新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針/令和2年4月11日改正

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新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針

令和2年3月28日(令和2年4月11日変更)

新型コロナウイルス感染症対策本部決定

政府は、新型コロナウイルス感染症への対策は危機管理上重大な課題であるとの認識の下、国民の生命を守るため、これまで水際での対策、まん延防止、医療の提供等について総力を挙げて講じてきた。しかしながら、国内において、感染経路の不明な患者の増加している地域が散発的に発生し、一部の地域で感染拡大が見られてきたところであり、この状況を踏まえ、令和2年3月26日、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号。以下「法」という。)附則第1条の2第1項及び第2項の規定により読み替えて適用する法第14条に基づき、新型コロナウイルス感染症のまん延のおそれが高いことが、厚生労働大臣から内閣総理大臣に報告され、同日に、法第15条第1項に基づく政府対策本部が設置された。
国民の生命を守るためには、感染者数を抑えること及び医療提供体制や社会機能を維持することが重要である。
そのうえで、まずは、「三つの密」を避けることをより一層推進し、さらに、積極的疫学調査等によりクラスター(患者間の関連が認められた集団。以下「クラスター」という。)の発生を封じ込めることが、いわゆるオーバーシュートと呼ばれる爆発的な感染拡大(以下「オーバーシュート」という。)の発生を防止し、感染者、重症者及び死亡者の発生を最小限に食い止めるためには重要である。
また、必要に応じ、外出自粛の要請等の接触機会の低減を組み合わせて実施することにより、感染拡大の速度を可能な限り抑制することが、上記の封じ込めを図るためにも、また、医療提供体制を崩壊させないためにも、重要である。
あわせて、今後、国内で感染者数が急増した場合に備え、重症者等への対応を中心とした医療提供体制等の必要な体制を整えるよう準備することも必要である。
既に国内で感染が見られる新型コロナウイルス感染症に関しては、次項「一新型コロナウイルス感染症発生の状況に関する事実」に示すとおり、
  •  肺炎の発生頻度が、季節性インフルエンザにかかった場合に比して相当程度高く、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあること、
  •  感染経路が特定できない症例が多数に上り、かつ、急速な増加が確認されており、医療提供体制もひっ迫してきていることから、全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある状況であること
が、総合的に判断できる。
このようなことを踏まえて、令和2年4月7日に、新型コロナウイルス感染症対策本部長は法第32条第1項に基づき、緊急事態宣言を行った。緊急事態措置を実施すべき期間は令和2年4月7日から令和2年5月6日までの29日間であり、緊急事態措置を実施すべき区域は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県である。なお、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認められるときは、期間内であっても速やかに緊急事態を解除する。
緊急事態の宣言は、新型コロナウイルス感染症の現状とともに、これまでの課題に照らし合わせて、法に基づく各施策を用いて感染拡大を防ぐとともに、この宣言の下、政府や地方公共団体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民が一丸となって、基本的な感染予防の実施や不要不急の外出の自粛、後述する「三つの密」を避けることなど、自己への感染を回避するとともに、他人に感染させないように徹底することが必要である。
実効性のある施策を包括的に確実かつ迅速に実行するにあたってはクラスター対策を行う体制の強化や医療提供体制の確保が喫緊の課題であり、これまでの施策を十分な有効性を持たせて実施していくとともに、特に不要不急の外出など外出自粛の要請等を強力に行い、人と人との接触を徹底的に低減することで、必要な対策を実施することとする。
こうした対策を国民一丸となって実施することができれば、現在拡大している感染を収束の方向に向かわせることが可能である。具体的には、国民においては、不要不急の外出を避けること、「三つの密」や夜の街を極力避けること、事業者においては、業務継続計画(BCP)に基づき、出勤者の4割減少はもとより、テレワークなどを活用することで、さらに接触の機会を減らすことを協力して行っていく必要がある。30日間に急速に収束に向かわせることに成功できたとすれば、数理モデルに基づけば、80%の接触が回避できたと判断される。なお、政府としては、緊急事態を宣言しても、社会・経済機能への影響を最小限に留め、諸外国で行われている「ロックダウン」(都市封鎖)のような施策は実施しない。
本指針は、国民の生命を守るため、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況を的確に把握し、政府や地方公共団体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民が一丸となって、新型コロナウイルス感染症対策をさらに進めていくため、今後講じるべき対策を現時点で整理し、対策を実施するにあたって準拠となるべき統一的指針を示すものである。
なお、新型コロナウイルス感染症は新型インフルエンザとはウイルスも病態も異なる感染症であることから、政府としては、地方公共団体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民の意見をくみ取りつつ、協力して直ちに対策を進めていくこととする。

一 新型コロナウイルス感染症発生の状況に関する事実[編集]

我が国においては、令和2年1月15日に最初の感染者が確認された後、4月6日までに、合計44都道府県において合計3,817人の感染者、80人の死亡者が確認されている。特に、最近の状況としては、感染経路が特定できていない感染者が40.6%(令和2年4月4日現在、4月1日までの状況)を占める状況となっている。このことは、クラスターとして感染が見られてきた特定の場所での感染に加え、これまで限定的であった日常生活の中での感染のリスクが徐々に増大し始めていることを意味する。
国内の感染状況については、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下「専門家会議」という。)の見解として、今のところ諸外国のような、オーバーシュートは見られていないが、都市部を中心にクラスター感染が次々と報告され、患者数が急増し、そうした中、医療供給体制がひっ迫しつつある地域が出てきており、医療供給体制の強化が喫緊の課題となっていると状況分析されていたところであるが、特に3月16日から4月1日にかけて、報告された感染者数は817人から2,299人と急増し、倍化時間(2倍になるまでの時間)は4.0日、感染経路の不明な患者数は40.6%となっている。専門家会議では、繁華街の接客を伴う飲食店等のクラスターの存在が指摘されており、院内感染や高齢者・福祉施設内感染とともに、大きな問題となっている。また、無症候又は症状の明確でない者から感染が広がるおそれがあるとの専門家の指摘も存在する。
一方で、海外の状況としては、新型コロナウイルス感染症が発生している国は、南極大陸を除く全ての大陸に広がっており、イランや欧米ではオーバーシュートの発生も確認されている。こういった状況の中で、本年3月中旬から下旬にかけて、海外において感染し、国内に移入したと疑われる感染者が増加した。これらの者が国内で確認された感染者のうちに占める割合も13%(3月11日―3月18日)から29%(3月19日―3月25日)に増加し、最大で37%を超える日もあったが、水際対策の強化の結果、現在は一定程度に収まっている。しかし、移入元の国については、流行当初は中華人民共和国に集中していたものの、現在では欧米を中心に拡大しており、輸入症例の広域化の影響を受けている。
国内の医療提供体制としては、感染者の急激な増加が見られる東京都と大阪府では、既に重症者等に対する入院医療の提供体制に支障をきたすおそれがあると判断し、入院治療が必要ない軽症者を宿泊施設での療養に切り替える旨発表している。また、東京都に隣接し、感染者数が200人を超える神奈川県も入院医療の切替えを行う方針であり、大都市圏を中心に医療提供体制のひっ迫が現実のものとして現れ始めている。
都道府県別の動向としては、特に東京都及び大阪府において、報告された累積感染者数が令和2年4月6日現在、それぞれ400人以上(東京都1,123人、大阪府429人)、過去1週間の倍化時間も7日未満(東京都5.0日、大阪府6.6日)となっており、感染者数のさらなる急増の危険性がある。さらに、その近隣府県としては、埼玉県、千葉県、神奈川県、兵庫県、京都府において累積感染者数が100人を超えており、そのうち、京都府を除く全ての府県で、感染経路が不明の感染者がほぼ半数を超えている。さらに、福岡県については、累積報告数が100人以上となっており、倍化時間が約3日と急速な感染の広がりが見られ、感染経路の不明な症例の割合が7割を占めている状況にある。このように、東京都及び大阪府、埼玉県、千葉県、神奈川県、兵庫県、福岡県については、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要がある。
なお、これら7都府県以外の都道府県においても、今回の感染拡大防止のための取組は政府、地方公共団体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民が一丸となって行うものであることを踏まえ、地域の実情を踏まえつつ、迅速かつ適切に感染拡大防止のための措置を講ずることが必要である。
新型コロナウイルス感染症については、下記のような特徴がある。
  •  一般的な状況における感染経路の中心は飛沫感染及び接触感染であるが、閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等の症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされている。また、無症候の者からの感染の可能性も指摘されている。一方、人と人との距離をとること(Social distancing; 社会的距離)により、大幅に感染リスクが下がるとされている。
  •  集団感染が生じた場の共通点を踏まえると、特に①密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、②密集場所(多くの人が密集している)、③密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる)という3つの条件(以下「三つの密」という。)のある場では、感染を拡大させるリスクが高いと考えられる。また、これ以外の場であっても、人混みや近距離での会話、特に大きな声を出すことや歌うことにはリスクが存在すると考えられる。激しい呼気や大きな声を伴う運動についても感染リスクがある可能性が指摘されている。
  •  現在のところ、感染が拡大している地域であっても、多くの場合、ライブハウス、スポーツジム、医療機関、さらに最近になって繁華街の接客を伴う飲食店等におけるクラスターでの感染拡大が中心であり、限定的に日常生活の中での感染のリスクが生じてきているものの、広く市中で感染が拡大しているわけではないと考えられる。
  •  世界保健機関(World Health Organization: WHO)によると、現時点において潜伏期間は1-14日(一般的には約5日)とされており、また、厚生労働省では、これまでの新型コロナウイルス感染症の情報なども踏まえて、濃厚接触者については14日間にわたり健康状態を観察することとしてしている。
  •  新型コロナウイルスに感染すると、発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く、強いだるさ(倦怠感)を訴える人が多いことが報告されている。
  •  中国における報告(令和2年3月9日公表)では、新型コロナウイルス感染症の入院期間の中央値は11日間と、季節性インフルエンザの3日間よりも、長くなることが報告されている。
  •  罹患しても約8割は軽症で経過し、また、感染者の8割は人への感染はないと報告されている。さらに入院例も含めて治癒する例も多いことが報告されている。
  •  重症度としては、季節性インフルエンザと比べて死亡リスクが高いことが報告されている。中国における報告(令和2年2月28日公表)では、確定患者での致死率は2.3%、中等度以上の肺炎の割合は18.5%であることが報告されている。季節性インフルエンザに関しては、致死率は0.00016%-0.001%程度、肺炎の割合は1.1%-4.0%、累積推計患者数に対する超過死亡者数の比は約0.1%であることが報告されている。このように新型コロナウイルス感染症における致死率及び肺炎の割合は、季節性インフルエンザに比べて、相当程度高いと考えられる。また、特に、高齢者・基礎疾患を有する者では重症化するリスクが高いことも報告されており、医療機関や介護施設等での院内感染対策、施設内感染対策が重要となる。上記の中国における報告では、年齢ごとの死亡者の割合は、60歳以上の者では6%であったのに対して、30歳未満の者では0.2%であったとされている。
  •  感染症法第12条に基づき、令和2年3月31日までに報告された患者における、発症日から報告日までの平均期間は9.0日であった。
  •  現時点では、有効性が確認された特異的な抗ウイルス薬やワクチンは存在せず、治療方法としては対症療法が中心である。なお、現時点ではワクチンが存在しないことから、新型インフルエンザ等対策政府行動計画に記載されている施策のうち、予防接種に係る施策については、本基本的対処方針には記載していない。その一方で、治療薬については、いくつか既存の治療薬から候補薬が出てきており、患者の観察研究等が進められている。

二 新型コロナウイルス感染症の対処に関する全般的な方針[編集]

  •  情報提供・共有及びまん延防止策により、各地域においてクラスター等の封じ込め及び接触機会の低減を図り、感染拡大の速度を抑制する。
  •  サーベイランス・情報収集及び適切な医療の提供により、重症者及び死亡者の発生を最小限に食い止めるべく万全を尽くす。
  •  的確なまん延防止策及び経済・雇用対策により、社会・経済機能への影響を最小限にとどめる。
  •  なお、対策は、感染者の増加に伴い不可逆的に進むものではなく、例えば、地域で感染者が確認された早期の段階で、クラスター等の封じ込め及び接触機会の低減が奏功し、当該地域での感染者の発生が抑制された場合には、強化した対策を適宜適切に元に戻す。

三 新型コロナウイルス感染症対策の実施に関する重要事項[編集]

(1)情報提供・共有[編集]

① 政府は、以下のような、国民に対する正確で分かりやすく、かつ状況の変化に即応した情報提供や呼びかけを行い、行動変容に資する啓発を進めるとともに、冷静な対応をお願いする。

  •  発生状況や患者の病態等の臨床情報等の正確な情報提供。
  •  国民にわかりやすい疫学解析情報の提供。
  •  手洗い、咳エチケット等の基本的な感染対策の徹底。
  •  風邪症状など体調不良が見られる場合の休暇取得、学校の欠席、外出自粛等の呼びかけ。
  •  感染リスクを下げるため、医療機関を受診する時は、予め電話で相談することが望ましいことの呼びかけ。
  •  厚生労働省が作成する「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の考え方」をわかりやすく周知。
  •  感染者・濃厚接触者や、診療に携わった医療機関・医療関係者その他の対策に携わった方々に対する誤解や偏見に基づく差別を行わないことの呼びかけ。
  •  室内で「三つの密」を避ける。特に、日常生活及び職場において、人混みや近距離での会話、多数の者が集まり室内において大きな声を出すことや歌うこと、呼気が激しくなるような運動を行うことを避けるように強く促す。飲食店等においても「三つの密」のある場面は避けること。
  •  従業員及び学生の健康管理や感染対策の徹底についての周知。
  •  家族以外の多人数での会食を避けること。
  •  今回の対策では、「ロックダウン」(都市封鎖)のような施策は政府として実施しないことを周知し、国民の落ち着いた対応(不要不急の帰省や旅行など都道府県をまたいだ移動の自粛等や商店への殺到の回避及び買い占めの防止)の呼びかけ。

② 政府は、広報担当官を中心に、官邸のウェブサイトにおいて厚生労働省等の関係省庁のウェブサイトへのリンクを紹介するなどして有機的に連携させ、かつ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)等の媒体も積極的に活用することで、迅速かつ積極的に国民等への情報発信を行う。
③ 政府は、民間企業等とも協力して、情報が必ずしも届いていない層に十分な情報が行き届くよう、丁寧な情報発信を行う。
④ 厚生労働省は、感染症の発生状況やクラスターの発生場所、規模等について迅速に情報を公開する。
⑤ 外務省は、全世界で感染が拡大していることを踏まえ、各国に滞在する邦人等への適切な情報提供、支援を行う。
⑥ 政府は、検疫所からの情報提供に加え、企業等の海外出張又は長期の海外滞在のある事業所、留学や旅行機会の多い大学等においても、帰国者への適切な情報提供を行い、渡航の是非の判断・確認や、帰国者に対する2週間の外出自粛の要請等の必要な対策を講じるよう周知を図る。
⑦ 政府は、国民、在留外国人、外国人旅行者及び外国政府への適切かつ迅速な情報提供を行い、国内でのまん延防止と風評対策につなげる。
⑧ 地方公共団体は、政府との緊密な情報連携により、様々な手段により住民に対して地域の感染状況に応じたメッセージや注意喚起を行う。
⑨ 政府は、今般の新型コロナウイルス感染症に係る事態が行政文書の管理に関するガイドライン(平成23年4月1日内閣総理大臣決定)に基づく「歴史的緊急事態」と判断されたことを踏まえた対応を行う。地方公共団体も、これに準じた対応に努める。

(2)サーベイランス・情報収集[編集]

① 地方公共団体は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)第12条に基づく医師の届出により疑似症患者を把握し、医師が必要と認める検査を実施する。
② 厚生労働省は、感染が急速に拡大する中で、必要な検査ができるよう、地方衛生研究所や民間の検査機関等の関係機関における検査体制の一層の強化を図る。また、都道府県は、医療機関等の関係機関により構成される会議体を設けること等により、PCR等検査の実施体制の把握・調整等を図り、民間の検査機関等を活用する。
③ 都道府県別にPCR等検査の実施人数や陽性者数、陽性率等の分析結果を定期的に公表する。
④ 厚生労働省は、感染症法第12条に基づく医師の届出とは別に、国内の流行状況等を把握するため、既存のサーベイランスの効果的な利用やさらに有効なサーベイランスの仕組みを構築する。仕組みの構築に当たっては現場が混乱しないように留意する。
⑤ 文部科学省及び厚生労働省は、学校等での集団発生の把握の強化を図る。
⑥ 政府は、迅速診断用の簡易検査キット等の開発を引き続き可及的速やかに進める。

(3)まん延防止[編集]

① 令和2年4月7日の緊急事態宣言は、政府や地方公共団体、医療関係者、専門家、事業者を含む国民が一丸となって、これまでの施策をさらに加速させることを目的として行うものである。接触機会の低減に徹底的に取り組めば、事態を収束に向かわせることが可能であり、以下の対策を進めることにより、最低7割、極力8割程度の接触機会の低減を目指す。一方で、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、法第5条の規定を踏まえ、その制限は必要最小限のものでなければならないことから、特定都道府県(緊急事態宣言の対象区域に属する都道府県)は、まん延の防止に関する措置として、まずは法第45条第1項に基づく外出の自粛等について協力の要請を行うものとする。その上で、都道府県による法第24条第9項に基づく施設の使用制限の要請を行い、特定都道府県による法第45条第2項から第4項までに基づく施設の使用制限の要請、指示等を行うにあたっては、特定都道府県は、国に協議の上、必要に応じ専門家の意見も聞きつつ、外出の自粛等の協力の要請の効果を見極めた上で行うものとする。政府は、新型コロナウイルス感染症の特性及びまん延の状況を踏まえ、施設の使用制限の要請、指示等の対象となる施設等の所要の規定の整備を行うものする。
② 都道府県は、クラスターが発生しているおそれがある場合における当該クラスターに関係する催物(イベント)や「三つの密」のある集まりについては、開催の自粛の要請等を強く行う。特に、全国的かつ大規模な催物等の開催については、リスクへの対応が整わない場合は中止又は延期することを含め、主催者による慎重な対応を求める。また、感染が拡大傾向にあり、オーバーシュートの予兆がみられるなどの地域では、期間を示した上で、外出や催物の開催の自粛の要請等について迅速に行う。一方、感染が収束に向かい始めた場合には、感染拡大のリスクの低い活動から自粛の要請の解除を行うこととする。
③ 特定都道府県は、法第24条第9項及び法第45条第2項に基づき、感染の拡大につながるおそれのある催物(イベント)開催の制限の要請等を行う。これに関連し、国及び地方公共団体間で緊密に情報共有や連携を行うものとする。これらの場合における要請等に当たっては、第1段階として法第24条第9項による協力の要請を行うこととし、それに正当な理由がないにもかかわらず応じない場合に、第2段階として法第45条第2項に基づく要請、次いで同条第3項に基づく指示を行い、これらの要請及び指示の公表を行うものとする。
④ 特定都道府県は、法第45条第2項に基づく要請等を行う場合、その実施状況を適切に把握できるよう、職員体制をはじめ所要の環境整備を行う。
⑤ 都道府県及び市町村は、まん延防止策として、「三つの密」を避けることを徹底させるとともに、クラスター対策及び接触機会の低減を、地域での感染状況及び医療提供体制を踏まえて、的確に打ち出す。
⑥ 地方公共団体は、厚生労働省や専門家と連携しつつ、積極的疫学調査により、個々の濃厚接触者に対する健康観察、外出自粛の要請等を行うとともに、感染拡大の規模を正確に把握する。このため、保健所の体制強化を図る。
⑦ 特定都道府県は、地域の特性に応じた実効性のある緊急事態措置を講じる。特定都道府県は、緊急事態措置を講じるにあたっては、法第5条を踏まえ、必要最小限の措置とするとともに、講じる措置の内容及び必要性等について、住民に対し丁寧に説明する。特定都道府県は、緊急事態措置を実施するにあたっては、法第20条に基づき政府対策本部と密接に情報共有する。政府対策本部は、専門家の意見をききながら、必要に応じ、特定都道府県と総合調整を行う。
⑧ 特定都道府県は、緊急事態措置について、罰則を伴う外出禁止の措置や都市間の交通の遮断等、諸外国で行われている「ロックダウン」(都市封鎖)のような施策とは異なるものであることを、政府と協力しつつ、住民に対し周知する。加えて、特定都道府県は、緊急事態措置を講じること等に伴い、不要不急の帰省や旅行など、都道府県をまたいで人が移動することは、まん延防止の観点から、極力避けるよう、また、食料・医薬品や生活必需品の買い占め等の混乱が生じないよう、住民に冷静な対応を促す。
⑨ 特定都道府県は、必要に応じ、期間及び区域を示したうえで、まずは、法第45条第1項に基づく外出の自粛要請を行う。基本的対処方針等諮問委員会の意見も踏まえ、一定期間、外出自粛により、まん延の抑え込みを図る。外出の自粛の対象とならない外出の具体例としては、医療機関への通院、食料・医薬品・生活必需品の買い出し、必要な職場への出勤、屋外での運動や散歩など生活の維持のために必要なものが考えられる。なお、外出自粛等の要請の期間としては、対応が効果をあげるために必要な期間、感染日から発症日までの平均期間(平均潜伏期間)、対応の効果を検知することができるまでの期間として、基本的対処方針等諮問委員会の意見等も踏まえ、30日程度が適当と考えられる。ただし、実際にこれらの措置を実施するにあたっては、期間について柔軟に判断を行い、地域の状況を踏まえて、短縮及び延長を適切に行う。
⑩ 職場への出勤は、外出自粛等の要請から除かれるものであるが、特定都道府県は、まずは在宅勤務(テレワーク)を強力に推進する。職場に出勤する場合でも、時差出勤、自転車通勤等、人との交わりを低減する取組を今まで以上に強力に推進する。指定公共機関等はまん延防止対策に関するBCPの策定・実施を図っており、特定都道府県は、取組をさらに強化を促す。また、職場においては、感染防止のための取組(手洗い、咳エチケット、事業場の換気励行、発熱等の症状が見られる従業員の出勤自粛、出張による従業員の移動を減らすためのテレビ会議の活用等)を促すとともに、「三つの密」を避ける行動を徹底するよう促す。外出自粛等の要請にあたっては、現にクラスターが多数発生している繁華街の接客を伴う飲食店等については、年齢等を問わず、強く外出を自粛するよう促すとともに、まん延の状況や人の移動の実態等を踏まえ、域内のみならず、域外への外出も対象とする。
⑪ 特定都道府県は、国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な業務を行う事業者については、十分に感染拡大防止策を講じつつ、事業の特性を踏まえ、業務の継続を要請する。事業においては、「三つの密」を避けるための必要な対策を講じることとする。なお、国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な業務を行う事業者とは、法第2条に規定される指定公共機関及び指定地方公共機関や法第28条に規定される登録事業者を参考とし、これら医療、国民生活・国民経済維持の業務をサポートする事業者等にも留意し、別添に例示する。
⑫ 政府及び特定都道府県は、事業者の円滑な活動を支援するため、事業者からの相談窓口の設置、物流体制の確保、ライフラインの万全の体制の確保等に努める。
⑬ 大都市圏の都道府県は、人口及び人口密度が高く、交通の要所でもあることを踏まえて、全国的かつ急速なまん延の起点とならないよう、上記のまん延防止のための対策を十分に行う。それ以外の都道府県であっても、全国的かつ急速なまん延のおそれがあることから適切な対策を講ずる。
⑭ 政府及び地方公共団体は、飲食店については、施設の使用制限等の対象とはなってはいないが、「三つの密」が重なることがないよう、所要の感染防止策を講じるよう促す。食堂、レストラン、喫茶店などについては、換気、人と人との間隔を適切にとること等に注意するなど、「三つの密」を避けるための所要の感染防止を呼び掛ける。また、キャバレー、ナイトクラブ等の遊興施設については、クラスター発生の状況等を踏まえ、外出自粛の周知を行う。
⑮ 政府は、関係機関と協力して、クラスター対策にあたる専門家の確保及び育成を行う。
⑯ 厚生労働省及び都道府県は、関係機関と協力して、特に、感染拡大の兆しが見られた場合には、専門家やその他人員を確保し、その地域への派遣を行う。
⑰ 政府及び地方公共団体は、クラスター対策を抜本強化するという観点から、保健所の体制強化に迅速に取り組む。これに関連し、都道府県は、管内の市町村と迅速な情報共有を行い、また、対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、法第24条に基づく総合調整を行う。さらに、都道府県は、クラスターの発見に資するよう、都道府県間の迅速な情報共有に努めるとともに、政府は、対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、法第20条に基づく総合調整を行う。なお、政府は、感染症法第12条に基づく都道府県知事等から厚生労働大臣への報告が迅速に行えるよう必要な支援を行う。また、政府は、民間事業者等と協力して、SNS等の技術を活用して、感染状況等の把握を行う仕組みを構築する。
⑱ 文部科学省は、4月1日に改定した「新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン」等において示した、臨時休業の実施に係る考え方について周知を行うとともに、今後の感染拡大の状況や専門家会議の見解を踏まえ、厚生労働省の協力を得つつ、必要に応じ、追加的な考え方等を示す。都道府県は、学校設置者に対し、保健管理等の感染症対策について指導するとともに、地域の感染状況や学校関係者の感染者情報について速やかに情報共有する。
⑲ 厚生労働省は、保育所や放課後児童クラブ等について、保育の縮小や臨時休園等についての考え方を示す。その際、可能な保護者に登園を控えるようお願いするなど保育等の提供を縮小して実施することや、医療従事者や社会の機能を維持するために就業継続が必要な者、ひとり親などで仕事を休むことが困難な者の子ども等の保育等を確保しつつ臨時休園することの考え方を示す。
⑳ 政府は、関係機関と協力して、公共交通機関その他の多数の人が集まる施設における感染対策を徹底する。
㉑ 政府及び特定都道府県以外の都道府県は、職場等における感染の拡大を防止するため、BCPに基づく対応のさらなる強化、労働者を使用する事業者に対し職場内においても「三つの密」を避けることとともに、事業場内及び通勤・外勤時の感染防止のための行動(手洗い、咳エチケット等)の徹底、在宅勤務(テレワーク)や時差通勤、自転車通勤の積極的な活用、事業場の換気等の励行、発熱等の風邪症状が見られる労働者への出勤免除(テレワークの指示を含む。)や外出自粛勧奨、出張による移動を減らすためのテレビ会議の利用等を強力に呼びかける。また、特定都道府県以外の都道府県は、法第24条第9項に基づき、繁華街の接客を伴う飲食店等への外出自粛について、強く促す。
㉒ 政府は、水際対策について、国内への感染者の流入及び国内での感染拡大を防止する観点から、入国制限、渡航中止勧告、帰国者のチェック・健康観察等の検疫の強化、査証の制限等の措置等を引き続き実施する。なお、厚生労働省は、関係省庁と連携し、健康観察について、保健所の業務負担の軽減や体制強化等を支援する。
㉓ 諸外国での新型コロナウイルス感染症の発生の状況を踏まえて、必要に応じ、国土交通省は、航空機の到着空港の限定の要請等を行うとともに、厚生労働省は、特定検疫港等の指定を検討する。
㉔ 厚生労働省は、停留に利用する施設が不足する場合には、法第29条の適用も念頭に置きつつも、必要に応じ、関係省庁と連携して、停留に利用可能な施設の管理者に対して丁寧な説明を行うことで停留施設の確保に努める。

(4)医療等[編集]

① 厚生労働省は、地方公共機関や関係機関と協力して、感染拡大の状況に応じ、以下のように、地域ごとに柔軟な医療提供体制を確保する。

  •  現行では、帰国者・接触者相談センター及び帰国者・接触者外来により、適切な感染管理を行った上で、新型コロナウイルス感染症が疑われる患者への外来医療を提供すること。
  •  また、医師の判断により検査を実施し、患者が認められた場合には、感染症法第19条に基づく感染症指定医療機関等への入院勧告・措置を実施し、まん延防止を行いつつ、患者に対し、適切な医療を提供すること。
  •  患者が増加し重症者等に対する入院医療の提供に支障をきたすおそれがあると判断する都道府県では、厚生労働省に相談の上、重症者等に対する医療提供に重点を移す観点から、入院治療が必要ない軽症者等は自宅療養とし、電話等情報通信機器を用いて遠隔で健康状態を把握していくとともに、医師が必要とした場合には電話等情報通信機器を用いて診療を行う体制を整備すること。
  •  また、自宅療養とする際、家族構成等から高齢者や基礎疾患を有する者等への感染のおそれがある場合には、地方公共団体は、軽症者が宿泊施設等での療養を行うことや、同居家族が一時的に別の場所に滞在すること等、家族内感染のリスクを下げるための取組を講じること。地方公共団体は、予め、ホテルなど一時的な宿泊施設の確保に努めるとともに、国は、地方公共団体と密接に連携し、地方公共団体の取組を支援すること。
  •  患者が更に増加し帰国者・接触者外来での医療提供に支障をきたすおそれがある地域では、地域の感染状況や医療需要に応じ、帰国者・接触者相談センターの体制を強化したうえで、帰国者・接触者外来を増設し、専属的な人材を確保するなど外来を早急に受診できる体制を整備すること。
  •  こうした状況では、感染への不安から安易に医療機関を受診することでかえって感染するリスクを高める可能性があることも踏まえ、症状が軽度である場合は、自宅での安静・療養を原則とし、状態が変化した場合に、かかりつけ医等に相談した上で、受診するよう周知すること。

② 厚生労働省は、地方公共団体や関係機関と協力して、オーバーシュートや今後の感染者の大幅な増加を見据え、必要に応じ、法第31条に基づく医療等の実施の要請等も念頭におきつつ、以下のように、医療提供体制の確保を進める。

  •  例えば、新型コロナウイルス感染症の患者を集約して優先的に受け入れる医療機関の指定など、地域の医療機関の役割分担を行うとともに、結核病床や一般の医療機関の一般病床等の活用も検討し、ピーク時の入院患者を受け入れるために必要な病床を確保すること。
  •  医療提供体制を支える医薬品や医療機器、医療資材の製造体制を確保し、必要な医療機関に迅速かつ円滑に提供できる体制を確保するとともに、専門性を有する医療従事者や人工呼吸器等の必要な医療機器・物資・感染防御に必要な資材等を迅速に確保し、適切な感染対策の下での医療提供体制を整備すること。
  •  医療機関は、BCPも踏まえ、必要に応じ、医師の判断により延期が可能と考えられる予定手術や予定入院の延期を検討すること。
  •  地域の診療所など一般の医療機関に勤務している医療従事者の派遣を検討すること。
  •  例えば、重症化しやすい方が来院するがんセンター、透析医療機関及び産科医療機関などは、必要に応じ、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる方への外来診療を原則行わない医療機関として設定すること。
  •  仮設の診療所や病棟の設置、非稼働病床の利用、特定都道府県による法第48条に基づく臨時の医療施設を開設するにあたって、必要な支援を行うこと。
  •  医療提供体制のひっ迫及びオーバーシュートの発生に備え、都道府県域を越える場合も含めた広域的な患者の受入れ体制を確保すること。

③ 厚生労働省は、医療機関及び高齢者施設等における施設内感染を徹底的に防止する観点から、地方公共団体と協力して、以下の事項について周知徹底を行う。

  •  医療機関及び高齢者施設等の設置者に対して、従事者等が感染源とならないよう、「三つの密」が同時に重なる場を徹底して避けるとともに、症状がなくても患者や利用者と接する際にはマスクを着用する、手洗い・手指消毒の徹底、パソコンやエレベーターのボタンなど複数の従事者が共有するものは定期的に消毒する、食堂や詰め所でマスクをはずして飲食をする場合、他の従事者と一定の距離を保つ、日々の体調を把握して少しでも調子が悪ければ自宅待機するなどの対策に万全を期すこと。
  •  医療機関及び高齢者施設等に対して、面会者からの感染を防ぐため、面会は緊急の場合を除き一時中止すべきこと。
  •  さらに、患者、利用者からの感染を防ぐため、感染が流行している地域においては、施設での通所サービスなどの一時利用を中止又は制限する、入院患者、利用者の外出、外泊を制限する等の対応を検討すべきであること。
  •  医療機関及び高齢者施設等に対して、入院患者、利用者等について、新型コロナウイルス感染症を疑った場合は、早急に個室隔離し、保健所の指導の下、感染対策を実施し、標準予防策、接触予防策、飛沫感染予防策を実施すること。

④ 政府及び都道府県は、特に新型コロナウイルス感染症を疑う患者にPCR検査や入院の受け入れを行う医療機関等に対しては、マスク等の個人防護具を優先的に確保する。
⑤ 都道府県は、③の周知に協力するともに、感染者と非感染者の空間を分けるなどを含む感染防御策の更なる徹底などを通して、医療機関及び施設内での感染の拡大に特に注意を払う。また、特に感染が疑われる医療、施設従事者及び入院患者等については、率先してPCR検査等を受けさせるようにする。
⑥ 厚生労働省は、この他、適切な医療提供・感染管理の観点で、次の事項に取り組む。

  •  関係省庁と協力して、オーバーシュートの発生に備えて、感染症病床等の利用状況について一元的かつ即座に把握可能とする仕組みの構築を進めること。
  •  外来での感染を防ぐため、関係機関と協力して、医療機関の外来において、一般の患者も含め、混雑を生じさせないよう、予約による診療や動線が適切に確保された休日夜間急患センターの施設活用などを推進すること。
  •  妊産婦に対する感染を防止する観点から、医療機関における動線分離等の感染対策の徹底に加え、関係機関と協力して、感染が疑われる妊産婦への早めの相談の呼びかけや、妊娠中の女性労働者に配慮した休みやすい環境整備などの取組を推進すること。
  •  関係機関と協力して、外国人が医療を適切に受けることができるよう、医療通訳の整備などを、引き続き、強化すること。
  •  関係省庁・関係機関とも連携し、有効な治療薬やワクチン等の開発を加速すること。特に、他の治療で使用されている薬剤のうち、効果が期待されるものについて、その効果を検証するための臨床研究・治験等を速やかに実施すること。
  •  法令に基づく健康診断及び予防接種については、適切な感染対策の下で実施されるよう、時期や時間等に配慮すること。

⑦ 政府は、上記に関し、地方公共団体等に対する必要な支援を行う。

(5)経済・雇用対策[編集]

政府は、新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するとともに、新型コロナウイルス感染症による内外経済や国民生活への影響を注意深く見極めながら、機動的に、必要かつ十分な経済財政政策を躊躇なく行うこととし、日本経済を確かな成長軌道へと戻すための思い切った措置を講じていく。特に、新型コロナウイルスの感染拡大により経済活動が縮小する中で影響を受けているフリーランスを含め、様々な形態で働く方々の雇用や生活を維持するとともに、中小・小規模事業者や個人事業主の方々が継続して事業に取り組めるよう制度を整える。

(6)その他重要な留意事項[編集]

1)人権への配慮等[編集]

① 政府は、患者・感染者や対策に携わった方々等の人権に配慮した取組を行う。
② 政府は、海外から一時帰国した児童生徒等への学校の受け入れ支援やいじめ防止等の必要な取組を実施する。
③ 政府及び関係機関は、各種対策を実施する場合においては、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものとするとともに、女性や障害者などに与える影響を十分配慮して実施するものとする。
④ 政府は、新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療関係者が風評被害を受けないよう、国民への普及啓発等、必要な取組を実施する。
⑤ 政府及び地方公共団体は、マスク及び個人防護具、医薬品、医薬部外品、食料品等に係る物価の高騰及び買占め、売り惜しみを未然に回避し又は沈静化するため、必要に応じ、法第59条に基づく措置を講じる。
⑥ 政府及び地方公共団体は、外出を自粛する方々の心のケアや自宅でのDVや虐待の発生防止に取り組むとともに、在宅の一人暮らしの高齢者や障害者などの要援護者に対して、市町村が行う見守り等に対して適切に支援する。

2)物資・資材等の供給[編集]

① 政府は、国民や地方公共団体の要望に応じ、マスク、個人防護具や消毒薬、食料品等の増産や円滑な供給を関連事業者に要請する。また、政府は、感染防止や医療提供体制の確保のため、マスク、個人防護具、人工呼吸器等の必要な物資を国の責任で確保し、必要に応じ、法第54条に基づく緊急輸送の要請や法第55条に基づく売渡しの要請等を行う。例えば、マスク等を国で購入し、必要な医療機関や介護施設等に優先配布することや、感染拡大防止策が特に必要と考えられる地域において必要な配布を行う。
② 政府は、マスクや消毒薬等の国民が必要とする物資を確保するため、国民生活安定緊急措置法(昭和48年法律第121号)第26条第1項を適用し、マスクの転売行為を禁止するとともに、過剰な在庫を抱えることのないよう消費者や事業者に冷静な対応を呼びかける。また、政府は、繰り返し使用可能な布製マスクの普及を進める。
③ 政府は、事態の長期化も念頭に、マスクや抗菌薬の原薬を含む医薬品、医療機器等の医療の維持に必要な資材の安定確保に努めるとともに、国産化の検討を進める。

3)関係機関との連携の推進[編集]

① 政府は、地方公共団体を含む関係機関等との双方向の情報共有を強化し、対策の方針の迅速な伝達と、対策の現場における状況の把握を行う。
② 政府は、対策の推進にあたっては、地方公共団体等の関係者の意見を十分聞きながら進める。
③ 地方公共団体は、保健部局のみならず、危機管理部局も含めすべての部局が協力して対策にあたる。
④ 政府は、国際的な連携を密にし、WHOや諸外国・地域の対応状況等に関する情報収集に努める。また、日本で得られた知見を積極的にWHO等の関係機関や諸外国・地域と共有し、今後の対策に活かしていくとともに、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受ける国・地域に対する国際社会全体としての対策に貢献する。
⑤ 政府は、基礎医学研究及び臨床医学研究、疫学研究を含む社会医学研究等の研究体制に対する支援を通して、新型コロナウイルス感染症への対策の推進を図る。
⑥ 都道府県は、近隣の特定都道府県が緊急事態宣言後の様々な措置を行うにあたり、その要請に応じ、必要な支援を行う。
⑦ 特定都道府県は、緊急事態宣言後の様々な措置を実施するにあたっては、予め政府対策本部と協議し、迅速な情報共有を行う。政府対策本部長は、特定都道府県が適切に緊急事態措置を講じることができるよう、専門家の意見を踏まえつつ、特定都道府県と総合調整を行う。
⑧ 緊急事態宣言後の様々な措置を実施した際には、特定都道府県知事及び指定行政機関の長は政府対策本部長に、特定市町村長及び指定地方公共機関の長はその所在する特定都道府県知事に、指定公共機関の長は所管の指定行政機関に、その旨及びその理由を報告する。政府対策本部長は国会に、特定都道府県知事及び指定行政機関の長は政府対策本部長に、報告を受けた事項を報告する。

4)社会機能の維持[編集]

① 政府、地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関は、職員における感染を防ぐよう万全を尽くすとともに、万が一職員において感染者又は濃厚接触者が確認された場合にも、職務が遅滞なく行えるように対策を予め講じる。特に、テレビ会議及びテレワークの活用に努める。
② 地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関は、電気、ガス、水道、公共交通、通信、金融業等の維持を通して、国民生活及び国民経済への影響が最小となるよう公益的事業を継続する。
③ 政府は、指定公共機関の公益的事業の継続に支障が生じることがないよう、必要な支援を行う。
④ 国民生活・国民経済の安定確保に不可欠な業務を行う事業者は、国民生活及び国民経済安定のため、事業の継続を図る。
⑤ 政府は、事業者のサービス提供水準に係る状況の把握に努め、必要に応じ、国民への周知を図る。
⑥ 政府は、空港、港湾、医療機関等におけるトラブルなどを防止するため、必要に応じ、警戒警備を実施する。
⑦ 警察は、混乱に乗じた各種犯罪を抑止するとともに、取締りを徹底する。

5)緊急事態宣言後の取組[編集]

政府は、緊急事態宣言を行った後にも、特定都道府県や基本的対処方針等諮問委員会等との定期的な情報交換を通じ、感染状況の変化、施策の実施状況等を定期的に分析・評価し、必要に応じて、国民や関係者へ情報発信を行う。また、緊急事態解除宣言を行った後にも、引き続き、警戒を行い、国内外の感染状況を分析し、それまでの知見に基づき、より有効な対策を実施する。

6)その他[編集]

① 政府は、必要に応じ、他法令に基づく対応についても、講ずることとする。
② 今後の状況が、緊急事態宣言の要件等に該当するか否かについては、海外での感染者の発生状況とともに、感染経路の不明な患者やクラスターの発生状況等の国内での感染拡大及び医療提供体制のひっ迫の状況を踏まえて、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるか否かについて、政府対策本部長が基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分踏まえた上で総合的に判断することとする。
③ 政府は、基本的対処方針を変更し、又は、緊急事態の継続若しくは終了するにあたっては、新たな科学的知見、感染状況、施策の実行状況等を考慮した上で、基本的対処方針等諮問委員会の意見を十分踏まえた上で臨機応変に対応する。

(別添)緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者[編集]

以下事業者等については、「三つの密」を避けるための取組を講じていただきつつ、事業の継続を求める。

1.医療体制の維持[編集]

  •  新型コロナウイルス感染症の治療はもちろん、その他の重要疾患への対応もあるため、すべての医療関係者の事業継続を要請する。
  •  医療関係者には、病院・薬局等のほか、医薬品・医療機器の輸入・製造・販売、献血を実施する採血業、入院者への食事提供など、患者の治療に必要なすべての物資・サービスに関わる製造業、サービス業を含む。

2.支援が必要な方々の保護の継続[編集]

  •  高齢者、障害者など特に支援が必要な方々の居住や支援に関するすべての関係者(生活支援関係事業者)の事業継続を要請する。
  •  生活支援関係事業者には、介護老人福祉施設、障害者支援施設等の運営関係者のほか、施設入所者への食事提供など、高齢者、障害者などが生活する上で必要な物資・サービスに関わるすべての製造業、サービス業を含む。

3.国民の安定的な生活の確保[編集]

  •  自宅等で過ごす国民が、必要最低限の生活を送るために不可欠なサービスを提供する関係事業者の事業継続を要請する。

① インフラ運営関係(電力、ガス、石油・石油化学・LPガス、上下水道、通信・データセンター等)
② 飲食料品供給関係(農業・林業・漁業、飲食料品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販等)
③ 生活必需物資供給関係(家庭用品の輸入・製造・加工・流通・ネット通販等)
④ 食堂、レストラン、喫茶店、宅配・テークアウト、生活必需物資の小売関係(百貨店・スーパー、コンビニ、ドラッグストア、ホームセンター等)
⑤ 家庭用品のメンテナンス関係(配管工・電気技師等)
⑥ 生活必需サービス(ホテル・宿泊、銭湯、理美容、ランドリー、獣医等)
⑦ ごみ処理関係(廃棄物収集・運搬、処分等)
⑧ 冠婚葬祭業関係(火葬の実施や遺体の死後処置に係る事業者等)
⑨ メディア(テレビ、ラジオ、新聞、ネット関係者等)
⑩ 個人向けサービス(ネット配信、遠隔教育、ネット環境維持に係る設備・サービス、自家用車等の整備等)

4.社会の安定の維持[編集]

  •  社会の安定の維持の観点から、緊急事態措置の期間中にも、企業の活動を維持するために不可欠なサービスを提供する関係事業者の最低限の事業継続を要請する。

① 金融サービス(銀行、信金・信組、証券、保険、クレジットカードその他決済サービス等)
② 物流・運送サービス(鉄道、バス・タクシー・トラック、海運・港湾管理、航空・空港管理、郵便等)
③ 国防に必要な製造業・サービス業の維持(航空機、潜水艦等)
④ 企業活動・治安の維持に必要なサービス(ビルメンテナンス、セキュリティ関係等)
⑤ 安全安心に必要な社会基盤(河川や道路などの公物管理、公共工事、廃棄物処理、個別法に基づく危険物管理等)
⑥ 行政サービス等(警察、消防、その他行政サービス)
⑦ 育児サービス(託児所等)

5.その他[編集]

医療、製造業のうち、設備の特性上、生産停止が困難なもの(高炉や半導体工場など)、医療・支援が必要な人の保護・社会基盤の維持等に不可欠なもの(サプライチェーン上の重要物を含む。)を製造しているものについては、感染防止に配慮しつつ、継続する。また、医療、国民生活・国民経済維持の業務を支援する事業者等にも、事業継続を要請する。

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  2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
  3. 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
  4. 上記いずれかのものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
  5. 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道

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