から8月に診断された人における重症化する割合や死亡する割合は1月から4月までと比べて低下している。重症化する人の割合は約1.6%(50歳代以下で0.3%、60歳代以上で8.5%)、死亡する人の割合は、約1.0%(50歳代以下で0.06%、60歳代以上で5.7%)となっている。
  •  重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある人で、重症化のリスクとなる基礎疾患には、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満がある。
  •  新型コロナウイルスに感染した人が他の人に感染させる可能性がある期間は、発症の2日前から発症後7日から10日間程度とされている。また、この期間のうち、発症の直前・直後で特にウイルス排出量が高くなると考えられている。
     新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、他の人に感染させているのは2割以下で、多くの人は他の人に感染させていないと考えられている。
  •  新型コロナウイルス感染症は、主に飛沫感染や接触感染によって感染し、①密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、②密集場所(多くの人が密集している)、③密接場面(互いに手を伸ばしたら手が届く距離での会話や発声が行われる)という3つの条件(以下「三つの密」という。)の環境で感染リスクが高まる。このほか、飲酒を伴う懇親会等、大人数や長時間に及ぶ飲食、マスクなしでの会話、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わりといった場面でも感染が起きやすく、注意が必要である。
  •  新型コロナウイルス感染症を診断するための検査には、PCR検査、抗原定量検査、抗原定性検査等がある。新たな検査手法の開発により、検査の種類や症状に応じて、鼻咽頭ぬぐい液だけでなく、唾液や鼻腔ぬぐい液を使うことも可能になっている。なお、抗体検査は、過去に新型コロナウイルス感染症にかかったことがあるかを調べるものであるため、検査を受ける時点で感染しているかを調べる目的に使うことはできない。
  •  新型コロナウイルス感染症の治療は、軽症の場合は経過観察のみで自然に軽快することが多く、必要な場合に解熱薬などの対症療法を行う。呼吸不全を伴う場合には、酸素投与やステロイド薬(炎症を抑える薬)・抗ウイルス薬の投与を行い、改善しない場合には人工呼吸器や体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)等による集中治療を行うことがある。
  •  世界各地で変異株が確認されている。国立感染症研究所によると、N501Yの変異がある変異株は、英国で確認された変異株(VOC-202012/01) 、南アフリカで確認された変異株(501Y.V2)、ブラジルで確認された変異株(501Y.V3)がある。この変異株については、従来株よりも感染性が増していることが懸念されている。また、E484Kの変異がある変異株は、南アフリカで確認された変異株、ブラジルで確認された変異株がある。このほか、「N501Yの変異はないがE484Kの変異がある変異株」が、現在、我が国において確認されている。このE484Kの変異がある変異株については、従来株より、免疫やワクチンの効果を低下させる可能性が指摘されている。
     国立感染症研究所によると、変異株であっても、個人の基本的な感染予防策としては、従来と同様に、特に「感染リスクが高まる「5つの場面」」など「三つの密」の回避、マスクの着用、手洗い等が有効であり、推奨されている。
  •  日本国内におけるウイルスの遺伝子的な特徴を調べた研究によると、令和2年1月から2月にかけて、中国武漢から日本国内に侵入した新型コロナウイルスは3月末から4月中旬に封じ込められた一方で、その後、欧米経由で侵入した新型コロナウイルスが日本国内に拡散したものと考えられている。7月、8月の感染拡大は、検体全てが欧州系統から派生した2系統に集約されたものと考えられる。現時点では、国内感染は国内で広がったものが主流と考えられる。
  •  また、ワクチンについては、令和3年前半までに全国民に提供できる数量の確保を目指すこととしており、これまでモデルナ社、アストラゼネカ社及びファイザー社のワクチンの供給を受けることについて契約締結に至っている。ワクチンの接種を円滑に実施するため、予防接種法(昭和23年法律第68号)の改正を行うとともに、分科会での議論経過等を踏まえ、内閣官房及び厚生労働省において令和3年2月9日に「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種について」(以下「ワクチン接種について」という。)をとりまとめた。その後、2月14日にはファイザー社のワクチンが薬事承認され、厚生科学審議会等を経て、2月17日に医療従事者向けの先行接種を開始した。その他、アストラゼネカ社のワクチンについて薬事承認申請がなされており、現在、安全性及び有効性の確認を最優先に、迅速審査を行っている。
  •  新型コロナウイルス感染症による日本での経済的な影響を調べた研究では、クレジットカードの支出額によれば、人との接触が多い業態や在宅勤務(テレワーク)の実施が困難な業態は、3月以降、売り上げがより大きく減少しており、影響を受けやすい業態であったことが示されている。また、令和2年4~6月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比8.3%減、年率換算で29.2%減を記録した。

二 新型コロナウイルス感染症の対処に関する全般的な方針

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① これまでの感染拡大期の経験や国内外の様々な研究等の知見を踏まえ、より効果的な感染防止策等を講じていく。
② 緊急事態措置区域においては、社会経済活動を幅広く止めるのではなく、感染リスクが高く感染拡大の主な起点となっている場面に効果的な対策を徹底する。すなわち、飲食を伴うものを中心として対策を講じることとし、その実効性を上げるために、飲食につながる人の流れを制限することを実施する。具体的には、飲食店に対する営業時間短縮要請、外出の自粛要請、テレワークの推進等の取組を強力に推進する。
③ 緊急事態措置区域から除外された地域においては、対策の緩和については段階的に行い、必要な対策はステージⅡ相当以下に下がるまで続ける。
④ まん延防止等重点措置を実施すべき区域(以下「重点措置区域」という。)においては、都道府県知事が定める期間、区域及び業態において、感染リスクが高く感染拡大の主な起点となっている場面に効果的な対策を徹底する。
⑤ 緊急事態措置区域及び重点措置区域以外の地域においては、地域の感染状況や医療提供体制の確保状況等を踏まえながら、感染拡大の防止と社会経済活動の維持との持続的な両立を図っていく。その際、感染状況は地域によって異なることから、各都道府県知事が適切に判断する必要があるとともに、人の移動があることから、隣県など社会経済的につながりのある地域の感染状況に留意する必要がある。
⑥ 感染拡大を予防する「新しい生活様式」の定着や「感染リスクが高まる「5つの場面」」を回避すること等を促すとともに、事業者及び関係団体に対して、業種別ガイドライン等の実践と科学的知見等に基づく進化を促していく。
⑦ 新型コロナウイルス感染症についての監視体制の整備及び的確な情報提供・共有により、感染状況等を継続的に監視する。また、医療提供体制がひっ迫することのないよう万全の準備を進めるほか、検査機能の強化、保健所の体制強化及びクラスター対策の強化等に取り組む。
⑧ 的確な感染防止策及び経済・雇用対策により、感染拡大の防止と社会経済活動の維持との両立を持続的に可能としていく。
⑨ 感染の拡大が認められる場合には、政府や都道府県が密接に連携しながら、重点的・集中的なPCR検査の実施や営業時間短縮要請等を含め、速やかに強い感染対策等を講じる。

三 新型コロナウイルス感染症対策の実施に関する重要事項

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(1)情報提供・共有

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① 政府は、地方公共団体と連携しつつ、以下の点について、国民の共感が得られるようなメッセージを発出するとともに、状況の変化に即応した情報提供や呼びかけを行い、行動変容に資する啓発を進めるとともに、冷静な対応をお願いする。

  •  発生状況や患者の病態等の臨床情報等の正確な情報提供。
  •  国民にわかりやすい疫学解析情報の提供。
  •  医療提供体制及び検査体制に関する分かりやすい形での情報の提供。
  •  「三つの密」の回避や、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗いなどの手指衛生」をはじめとした基本的な感染対策の徹底等、感染拡大を予防する「新しい生活様式」の定着に向けた周知。
  •  室内で「三つの密」を避けること。特に、日常生活及び職場において、人混みや近距離での会話、多数の者が集まり室内において大きな声を出すことや歌うこと、呼気が激しくなるような運動を行うことを避けるように強く促すこと。
  •  令和2年10月23日の分科会で示された、「感染リスクが高まる「5つの場面」」(飲酒を伴う懇親会やマスクなしでの会話など)や、「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」(なるべく普段一緒にいる人と少人数、席の配置は斜め向かい、会話の時はマスク着用等)の周知。
  •  業種別ガイドライン等の実践。特に、飲食店等について、業種別ガイドラインを遵守している飲食店等を利用するよう、促すこと。
  •  風邪症状等体調不良がみられる場合の休暇取得、学校の欠席、外出自粛等の呼びかけ。
  •  感染リスクを下げるため、医療機関を受診する時は、あらかじめ厚生労働省が定める方法による必要があることの周知。
  •  新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の考え方を分かりやすく周知すること。
  •  感染者・濃厚接触者や、診療に携わった医療機関・医療関係者その他の対策に携わった方々に対する誤解や偏見に基づく差別を行わないことの呼びかけ。
  •  従業員及び学生の健康管理や感染対策の徹底についての周知。
  •  国民の落ち着いた対応(不要不急の帰省や旅行など都道府県をまたいだ移動の自粛等や商店への殺到の回避及び買い占めの防止)の呼びかけ。
  •  接触確認アプリ(COVID-19 Contact-Confirming Application:COCOA)のインストールを呼びかけるとともに、陽性者との接触があった旨の通知があった場合における適切な機関への受診の相談や陽性者と診断された場合における登録の必要性についての周知。併せて、地域独自のQRコード等による追跡システムの利用の呼びかけ。

② 政府は、広報担当官を中心に、官邸のウェブサイトにおいて厚生労働省等関係省庁のウェブサイトへのリンクを紹介するなどして有機的に連携させ、かつ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)等の媒体も積極的に活用することで、迅速かつ積極的に国民等への情報発信を行う。
③ 政府は、民間企業等とも協力して、情報が必ずしも届いていない層に十分な情報が行き届くよう、丁寧な情報発信を行う。
④ 厚生労働省は、感染症やクラスターの発生状況について迅速に情報を公開する。
⑤ 外務省は、全世界で感染が拡大していることを踏まえ、各国に滞在する邦人等への適切な情報提供、支援を行う。
⑥ 政府は、検疫所からの情報提供に加え、企業等の海外出張又は長期の海外滞在のある事業所、留学や旅行機会の多い大学等においても、帰国者への適切な情報提供を行い、渡航の是非の判断・確認や、帰国者に対する14日間の外出自粛の要請等の必要な対策を講じるよう周知を図る。
⑦ 政府は、国民、在留外国人、外国人旅行者及び外国政府に対し、帰国時・入国時の手続や目的地までの交通手段の確保等について適切かつ迅速な情報提供を行い、国内でのまん延防止と風評対策につなげる。また、政府は、日本の感染対策や感染状況の十分な理解を醸成するよう、諸外国に対して情報発信に努める。
⑧ 地方公共団体は、政府との緊密な情報連携により、様々な手段により住民に対して地域の感染状況に応じたメッセージや注意喚起を行う。
⑨ 都道府県等は、厚生労働省や専門家と連携しつつ、積極的疫学調査により得られた情報を分析し、今後の対策に資する知見をまとめて、国民に還元するよう努める。
⑩ 政府は、今般の新型コロナウイルス感染症に係る事態が行政文書の管理に関するガイドライン(平成23年4月1日内閣総理大臣決定)に基づく「歴史的緊急事態」と判断されたことを踏まえた対応を行う。地方公共団体も、これに準じた対応に努める。

(2)サーベイランス・情報収集

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① 感染の広がりを把握するために必要な検査を実施し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)第12条に基づく医師の届出等によりその実態を把握する。
② 厚生労働省及び都道府県等は、感染が拡大する傾向が見られる場合はそれを迅速に察知して的確に対応できるよう、戦略的サーベイランス体制を整えておく必要がある。また、感染拡大の防止と社会経済活動の維持との両立を進めるためにも感染状況を的確に把握できる体制をもつことが重要であるとの認識の下、地方衛生研究所や民間の検査機関等の関係機関における検査体制の一層の強化、地域の関係団体と連携した地域外来・検査センターの設置等を迅速に進めるとともに、新しい検査技術についても医療現場に迅速に導入する。都道府県は、医療機関等の関係機関により構成される会議体を設けること等により、民間の検査機関等の活用促進を含め、PCR検査等の実施体制の把握・調整等を図る。さらに、厚生労働省は、PCR検査及び抗原検査の役割分担について検討・評価を行う。また、これらを踏まえ、検査が必要な者に、より迅速・円滑に検査を行い、感染が拡大している地域においては、医療・介護従事者、入院・入所者等関係者に対し、PCR検査等による幅広い検査の実施に向けて取組を進めるとともに、院内・施設内感染対策の強化を図る。特定都道府県に対し、感染多数地域における高齢者施設の従事者等の検査の集中的実施計画を策定し、令和3年3月までを目途に実施するとともに、その後も地域の感染状況に応じ定期的に実施するよう求める。また、政府は、緊急事態宣言措置区域であった都道府県等と連携しつつ、再度の感染拡大の予兆や感染源を早期に探知するため、幅広いPCR検査等(モニタリング検査)やデータ分析を実施する。政府と都道府県等で協働して今後の感染拡大局面も見据えた準備を進めるため、厚生労働省は、財政的な支援をはじめ必要な支援を行い、都道府県等は、相談・検体採取・検査の一連のプロセスを通じた対策を実施する。また、社会経済活動の中で希望により受ける民間検査については、感染症法第16条の2に基づき、民間検査機関に精度管理や提携医療機関の決定等の協力を求めることなどにより環境整備を進めていく。
③ 厚生労働省は、感染症法第12条に基づく医師の届出とは別に、市中での感染状況を含め国内の流行状況等を把握するため、抗体保有状況に関する調査など有効なサーベイランスを実施する。また、いわゆる超過死亡については、新型コロナウイルス感染症における超過死亡を推計し、適切に把握する。
④ 厚生労働省は、医療機関や保健所の事務負担の軽減を図りつつ、患者等に関する情報を関係者で迅速に共有するための情報把握・管理支援システム(Health Center Real-time Information-sharing System on COVID-19:HER-SYS)を活用し、都道府県別の陽性者数等の統計データの収集・分析を行うとともに、その結果を適宜公表し、より効果的・効率的な対策に活用していく。
⑤ 政府は、医療機関の空床状況や人工呼吸器・ECMOの保有・稼働状況等を迅速に把握する医療機関等情報支援システム(Gathering Medical Information System :G-MIS)を構築・運営し、医療提供状況やPCR検査等の実施状況等を一元的かつ即座に把握するとともに、都道府県等にも提供し、迅速な患者の受入調整等にも活用する。
⑥ 文部科学省及び厚生労働省は、学校等での集団発生の把握の強化を図る。
⑦ 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症に関するいわゆる後遺症について、諸外国で報告もあることも踏まえ、調査・研究を進める。
⑧ 政府は、変異株のクラスターが複数報告され、海外とのつながりがない事例等も継続して確認されていることを踏まえ、変異株スクリーニングの強化、国内検体のゲノム解析の実施、変異株が発生した際の積極的疫学調査の強化や幅広い関係者への検査の徹底など、国内の変異株の監視体制を強化する。
⑨ 都道府県等は、感染症法第12条及び第15条に基づき、地方公共団体間での迅速な情報共有を行うとともに、都道府県は、県下の感染状況について、リスク評価を行う。
⑩ 遺伝子配列を分析するにあたり、公衆衛生対策を進めていく上で必要な情報を、国立感染症研究所において収集を行う。

(3)まん延防止

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1)外出の自粛(後述する「4)職場への出勤等」を除く)

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特定都道府県は、法第45条第1項に基づき、日中も含めた不要不急の外出・移動の自粛について協力の要請を行うものとする。特に、20時以降の不要不急の外出自粛について、住民に徹底する。なお、その際、不要不急の都道府県間の移動や、感染が拡大している地域への不要不急の移動は、極力控えるように促す。
医療機関への通院、食料・医薬品・生活必需品の買い出し、必要な職場への出勤、屋外での運動や散歩など、生活や健康の維持のために必要なものについては外出の自粛要請の対象外とする。
また、「三つの密」を徹底的に避けるとともに、「人と人との距離の確保」「マスクの着用」「手洗いなどの手指衛生」等の基本的な感染対策を徹底するとともに、あらゆる機会を捉えて、令和2年4月22日の専門家会議で示された「10のポイント」、5月4日の専門家会議で示された「新しい生活様式の実践例」、10月23日の分科会で示された、「感染リスクが高まる「5つの場面」」等を活用して住民に周知を行うものとする。

2)催物(イベント等)の開催制限

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特定都道府県は、当該地域で開催される催物(イベント等)について、主催者等に対して、法第45条第2項等に基づき、別途通知する目安を踏まえた規模要件等(人数上限・収容率、飲食を伴わないこと等)を設定し、その要件に沿った開催の要請等を行うものとする。
その際、改正法の施行により、命令、過料の規定が設けられたことを踏まえ、その手続に関しては、別途通知する手続に沿って行うことに留意する。このことは後述3)においても同様とする。
併せて、開催に当たっては、業種別ガイドラインの徹底や催物前後の「三つの密」及び飲食を回避するための方策を徹底するよう、主催者等に求めるものとする。
また、スマートフォンを活用した接触確認アプリ(COCOA)について、検査の受診等保健所のサポートを早く受けられることやプライバシーに最大限配慮した仕組みであることを周知し、民間企業・団体等の幅広い協力を得て引き続き普及を促進する。

3)施設の使用制限等(前述の「2)催物(イベント等)の開催制限」、後述する「5)学校等の取扱い」を除く)

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① 特定都道府県は、法第45条第2項等に基づき、感染リスクが高いと指摘されている飲食の場を避ける観点から、飲食店に対して営業時間の短縮(20時までとする。ただし、酒類の提供は11時から19時までとする。)の要請を行うとともに、法第24条第9項に基づき、業種別ガイドラインを遵守するよう要請を行うものとする。
 要請に当たっては、関係機関とも連携し、営業時間の短縮等を徹底するための対策・体制の強化を行い、できる限り個別に施設に対して働きかけを行う。その際、併せて、事業者に対して、業種別ガイドラインの遵守を働きかける。
 また、特定都道府県は、20時以降の不要不急の外出自粛を徹底すること及び施設に人が集まり、飲食につながることを防止する必要があること等を踏まえ、別途通知する飲食店以外の[[新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令[[(平成25年政令第122号。以下「令」という。)第11条に規定する施設についても、同様の働きかけを行うものとする。
 また、特定都道府県は、感染の拡大につながるおそれのある一定の施設について、別途通知する目安を踏まえた規模要件等(人数上限・収容率、飲食を伴わないこと等)を設定し、その要件に沿った施設の使用の働きかけを行うとともに、法第24条第9項に基づき、業種別ガイドラインを遵守するよう要請を行うものとする。
② 政府は、地方創生臨時交付金に設けた「協力要請推進枠」により、飲食店に対して営業時間短縮要請等と協力金の支払いを行う都道府県を支援する。
③ 事業者及び関係団体は、今後の持続的な対策を見据え、業種別ガイドライン等を実践するなど、自主的な感染防止のための取組を進める。その際、政府は、専門家の知見を踏まえ、関係団体等に必要な情報提供や助言等を行う。

4)職場への出勤等

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① 政府及び特定都道府県は、事業者に対して、以下の取組を行うよう働きかけを行うものとする。

  •  職場への出勤は、外出自粛等の要請の対象から除かれるものであるが、「出勤者数の7割削減」を目指すことも含め接触機会の低減に向け、在宅勤務(テレワーク)や、出勤が必要となる職場でもローテーション勤務等を更に徹底すること。
  •  20時以降の不要不急の外出自粛を徹底することを踏まえ、事業の継続に必要な場合を除き、20時以降の勤務を抑制すること。
  •  職場に出勤する場合でも、時差出勤、自転車通勤等の人との接触を低減する取組を強力に推進すること。
  •  職場においては、感染防止のための取組(手洗いや手指消毒、咳エチケット、職員同士の距離確保、事業場の換気励行、複数人が触る箇所の消毒、発熱等の症状が見られる従業員の出勤自粛、出張による従業員の移動を減らすためのテレビ会議の活用等)や「三つの密」や「感染リスクが高まる「5つの場面」」等を避ける行動を徹底するよう促すこと。特に職場での「居場所の切り替わり」(休憩室、更衣室、喫煙室等)に注意するよう周知すること。さらに、職場や店舗等に関して、業種別ガイドライン等を実践するよう働きかけること。
  •  別添に例示する国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な業務を行う事業者及びこれらの業務を支援する事業者においては、「三つの密」を避けるために必要な対策を含め、十分な感染防止策を講じつつ、事業の特性を踏まえ、業務を継続すること。

② 政府及び地方公共団体は、在宅勤務(テレワーク)、ローテーション勤務、時差出勤、自転車通勤等、人との接触を低減する取組を自ら進めるとともに、事業者に対して必要な支援等を行う。
③ 政府は、上記①に示された感染防止のための取組等を働きかけるため、特に留意すべき事項を提示し、事業者自らが当該事項の遵守状況を確認するよう促す。また、遵守している事業者に、対策実施を宣言させるなど、感染防止のための取組が勧奨されるよう促す。

5)学校等の取扱い

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① 文部科学省は、学校設置者及び大学等に対して一律に臨時休業を求めるのではなく、地域の感染状況に応じた感染防止策の徹底を要請する。幼稚園、小学校、中学校、高等学校等については、子供の健やかな学びの保障や心身への影響の観点から、「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」等を踏まえた対応を要請する。また、大学等については、感染防止と面接授業・遠隔授業の効果的実施等による学修機会の確保の両立に向けて適切に対応することを要請する。部活動、課外活動、学生寮における感染防止策、懇親会や飲み会などについては、学生等への注意喚起の徹底(緊急事態宣言区域においては、部活動における感染リスクの高い活動の制限)を要請する。大学入試、高校入試等については、実施者において、感染防止策や追検査等による受験機会の確保に万全を期した上で、予定どおり実施する。都道府県は、学校設置者に対し、保健管理等の感染症対策について指導するとともに、地域の感染状況や学校関係者の感染者情報について速やかに情報共有を行うものとする。
② 厚生労働省は、保育所や放課後児童クラブ等について、感染防止策の徹底を行いつつ、原則開所することを要請する。

6)緊急事態措置を実施すべき区域から除外された都道府県における取組等

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① 緊急事態措置区域から除外された都道府県においては、前述したように「対策の緩和については段階的に行い、必要な対策はステージⅡ相当以下に下がるまで続ける」ことを基本とし、後述8)に掲げる基本的な感染防止策等に加え、住民や事業者に対して、以下の取組を行うものとする。その際、地域の感染状況や感染拡大リスク等について評価を行いながら、対策を段階的に緩和する。また、再度、感染拡大の傾向が見られる場合には、地域における感染状況や公衆衛生体制・医療提供体制への負荷の状況について十分、把握・分析を行いつつ、迅速かつ適切に取組の強化を図るものとする。その際、「緊急事態宣言解除後の地域におけるリバウンド防止策についての提言」(令和3年2月25日新型コロナウイルス感染症対策分科会)を参考にして取り組むものとする。

  •  当面、法第24条第9項に基づき、日中も含めた不要不急の外出の自粛について協力の要請を行うこと。その後、地域の感染状況等を踏まえながら、段階的に緩和すること。
  •  当該地域で開催される催物(イベント等)に係る規模要件等(人数上限・収容率、飲食を伴わないこと等)については、地域の感染状況等を踏まえながら、段階的に緩和すること。
  •  当面、法第24条第9項に基づく飲食店に対する営業時間の短縮の要請については、継続すること。なお、営業時間及び対象地域等については、地域の感染状況等に応じ、各都道府県知事が適切に判断すること。
     また、別途通知する飲食店以外の他の令第11条に規定する施設に対する営業時間の短縮等の働きかけについては、地域の感染状況等に応じ、各都道府県知事が適切に判断すること。
  •  職場への出勤等については、当面、「出勤者数の7割削減」を目指し、在宅勤務(テレワーク)や、出勤が必要となる職場でもローテーション勤務等を強力に推進すること。その後、地域の感染状況等を踏まえながら、段階的に緩和すること。

② 政府は、地方創生臨時交付金に設けた「協力要請推進枠」により、飲食店に対して営業時間短縮要請等と協力金の支払いを行う都道府県を支援する。
③ 政府及び都道府県は、再度の感染拡大の予兆や感染源を早期に探知するため、歓楽街等感染リスクの高い場所を中心に無症状者に焦点を当てた幅広いPCR検査等(モニタリング検査)やデータ分析の実施を検討し、感染の再拡大を防ぐこと。
④ 都道府県は、①③の取組を行うに当たっては、あらかじめ政府と迅速に情報共有を行う。

7)重点措置区域における取組等

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① 重点措置区域である都道府県においては、まん延防止等重点措置が、地域の感染状況に応じて、期間・区域、業態を絞った措置を機動的に実施できる仕組みであり、発生の動向等を踏まえた集中的な対策により、地域的に感染を抑え込むことで、全国的かつ急速なまん延を防ぐ趣旨で創設されたものであることを踏まえ、感染リスクが高く感染拡大の主な起点となっている場面に効果的な対策を徹底するため、後述8)に掲げる基本的な感染防止策等に加え、以下の取組を行うものとする。
 また、都道府県知事は、区域を指定するに当たって市町村単位や一定の区画を原則とするなど、区域、期間及び業態を定めるに当たっては、効果的な対策となるよう留意する。

  •  感染リスクが高いと指摘されている飲食の場を避ける観点から、都道府県知事が定める期間及び区域において、法第31条の6第1項等に基づき、飲食店(新規陽性者の数等、地域の感染状況を踏まえて、酒類の提供を行う飲食店や接待を伴う飲食店等とすることもあり得るが、その場合、感染防止効果について、政府と連携しながら、十分検討を行うものとする。)に対する営業時間の短縮の要請を行うこと。営業時間については、地域の感染の状況等を踏まえて、都道府県知事が適切に判断すること。また、改正法の施行により、命令、過料の規定が設けられたことを踏まえ、その手続に関しては、別途通知する手続に沿って行うこと。
  •  法第24条第9項に基づき、業種別ガイドラインを遵守するよう要請を行うこと。
  •  これらの要請に当たっては、関係機関とも連携し、営業時間の短縮等や業種別ガイドラインの遵守を徹底するための対策・体制の強化を行い、できる限り個別に施設に対して働きかけを行うこと。
  •  法第31条の6第2項に基づき、上記により営業時間の変更を要請した時間以降、飲食店等にみだりに出入りしないよう、住民に対して要請等を行うこと。併せて、法第24条第9項に基づき、日中も含めた不要不急の外出・移動の自粛等について、住民に対して協力の要請を行うことも検討すること。
  •  都道府県知事が定める期間及び区域で行われる催物(イベント等)について、主催者等に対して、法第24条第9項等に基づき、別途通知する目安を踏まえた規模要件等(人数上限・収容率、飲食を伴わないこと等)を設定し、その要件に沿った開催の要請等を行うこと。

② 政府は、地方創生臨時交付金に設けた「協力要請推進枠」により、飲食店に対して営業時間短縮要請等と協力金の支払いを行う都道府県を支援する。
③ 重点措置区域である都道府県は、①の取組を行うに当たっては、あらかじめ政府と迅速に情報共有を行う。

8)緊急事態措置区域及び重点措置区域以外の都道府県における取組等

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① 都道府県は、持続的な対策が必要であることを踏まえ、住民や事業者に対して、以下の取組を行うものとする。その際、感染拡大の防止と社会経済活動の維持との両立を持続的に可能としていくため、「新しい生活様式」の社会経済全体への定着を図るとともに、地域の感染状況や感染拡大リスク等について評価を行いながら、必要に応じて、後述③等のとおり、外出の自粛、催物(イベント等)の開催制限、施設の使用制限等の要請等を機動的に行うものとする。
(外出の自粛等)

  •  「三つの密」、「感染リスクが高まる「5つの場面」」等の回避や、「人と人との距離の確保」「マスクの着用」「手洗いなどの手指衛生」をはじめとした基本的な感染対策の徹底等、感染拡大を防止する「新しい生活様式」の定着が図られるよう、あらゆる機会を捉えて、令和2年4月22日の専門家会議で示された「10のポイント」、5月4日の専門家会議で示された「新しい生活様式の実践例」、10月23日の分科会で示された「感染リスクが高まる「5つの場面」」等について住民や事業者に周知を行うこと。
  •  帰省や旅行など、都道府県をまたぐ移動は、「三つの密」の回避を含め基本的な感染防止策を徹底するとともに、特に大人数の会食を控える等注意を促すこと。
     感染が拡大している地域において、こうした対応が難しいと判断される場合は、帰省や旅行について慎重な検討を促すこと。特に発熱等の症状がある場合は、帰省や旅行を控えるよう促すこと。
  •  業種別ガイドライン等を遵守している施設等の利用を促すこと。
  •  感染拡大の兆候や施設等におけるクラスターの発生があった場合、政府と連携して、外出の自粛に関して速やかに住民に対して必要な協力の要請等を行うこと。

(催物(イベント等)の開催)

  •  催物等の開催については、「新しい生活様式」や業種別ガイドライン等に基づく適切な感染防止策が講じられることを前提に、地域の感染状況や感染拡大リスク等について評価を行いながら、必要な規模要件(人数上限や収容率)の目安を示すこと。その際、事業者及び関係団体において、エビデンスに基づきガイドラインが進化、改訂された場合は、それに基づき適切に要件を見直すこと。
     また、催物等の態様(屋内であるか、屋外であるか、また、全国的なものであるか、地域的なものであるかなど)や種別(コンサート、展示会、スポーツの試合や大会、お祭りなどの行事等)に応じて、開催の要件や主催者において講じるべき感染防止策を検討し、主催者に周知すること。
     催物等の開催に当たっては、その規模に関わらず、「三つの密」が発生しない席の配置や「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、催物の開催中や前後における選手、出演者や参加者等に係る主催者による行動管理等、基本的な感染防止策が講じられるよう、主催者に対して強く働きかけるとともに、参加者名簿を作成して連絡先等を把握しておくことや、接触確認アプリ(COCOA)等の活用等について、主催者に周知すること。
  •  感染拡大の兆候や催物等におけるクラスターの発生があった場合、 政府と連携して、人数制限の強化、催物等の無観客化、中止又は延期等を含めて、速やかに主催者に対して必要な協力の要請等を行うこと。

(職場への出勤等)

  •  事業者に対して、在宅勤務(テレワーク)、時差出勤、自転車通勤等、人との接触を低減する取組を働きかけること。
  •  事業者に対して、職場における、感染防止のための取組(手洗いや手指消毒、咳エチケット、職員同士の距離確保、事業場の換気励行、複数人が触る箇所の消毒、発熱等の症状が見られる従業員の出勤自粛、出張による従業員の移動を減らすためのテレビ会議の活用等)や「三つの密」や「感染リスクが高まる「5つの場面」」等を避ける行動を徹底するよう促すこと。特に職場での「居場所の切り替わり」(休憩室、更衣室、喫煙室等)に注意するよう周知すること。さらに、職場や店舗等に関して、業種別ガイドライン等を実践するよう働きかけること。その際には、特に留意すべき事項の確認を促し、遵守している事業者には対策実施を宣言させる等、感染防止のための取組を強く勧奨すること。

(施設の使用制限等)

  •  これまでにクラスターが発生しているような施設や、「三つの密」のある施設については、地域の感染状況等を踏まえ、施設管理者等に対して必要な協力を依頼すること。
  •  感染拡大の兆候や施設等におけるクラスターの発生があった場合、政府と連携して、施設の使用制限等を含めて、速やかに施設管理者等に対して必要な協力の要請等を行うこと。

② 都道府県は、感染の状況等を継続的に監視し、その変化が認められた場合、住民に適切に情報提供を行い、感染拡大への警戒を呼びかけるものとする。
③ 都道府県は、感染拡大の傾向が見られる場合には、地域における感染状況や公衆衛生体制・医療提供体制への負荷の状況について十分、把握・分析を行い、8月7日の分科会の提言で示された指標を目安としつつ総合的に判断し、同提言に示された各ステージにおいて「講ずべき施策」や累次の分科会提言(12月11日「今後の感染の状況を踏まえた対応についての分科会から政府への提言」等)等を踏まえ、地域の実情に応じて、迅速かつ適切に法第24条第9項に基づく措置等を講じるものとする。特に、ステージⅢ相当の対策が必要な地域等にあっては、速やかにステージⅡ相当の対策が必要な地域へ移行するよう、取り組むものとする。また、ステージⅢ相当の対策が必要な地域で、感染の状況がステージⅣに近づきつつあると判断される場合には、特定都道府県における今回の措置に準じた取組を行うものとする。
④ 都道府県は、①③の取組を行うに当たっては、あらかじめ政府と迅速に情報共有を行う。

9)予防接種

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 政府、都道府県及び市町村は、以下のように新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種を行うものとする。 ① 新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種目的は、新型コロナウイルス感染症の発症を予防し、死亡者や重症者の発生をできる限り減らすことであること。
② 関係機関と連携し、迅速にワクチンの開発等を進めるとともに、承認申請された際には審査を行った上で、安全性及び有効性を確認し、できるだけ早期の実用化、国民への供給を目指すこと。
③ 予防接種については、予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律(令和2年法律第75号)による改正後の予防接種法に基づく臨時接種の特例として、厚生労働大臣の指示のもと、都道府県の協力により市町村において実施すること。
④ 予防接種の実施体制や接種順位等については、令和3年2月9日の「ワクチン接種について」を踏まえ接種を円滑かつ効率的に実施する観点に立って行うこと。
⑤ 予防接種により健康被害が生じた場合の救済措置や副反応疑い報告等については、予防接種法の現行の規定を適用し適切に実施すること。
⑥ 予防接種は最終的には個人の判断で接種されるものであることから、予防接種に当たっては、リスクとベネフィットを総合的に勘案し接種の判断ができる情報を提供することが必要であること。
 その上で、政府は、国民に対して、ワクチンの安全性及び有効性についての情報を提供するなど、的確で丁寧なコミュニケーション等を進め、幅広く予防接種への理解を得るとともに、国民が自らの意思で接種の判断を行うことができるよう取り組むこと。

10)水際対策

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① 政府は、水際対策について、変異株を含め、国内への感染者の流入及び国内での感染拡大を防止する観点から、入国制限、渡航中止勧告、帰国者のチェック・健康観察等の検疫の強化、査証の制限等の措置等を、引き続き、実施する。なお、厚生労働省は、関係省庁と連携し、健康観察について、保健所の業務負担の軽減や体制強化等を支援する。
② 諸外国での新型コロナウイルス感染症の発生の状況を踏まえて、必要に応じ、国土交通省は、航空機の到着空港の限定の要請、港湾の利用調整や水際・防災対策連絡会議等を活用した対応力の強化等を行うとともに、厚生労働省は、特定検疫港等の指定を検討する。
③ 厚生労働省は、停留に利用する施設が不足する場合には、法第29条の適用も念頭に置きつつも、必要に応じ、関係省庁と連携して、停留に利用可能な施設の管理者に対して丁寧な説明を行うことで停留施設の確保に努める。

11)クラスター対策の強化

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① 都道府県等は、厚生労働省や専門家と連携しつつ、積極的疫学調査により、個々の濃厚接触者を把握し、健康観察、外出自粛の要請等を行うとともに、感染拡大の規模を適確に把握し、適切な感染対策を行う。その際、より効果的な感染拡大防止につなげるため、積極的疫学調査を実施する際に優先度も考慮する。積極的疫学調査に対して正当な理由がなく協力しない場合の命令、この命令に正当な理由がなく応じない場合の罰則の適用については、対象者の人権に十分に配慮し、慎重に運用すること。
② 政府は、関係機関と協力して、クラスター対策に当たる専門家の確保及び育成を行う。
③ 厚生労働省及び都道府県等は、関係機関と協力して、特に、感染拡大の兆候が見られた場合には、専門家やその他人員を確保し、その地域への派遣を行う。
 なお、感染拡大が顕著な地域において、保健所における積極的疫学調査に係る人員体制が不足するなどの問題が生じた場合には、都道府県は関係学会・団体等の専門人材派遣の仕組みであるIHEAT(Infectious disease Health Emergency Assistance Team)の活用や、厚生労働省と調整し、他の都道府県からの応援派遣職員の活用等の人材・体制確保のための対策を行う。感染拡大に伴う優先度を踏まえた積極的疫学調査については、感染状況の改善に伴い改めて対応を強化する。その際には、IHEATの積極的な活用も図りながら、変異株への対応といった観点も踏まえつつ、感染源の推定のための調査を含めた強化を図る。
 また、都道府県等が連携し、積極的疫学調査等の専門的業務を十分に実施できるよう保健所の業務の重点化や人材育成等を行うこと、保健所業務の外部委託の活用、IHEATの積極的な活用、人材確保の好事例の横展開等により、保健所の体制を強化し、感染拡大時に即応できる人員体制を平時から整備する。
④ 政府及び都道府県等は、クラスター対策を抜本強化するという観点から、保健所の体制強化に迅速に取り組む。これに関連し、特定都道府県は、管内の市町村と迅速な情報共有を行い、また、対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、法第24条に基づく総合調整を行う。さらに、都道府県等は、クラスターの発見に資するよう、地方公共団体間の迅速な情報共有に努めるとともに、政府は、対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、法第20条に基づく総合調整を行う。
⑤ 政府及び都道府県等は、クラスター対策を強化する観点から、以下の取組を行う。

  •  大規模な歓楽街については、令和2年10月29日の分科会における「大都市の歓楽街における感染拡大防止対策ワーキンググループ当面の取組方策に関する報告書」に示された取組を踏まえ、通常時から相談・検査体制の構築に取り組むとともに、早期に予兆を探知し、介入時には、速やかに重点的(地域集中的)なPCR検査等の実施や、必要に応じ、エリア・業種を絞った営業時間短縮要請等を機動的に行うこと。
  •  事業者に対し、職場でのクラスター対策の徹底を呼びかけること。
  •  言語の壁や生活習慣の違いがある在留外国人を支援する観点から、政府及び都道府県等が提供する情報の一層の多言語化、大使館のネットワーク等を活用したきめ細かな情報提供、相談体制の整備等により、検査や医療機関の受診に早期につなげる仕組みを構築すること。

⑥ 政府は、接触確認アプリ(COCOA)について、機能の向上を図るとともに、検査の受診等保健所のサポートを早く受けられることやプライバシーに最大限配慮した仕組みであることを周知し、その幅広い活用や、感染拡大防止のための陽性者としての登録を行うよう、呼びかけを行い、新型コロナウイルス感染症等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)及び保健所等と連携した積極的疫学調査で活用することにより、効果的なクラスター対策につなげていく。

12)その他共通的事項等

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① 特定都道府県又は重点措置区域である都道府県は、地域の特性に応じた実効性のある緊急事態措置又はまん延防止等重点措置を講じる。特定都道府県又は重点措置区域である都道府県は、緊急事態措置又はまん延防止等重点措置を講じるに当たっては、法第5条を踏まえ、必要最小限の措置とするとともに、講じる措置の内容及び必要性等について、国民に対し丁寧に説明する。
② 政府及び特定都道府県は、緊急事態措置を講じること等に伴い、食料・医薬品や生活必需品の買い占め等の混乱が生じないよう、国民に冷静な対応を促す。
③ 政府及び地方公共団体は、緊急事態措置の実施に当たっては、事業者の円滑な活動を支援するため、事業者からの相談窓口の設置、物流体制の確保、ライフラインの万全の体制の確保等に努める。
④ 政府は、関係機関と協力して、公共交通機関その他の多数の人が集まる施設における感染対策を徹底する。

(4)医療等

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① 重症者等に対する医療提供に重点を置いた入院医療の提供体制の確保を進めるため、厚生労働省と都道府県等は、関係機関と協力して、次のような対策を講じる。

  •  重症者や重症化リスクのある者に医療資源の重点をシフトする観点から、令和2年10月14日の新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令(令和2年政令第11号)の改正(令和2年10月24日施行)により、高齢者や基礎疾患のある者等入院勧告・措置の対象の明確化を行っており、改正法の施行により、この取扱いが法定化された。都道府県等は、関係法令に基づき、地域の感染状況等を踏まえ、適切に入院勧告・措置を運用すること。また、改正法の施行により、入院措置に正当な理由なく応じない場合や入院先から逃げた場合の罰則が設けられたが、都道府県等は、その運用に当たって、患者の人権に十分に配慮し、慎重に運用するとともに、患者への偏見・差別につながらないよう、(6)で後述する取組の一層の強化を図ること。
     重症者等に対する医療提供に重点を置くべき地域では、特に病床確保や都道府県全体の入院調整に最大限努力した上で、なお病床がひっ迫する場合には、高齢者等も含め入院治療が必要ない無症状病原体保有者及び軽症患者(以下「軽症者等」という。)については、感染症法第44条の3第2項に基づき宿泊施設(適切な場合は自宅)での療養を要請することで、入院治療が必要な患者への医療提供体制の確保を図ること。丁寧な健康観察を実施すること。
     特に、家庭内での感染防止や症状急変時の対応のため、宿泊施設が十分に確保されているような地域では、軽症者等は宿泊療養を基本とすること。そのため、都道府県は、患者の病状、数その他感染症の発生及びまん延の状況を勘案して、ホテル等の一時的な宿泊療養施設の確保に努めるとともに、都道府県等は、宿泊療養施設の運営体制を確保すること。政府は、都道府県等と密接に連携し、これらの取組を支援すること。
     自宅療養等を行う際には、都道府県等は電話等情報通信機器を用いて遠隔で健康状態を把握するとともに、医師が必要とした場合には電話等情報通信機器を用いて診療を行う体制を整備すること。特に、病床のひっ迫等により自宅療養者等が多い都道府県においては、医師会等への業務委託を推進するとともに、パルスオキシメーターの貸与等により患者の健康状態や症状の変化を迅速に把握できるようにするなど、環境整備を進めること。
  •  都道府県は、患者が入院、宿泊療養、自宅療養をする場合に、その家族に要介護者や障害者、子供等がいる場合は、市町村福祉部門の協力を得て、ケアマネジャー、相談支援専門員、児童相談所等と連携し、必要なサービスや支援を行うこと。
  •  都道府県は、関係機関の協力を得て、新型コロナウイルス感染症の患者専用の病院や病棟を設定する重点医療機関の指定等、地域の医療機関の役割分担を行うとともに、病床・宿泊療養施設確保計画に沿って、段階的に病床・宿泊療養施設を確保すること。
     特に、病床がひっ迫している場合、令和2年12月28日の政府対策本部で示された「感染拡大に伴う入院患者増加に対応するための医療提供体制パッケージ」を活用しつつ、地域の実情に応じ、重点医療機関以外の医療機関に働きかけを行うなど病床の確保を進めること。
     その際、地域の関係団体の協力のもと、地域の会議体を活用して医療機能(重症者病床、中等症病床、回復患者の受け入れ、宿泊療養、自宅療養)に応じた役割分担を明確化した上で、病床の確保を進めること。
     また、医療機関は、業務継続計画(BCP)も踏まえ、必要に応じ、医師の判断により延期が可能と考えられる予定手術や予定入院の延期を検討し、空床確保に努めること。
     さらに、都道府県は、仮設の診療所や病棟の設置、非稼働病床の利用の取組を推進するとともに、それでもなお病床が不足すると見込まれる場合には、法第31条の2に基づく臨時の医療施設の開設についてその活用を十分に考慮すること。臨時の医療施設の開設に当たっては、あらかじめ政府と協議し、迅速な情報共有を行うとともに、開設後は定期的に運営状況を報告する。厚生労働省は、それらの活用に当たって、必要な支援を行うこと。また、都道府県等が感染症法第16条の2に基づく協力要請等及び法第31条に基づく医療等の実施の要請等を行う場合には、当該医療等が適切に実施されるよう、必要な支援を行うこと。
  •  都道府県は、患者受入調整や移送調整を行う体制を整備し、患者の医療提供に関する必要な総合調整を行うとともに、医療機関等情報支援システム(G-MIS)も活用し、患者受入調整に必要な医療機関の情報の見える化を行うこと。また、厚生労働省は、都道府県が患者搬送コーディネーターの配置を行うことについて、必要な支援を行うこと。
  •  さらに、感染拡大に伴う患者の急増に備え、都道府県は、都道府県域を越える場合も含めた広域的な患者の受入れ体制を確保すること。
  •  新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関の病床を効率的に活用するため、回復患者の転院先となる後方支援医療機関の確保を更に進めること。
  •  また、効率的な転院調整が行われるよう、地域の実情に応じた、転院支援の仕組みを検討すること。
  •  退院基準を満たした患者について、高齢者施設等における受入れを促進すること。

② 新型コロナウイルス感染症が疑われる患者への外来診療・検査体制の確保のため、厚生労働省と都道府県等は、関係機関と協力して、次のような対策を講じる。

  •  かかりつけ医等の地域で身近な医療機関や受診・相談センターを通じて、診療・検査医療機関を受診することにより、適切な感染管理を行った上で、新型コロナウイルス感染症が疑われる患者への外来医療を提供すること。
  •  都道府県等は、関係機関と協力して、集中的に検査を実施する機関(地域外来・検査センター)の設置を行うこと。
     また、大型テントやプレハブを活用した、いわゆるドライブスルー方式やウォークスルー方式による診療を行うことで、効率的な診療・検査体制を確保すること。併せて、検査結果を踏まえて、患者の振り分けや受け入れが適切に行われるようにすること。
  •  新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況等を踏まえ、診療・検査医療機関の指定や地域外来・検査センターの設置を柔軟かつ積極的に行うこと。
  •  都道府県は、重症化しやすい方が来院するがんセンター、透析医療機関及び産科医療機関等について、必要に応じ、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる方への外来診療を原則行わない医療機関として設定すること。

③ 新型コロナウイルス感染症患者のみならず、他の疾患等の患者への対応も踏まえて地域全体の医療提供体制を整備するため、厚生労働省と都道府県は、関係機関と協力して、次のような対策を講じる。

  •  都道府県は、地域の医療機能を維持する観点から、新型コロナウイルス感染症以外の疾患等の患者受入れも含めて、地域の医療機関の役割分担を推進すること。
  •  患者と医療従事者双方の新型コロナウイルス感染症の予防の観点から、初診を含めて、電話等情報通信機器を用いた診療体制の整備を推進すること。

④ 医療従事者の確保のため、厚生労働省と都道府県等は、関係機関と協力して、次のような対策を講じる。

  •  都道府県等は、現場で従事している医療従事者の休職・離職防止策や潜在有資格者の現場復帰、医療現場の人材配置の転換等を推進すること。また、検査を含め、直接の医療行為以外に対しては、有資格者以外の民間の人材等の活用を進めること。
  •  厚生労働省は、今般の新型コロナウイルス感染症の対応に伴い、全国の医療機関等の医療人材募集情報を掲載するWebサイト「医療のお仕事Key-Net」の運営等を通じて、医療関係団体、ハローワーク、ナースセンター等と連携し、医療人材の確保を支援すること。

⑤ 医療物資の確保のため、政府と都道府県、関係機関は協力して、次のような対策を講じる。

  •  政府及び都道府県は、医療提供体制を支える医薬品や医療機器、医療資材の製造体制を確保し、医療機関等情報支援システム(G-MIS)も活用し、必要な医療機関に迅速かつ円滑に提供できる体制を確保するとともに、専門性を有する医療従事者や人工呼吸器等の必要な医療機器・物資・感染防止に必要な資材等を迅速に確保し、適切な感染対策の下での医療提供体制を整備すること。
  •  政府及び都道府県は、特に新型コロナウイルス感染症を疑う患者にPCR検査等や入院の受入れを行う医療機関等に対しては、マスク等の個人防護具を優先的に確保すること。

⑥ 医療機関及び高齢者施設等における施設内感染を徹底的に防止するため、厚生労働省と地方公共団体は、関係機関と協力して、次の事項について周知徹底を図る。

  •  医療機関及び高齢者施設等の設置者において、
    •  従事者等が感染源とならないよう、「三つの密」が生じる場を徹底して避けるとともに、
    •  症状がなくても患者や利用者と接する際にはマスクを着用する、
    •  手洗い・手指消毒の徹底、
    •  パソコンやエレベーターのボタン等複数の従事者が共有するものは定期的に消毒する、
    •  食堂や詰め所でマスクを外して飲食をする場合、他の従事者と一定の距離を保つ、
    •  日々の体調を把握して少しでも調子が悪ければ自宅待機する、等の対策に万全を期すこと。
  •  医療機関及び高齢者施設等において、面会者からの感染を防ぐため、面会は、地域における発生状況等も踏まえ、患者、家族のQOLを考慮しつつ、緊急の場合を除き制限するなどの対応を検討すること。
  •  医療機関及び高齢者施設等において、患者、利用者からの感染を防ぐため、感染が流行している地域では、患者、家族のQOLを考慮しつつ、施設での通所サービス等の一時利用を中止又は制限する、入院患者、利用者の外出、外泊を制限するなどの対応を検討すること。
  •  医療機関及び高齢者施設等において、入院患者、利用者等について、新型コロナウイルス感染症を疑った場合は、早急に個室隔離し、保健所の指導の下、感染対策を実施し、標準予防策、接触予防策、飛沫感染予防策を実施すること。

⑦ 都道府県は、感染者と非感染者の空間を分けることなどを含む感染防止策の更なる徹底等を通して、医療機関及び施設内での感染の拡大に特に注意を払う。
 高齢者施設等の発熱等の症状を呈する入所者・従事者に対する検査や陽性者が発生した場合の当該施設の入所者等への検査が速やかに行われるようにする。また、感染者が多数発生している地域における医療機関、高齢者施設等への積極的な検査が行われるようにする。
 また、都道府県は、高齢者施設等において感染者が一例でも確認された場合に、感染制御や業務継続の両面から支援するチームが、迅速に派遣を含めた支援を行う仕組みの構築に努める。政府は、この体制を構築するに当たり、各都道府県を支援する。
 加えて、手術や医療的処置前等において、当該患者について医師の判断により、PCR検査等が実施できる体制をとる。 ⑧ この他、適切な医療提供・感染管理の観点で、厚生労働省と都道府県は、関係機関と協力して、次の事項に取り組む。

  •  妊産婦に対する感染を防止する観点から、医療機関における動線分離等の感染防止策を徹底するとともに、妊産婦が感染した場合であっても、安心して出産し、産後の生活が送れるよう、関係機関との協力体制を構築し、適切な支援を実施すること。また、関係機関と協力して、感染が疑われる妊産婦への早めの相談の呼びかけや、妊娠中の女性労働者に配慮した休みやすい環境整備等の取組を推進すること。
  •  小児医療について、関係学会等の意見を聞きながら、診療体制を検討し、地方公共団体と協力して体制整備を進めること。
  •  関係機関と協力して、外国人が医療を適切に受けることができるよう、医療通訳の整備等を、引き続き、強化すること。
  •  レムデシビルやデキサメタゾンについて、必要な患者への供給の確保を図るとともに、関係省庁・関係機関とも連携し、有効な治療薬等の開発を加速すること。特に、他の治療で使用されている薬剤のうち、効果が期待されるものについて、その効果を検証するための臨床研究・治験等を速やかに実施すること。また、重症化マーカーを含めた重症化リスクに関する臨床情報・検査や、重症患者等への治療方法について、現場での活用に向けた周知、普及等に努めること。
  •  ワクチンについては、ファイザー社から12月中旬に薬事承認申請がなされており、国内治験データ等のデータに基づき審査を行うとともに、有効性・安全性が確認された後には、できるだけ速やかに接種を開始できるよう、接種体制の整備を進めること。
  •  その他のワクチンについても、関係省庁・関係機関と連携し、迅速に開発等を進めるとともに、承認申請された際には審査を行った上で、できるだけ早期の実用化、国民への供給を目指すこと。
  •  法令に基づく健康診断及び予防接種については、適切な感染対策の下で実施されるよう、実施時期や実施時間等に配慮すること。
  •  政府及び都道府県等は、実費でPCR検査が行われる場合にも、医療と結びついた検査が行われるよう、周知を行うとともに、精度管理についても推進すること。

⑨ 政府は、令和2年度第1次補正予算・第2次補正予算・第3次補正予算、予備費等も活用し、地方公共団体等に対する必要な支援を行うとともに、医療提供体制の更なる強化に向け、対策に万全を期す。

(5)経済・雇用対策

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現下の感染拡大の状況に応じ、その防止を最優先とし、予備費を活用するなど臨機応変に対応することとする。昨年春と夏の感染拡大の波を経験する中、感染対策とバランスをとりつつ、地域の感染状況や医療提供体制の確保状況等を踏まえながら、感染拡大の防止と社会経済活動の維持との両立を図ってきた。具体的には、政府は、令和2年度第1次補正予算を含む「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月20日閣議決定)及び令和2年度第2次補正予算の各施策を、国・地方を挙げて迅速かつ着実に実行することにより、感染拡大を防止するとともに、雇用の維持、事業の継続、生活の下支えに万全を期してきた。今後、令和2年度第3次補正予算を含む「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」(令和2年12月8日閣議決定)及び令和3年度当初予算の各施策を、国・地方を挙げて迅速かつ着実に実行することにより、医療提供体制の確保やワクチンの接種体制等の整備をはじめとする新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止に全力を挙げるとともに、感染症の厳しい影響に対し、雇用調整助成金や官民の金融機関による実質無利子・無担保融資等により雇用と生活をしっかり守っていく。その上で、成長分野への民間投資を大胆に呼び込みながら、生産性を高め、賃金の継続的な上昇を促し、民需主導の成長軌道の実現につなげる。今後も感染状況や経済・国民生活への影響を注意深く見極め、公平性の観点や円滑な執行等が行われることにも配慮しつつ、引き続き、新型コロナウイルス感染症対策予備費の適時適切な執行により、迅速・機動的に対応する。

(6)その他重要な留意事項

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1)偏見・差別等への対応、社会課題への対応等

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① 政府及び地方公共団体は、新型コロナウイルス感染症へのり患は誰にでも生じ得るものであり、感染者やその家族、勤務先等に対する差別的な取扱いや誹謗中傷、名誉・信用を毀損する行為等は、人権侵害に当たり得るのみならず、体調不良時の受診遅れや検査回避、保健所の積極的疫学調査への協力拒否等につながり、結果として感染防止策に支障を生じさせかねないことから、分科会の偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループが行った議論のとりまとめ(令和2年11月6日)や法第13条第2項の規定を踏まえ、感染者等の人権が尊重され、何人も差別的な取扱い等を受けることのないよう、以下のような取組を行う。

  •  新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識の普及に加え、政府の統一的なホームページ(corona.go.jp)等を活用し、地方公共団体や関係団体等の取組の横展開にも資するよう、偏見・差別等の防止等に向けた啓発・教育に資する発信を強化すること。
  •  感染者やその家族、勤務先等に対する偏見・差別等の実態の把握に努めるとともに、偏見・差別等への相談体制を、研修の充実、NPOを含めた関係機関の連携、政府による支援、SNSの活用等により強化すること。
  •  悪質な行為には法的責任が伴うことについて、政府の統一的なホームページ等を活用して、幅広く周知すること。
  •  新型コロナウイルス感染症の特徴を踏まえた行政による情報公表の在り方に関して、改めて政府としての統一的な考え方を整理すること。また、情報の公表に当たっては、個人情報の保護に留意すること。
  •  クラスター発生等の有事対応中においては、感染症に関する正しい知識に加えて、感染者等を温かく見守るべきこと等を発信すること。

② 政府は、新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療関係者が偏見・差別等による風評被害等を受けないよう、国民への普及啓発等必要な取組を実施する。
③ 政府は、海外から一時帰国した児童生徒等への学校の受入れ支援やいじめ防止等の必要な取組を実施する。
④ 政府及び関係機関は、各種対策を実施する場合において、国民の自由と権利の制限を必要最小限のものとする。特に、罰則が設けられている措置については、患者や関係者の人権に十分に配慮し、まずは当該措置の趣旨や必要性を患者等に丁寧に説明し、理解・協力を得られるようにすることを基本とするとともに、罰則の適用は、慎重に行うものとする。また、女性の生活や雇用への影響が深刻なものとなっていることに留意し、女性や障害者等に与える影響を十分配慮して実施するものとする。
⑤ 政府及び地方公共団体は、マスク、個人防護具、医薬品、医薬部外品、食料品等に係る物価の高騰や買占め、売り惜しみを未然に回避し又は沈静化するため、必要な措置を講じる。
⑥ 政府は、地方公共団体と連携し、対策が長期化する中で生ずる様々な社会課題に対応するため、適切な支援を行う。

  •  長期間にわたる外出自粛等によるメンタルヘルスへの影響、配偶者暴力、性犯罪・性暴力や児童虐待等。
  •  情報公開と人権との協調への配慮。
  •  営業自粛等による倒産、失業、自殺等。
  •  社会的に孤立しがちな一人暮らしの高齢者、休業中のひとり親家庭等の生活。
  •  外出自粛等の下で、高齢者等がフレイル状態等にならないよう、コミュニティにおける支援を含め、健康維持・介護サービスの確保。

⑦ 政府及び地方公共団体は、新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方に対して尊厳をもってお別れ、火葬等が行われるよう、適切な方法について、周知を行う。
⑧ 政府は、ワクチン接種に便乗した詐欺被害等の防止のため注意喚起や相談体制を強化する。

2)物資・資材等の供給

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① 政府は、国民や地方公共団体の要望に応じ、マスク、個人防護具、消毒薬、食料品等の増産や円滑な供給を関連事業者に要請する。また、政府は、感染防止や医療提供体制の確保のため、マスク、個人防護具、人工呼吸器等の必要な物資を政府の責任で確保する。例えば、マスク等を政府で購入し、必要な医療機関や介護施設等に優先配布するとともに、感染拡大に備えた備蓄を強化する。
② 政府は、マスクや消毒薬等の国民が必要とする物資が安定的に供給されるよう、これらの物資の需給動向を注視するとともに、過剰な在庫を抱えることのないよう消費者や事業者に冷静な対応を呼びかける。また、政府は、繰り返し使用可能な布製マスクの普及を進める。
③ 政府は、事態の長期化も念頭に、マスクや抗菌薬及び抗ウイルス薬の原薬を含む医薬品、医療機器等の医療の維持に必要な資材の安定確保に努めるとともに、国産化の検討を進める。

3)関係機関との連携の推進

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① 政府は、地方公共団体を含む関係機関等との双方向の情報共有を強化し、対策の方針の迅速な伝達と、対策の現場における状況の把握を行う。
② 政府は、対策の推進に当たっては、地方公共団体、経済団体等の関係者の意見を十分聴きながら進める。
③ 地方公共団体は、保健部局のみならず、危機管理部局も含め全ての部局が協力して対策に当たる。
④ 政府は、国際的な連携を密にし、WHOや諸外国・地域の対応状況等に関する情報収集に努める。また、日本で得られた知見を積極的にWHO等の関係機関や諸外国・地域と共有し、今後の対策に活かすとともに、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受ける国・地域に対する国際社会全体としての対策に貢献する。
⑤ 政府は、基礎医学研究及び臨床医学研究、疫学研究を含む社会医学研究等の研究体制に対する支援を通して、新型コロナウイルス感染症への対策の推進を図る。
⑥ 都道府県等は、近隣の都道府県等が感染拡大防止に向けた様々な措置や取組を行うに当たり、相互に連携するとともに、その要請に応じ、必要な支援を行う。
⑦ 特定都道府県又は重点措置区域である都道府県等は、緊急事態措置又はまん延防止等重点措置等を実施するに当たっては、あらかじめ政府と協議し、迅速な情報共有を行う。政府対策本部長は、特定都道府県又は重点措置区域である都道府県等が適切に緊急事態措置又はまん延防止等重点措置を講じることができるよう、専門家の意見を踏まえつつ、総合調整を行う。
⑧ 緊急事態宣言の期間中に様々な措置を実施した際には、特定都道府県知事及び指定行政機関の長は政府対策本部長に、特定市町村長及び指定地方公共機関の長はその所在する特定都道府県知事に、指定公共機関の長は所管の指定行政機関に、その旨及びその理由を報告する。政府対策本部長は国会に、特定都道府県知事及び指定行政機関の長は政府対策本部長に、報告を受けた事項を報告する。

4)社会機能の維持

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① 政府、地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関は、職員における感染を防ぐよう万全を尽くすとともに、万が一職員において感染者又は濃厚接触者が確認された場合にも、職務が遅滞なく行えるように対策をあらかじめ講じる。特に、テレビ会議及びテレワークの積極的な実施に努める。
② 地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関は、電気、ガス、水道、公共交通、通信、金融業等の維持を通して、国民生活及び国民経済への影響が最小となるよう公益的事業を継続する。
③ 政府は、指定公共機関の公益的事業の継続に支障が生じることがないよう、必要な支援を行う。
④ 国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な業務を行う事業者は、国民生活及び国民経済安定のため、事業の継続を図る。
⑤ 政府は、事業者のサービス提供水準に係る状況の把握に努め、必要に応じ、国民への周知を図る。
⑥ 政府は、空港、港湾、医療機関等におけるトラブル等を防止するため、必要に応じ、警戒警備を実施する。
⑦ 警察は、混乱に乗じた各種犯罪を抑止するとともに、取締りを徹底する。

5)緊急事態宣言後の取組

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政府は、緊急事態宣言の解除を行った後も、都道府県等や基本的対処方針等諮問委員会、分科会等との定期的な情報交換等を通じ、国内外の感染状況の変化、施策の実施状況等を定期的に分析・評価・検証を行う。その上で、最新の情報に基づいて適切に、国民や関係者へ情報発信を行うとともに、それまでの知見に基づき、より有効な対策を実施する。

6)その他

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① 政府は、必要に応じ、他法令に基づく対応についても講じることとする。
② 今後の状況が、緊急事態宣言の要件等に該当するか否かについては、海外での感染者の発生状況とともに、感染経路の不明な患者やクラスターの発生状況等の国内での感染拡大及び医療提供体制のひっ迫の状況を踏まえて、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるか否かについて、政府対策本部長が基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断することとする。
③ 政府は、基本的対処方針を変更し、又は、緊急事態を宣言、継続若しくは終了するに当たっては、新たな科学的知見、感染状況、施策の実行状況等を考慮した上で、基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分踏まえた上で臨機応変に対応する。

(別添)緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者

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以下事業者等については、「三つの密」を避けるための取組を講じていただきつつ、事業の継続を求める。

1.医療体制の維持

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  •  新型コロナウイルス感染症の治療はもちろん、その他の重要疾患への対応もあるため、全ての医療関係者の事業継続を要請する。
  •  医療関係者には、病院・薬局等のほか、医薬品・医療機器の輸入・製造・販売、献血を実施する採血業、入院者への食事提供等、患者の治療に必要な全ての物資・サービスに関わる製造業、サービス業を含む。

2.支援が必要な方々の保護の継続

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  •  高齢者、障害者等特に支援が必要な方々の居住や支援に関する全ての関係者(生活支援関係事業者)の事業継続を要請する。
  •  生活支援関係事業者には、介護老人福祉施設、障害者支援施設等の運営関係者のほか、施設入所者への食事提供など、高齢者、障害者等が生活する上で必要な物資・サービスに関わる全ての製造業、サービス業を含む。

3.国民の安定的な生活の確保

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  •  自宅等で過ごす国民が、必要最低限の生活を送るために不可欠なサービスを提供する関係事業者の事業継続を要請する。

① インフラ運営関係(電力、ガス、石油・石油化学・LPガス、上下水道、通信・データセンター等)
② 飲食料品供給関係(農業・林業・漁業、飲食料品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販等)
③ 生活必需物資供給関係(家庭用品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販等)
④ 宅配・テイクアウト、生活必需物資の小売関係(百貨店・スーパー、コンビニ、ドラッグストア、ホームセンター等)
⑤ 家庭用品のメンテナンス関係(配管工・電気技師等)
⑥ 生活必需サービス(ホテル・宿泊、銭湯、理美容、ランドリー、獣医等)
⑦ ごみ処理関係(廃棄物収集・運搬、処分等)
⑧ 冠婚葬祭業関係(火葬の実施や遺体の死後処置に係る事業者等)
⑨ メディア(テレビ、ラジオ、新聞、ネット関係者等)
⑩ 個人向けサービス(ネット配信、遠隔教育、ネット環境維持に係る設備・サービス、自家用車等の整備等)

4.社会の安定の維持

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  •  社会の安定の維持の観点から、緊急事態宣言の期間中にも、企業の活動を維持するために不可欠なサービスを提供する関係事業者の最低限の事業継続を要請する。

① 金融サービス(銀行、信金・信組、証券、保険、クレジットカードその他決済サービス等)
② 物流・運送サービス(鉄道、バス・タクシー・トラック、海運・港湾管理、航空・空港管理、郵便等)
③ 国防に必要な製造業・サービス業の維持(航空機、潜水艦等)
④ 企業活動・治安の維持に必要なサービス(ビルメンテナンス、セキュリティ関係等)
⑤ 安全安心に必要な社会基盤(河川や道路等の公物管理、公共工事、廃棄物処理、個別法に基づく危険物管理等)
⑥ 行政サービス等(警察、消防、その他行政サービス)
⑦ 育児サービス(託児所等)

5.その他

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  •  医療、製造業のうち、設備の特性上、生産停止が困難なもの(高炉や半導体工場等)、医療・支援が必要な人の保護・社会基盤の維持等に不可欠なもの(サプライチェーン上の重要物を含む。)を製造しているものについては、感染防止に配慮しつつ、継続する。また、医療、国民生活・国民経済維持の業務を支援する事業者等にも、事業継続を要請する。

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