昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件ニ基ク就職禁止、退官、退職等ニ関スル件/公布時
原文
[編集]朕󠄄樞密顧󠄃問ノ諮󠄄詢ヲ經テ昭和二十年勅令第五百四十二號「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴󠄃ヒ發スル命令ニ關スル件ニ基ク就職禁止、退󠄃官、退󠄃職等ニ關スル件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公󠄃布セシム
御名 御璽
昭和二十一年二月二十七日
內閣總理大臣兼󠄄第一復員大臣第二復員大臣 男爵󠄄 幣󠄃原喜重郞
內務大臣 三土 忠造󠄃
司法大臣 岩田 宙造󠄃
外務大臣 𠮷田 茂
國務大臣 松本 烝治
厚生大臣 芦田 均
大藏大臣 子爵󠄄 澁澤 敬三
商工大臣 小笠原三九郞
國務大臣 小林 一三
文󠄃部大臣 安倍 能成󠄃
農林大臣 副島 千八
運󠄃輸󠄃大臣 村上 義一
國務大臣 石黑 武重
國務大臣 楢橋 渡
勅令第百九號󠄂
第一條 昭和二十一年一月四日附聯合國最高司令官覺書公󠄃務從事ニ適󠄃セザル者ノ公󠄃職ヨリノ除去ニ關スル件ニ揭グル條項ニ該當スル者トシテ內閣總理大臣ノ指定スル者(以下覺書該當者ト稱ス)ニシテ通󠄃常勅任待遇󠄃以上ノ者ノ占ムル官職ニ在ルモノハ退󠄃官又󠄂ハ退󠄃職セシメラレ爾後官職ニ就クコトヲ得ズ
前󠄃項ノ規定ニ該當スル者ニ付餘人ヲ以テ代フルコト困難ナル事情󠄃アルトキハ同項ノ規定ニ拘ラズ內閣總理大臣ノ定ムル所󠄃ニ依リ其ノ者ヲ官職ニ留任又󠄂ハ再任セシムルコトヲ得
覺書該當者ハ第一項ノ規定ニ該當セザル者ト雖モ官職ニ就カシメザルコトアルベシ
第二條 前󠄃條ニ於テ官職トハ官廳ノ特別ノ支配󠄃ニ屬スル會社、協會其ノ他ノ團體トシテ內閣總理大臣ノ指定スル團體ノ職員ノ職ヲ含ムモノトシ通󠄃常勅任待遇󠄃以上ノ者ノ占ムル官職トハ比等ノ團體ニ付テハ其ノ幹部タル職員ノ職ニシテ內閣總理大臣ノ指定スルモノヲ謂フ
第三條 第一條第一項ノ覺書ニ基キ退󠄃官又󠄂ハ退󠄃職シタル者ハ內閣總理大臣ノ特ニ定ムル場合ヲ除クノ外公󠄃私ノ恩給、年金其ノ他ノ手當又󠄂ハ利益ヲ受クルコトヲ得ズ
第四條 覺書該當者ハ帝國議會ノ議員又󠄂ハ市長ト爲ルコトヲ得ズ其ノ現ニ帝國議會ノ議員タル者ハ其ノ職ヲ失フモノトス
第五條 地方長官貴族院多額納󠄃稅者議員互選󠄄規則第四條及第三十九條ノ互選󠄄人名簿ヲ調製セントスル場合ニ於テハ互選󠄄人タルベキ者ヲシテ其ノ者ガ覺書該當者ニ非ザル者ナルコトヲ證スルニ足ル書面ヲ提出セシム
地方長官前󠄃項ノ書面ヲ受取リタルトキハ直ニ內務大臣ヲ經テ內閣總理大臣ニ之ヲ送󠄃付スベシ
前󠄃二項ノ規定ハ貴族院伯子男爵󠄄議員又󠄂ハ貴族院帝國學士院會員議員ノ選󠄄擧ヲ行フ場合ニ之ヲ準用ス但シ地方長官トアルハ貴族院伯子男爵󠄄議員ニ付テハ宗秩寮總裁、貴族院帝國學士院會員議員ニ付テハ選󠄄擧管理者トシ書面ノ送󠄃付ニ付テハ內務大臣ヲ經ルコトヲ要󠄃セザルモノトス
第六條 覺書該當者ハ衆議院議員候補者タルコトヲ得ズ
衆議院議員選󠄄擧法第六十七條第一項乃至第三項ノ規定ニ依ル議員候補者ノ屆出又󠄂ハ推薦屆出(以下屆出又󠄂ハ推薦屆出ト稱ス)ヲ爲サントスル者ハ選󠄄擧長ニ對シ議員候補者タルベキ者ガ覺書該當者ニ非ザル者ナルコトヲ證スルニ足ル書面ヲ併セ提出スベシ
選󠄄擧長議員候補者タルベキ者ガ覺書該當者ナルコトヲ確認シタルトキハ其ノ者ニ係ル屆出又󠄂ハ推薦屆出ヲ受理スルコトヲ得ズ
選󠄄擧長第二項ノ書面ヲ受取リタルトキハ直ニ內務大臣ヲ經テ內閣總理大臣ニ之ヲ送󠄃付スベシ
議員候補者ニ付第一條第一項ノ指定アリタルトキハ當該議員候補者ハ議員候補者タルコトヲ辭シタルモノト看做ス
附則
本令ハ公󠄃布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
現代かなづかい版
[編集]朕枢密顧問の諮詢を経て昭和20年勅令第542号「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く就職禁止、退官、退職等に関する件を裁可し、玆に之を公布せしむ。
- 御名御璽
- 昭和21年2月27日
内閣総理大臣兼 第一復員大臣 第二復員大臣 |
男爵 |
幣原 喜重郎 |
外務大臣 | 三土 忠造 | |
司法大臣 | 岩田 宙造 | |
外務大臣 | 吉田 茂 | |
国務大臣 | 松本 烝治 | |
厚生大臣 | 芦田 均 | |
大藏大臣 | 子爵 | 渋沢 敬三 |
商工大臣 | 小笠原三九郎 | |
国務大臣 | 小林 一三 | |
文部大臣 | 安倍 能成 | |
農林大臣 | 副島 千八 | |
運輸大臣 | 村上 義一 | |
国務大臣 | 石黒 武重 | |
国務大臣 | 楢橋 渡 |
第1条 昭和21年1月4日附連合国最高司令官覚書公務従事に適せざる者の公職よりの除去に関する件に掲ぐる条項に該当する者として、内閣総理大臣の指定する者(以下覚書該当者と称す)にして、通常勅任待遇以上の者の占むる官職に在るものは、退官又は退職せしめられ爾後官職に就くことを得ず。
前項の規定に該当する者に付、余人を以て代ふること困難なる事情あるときは、同項の規定に拘らず内閣総理大臣の定むる所に依り、其者のを官職に留任又は再任せしむることを得。
覚書該当者は、第1項の規定に該当せざる者と雖も、官職に就かしめざることあるべし。
第2条 前条に於て官職とは、官庁の特別の支配に属する会社、協会、其の他の団体として内閣総理大臣の指定する団体の職員の職を含むものとし、通常勅任待遇以上者のの占むる官職とは比等の団体に付ては其の幹部たる職員の職にして内閣総理大臣の指定するものを言ふ。
第3条 第1条第1項の覚書に基き退官又は退職したる者は、内閣総理大臣の特に定むる場合を除くの外、公私の恩給、年金其の他の手当又は利益を受くることを得ず。
第4条 覚書該当者は帝国議会の議員又は市長と為ることを得ず。其の現に帝国議会の議員たる者は、其の職を失ふものとす。
第5条 地方長官、貴族院多額納税者議員互選規則第4条及第39条の互選人名簿を調製せんとする場合に於ては、互選人たるべき者をして其の者が覚書該当者に非ざる者なることを証するに足る書面を提出せしむ。
地方長官前項の書面を受取りたるときは、直に内務大臣を経て内閣総理大臣に之を送付すべし。
前2項の規定は貴族院伯子男爵議員、又は貴族院帝国学士院会員議員の選挙を行ふ場合に之を準用す。但し地方長官とあるは、貴族院伯子男爵議員に付ては宗秩寮総裁、貴族院帝国学士院会員議員に付ては選挙管理者とし、書面の送付に付ては内務大臣を経ることを要せざるものとす。
第6条 覚書該当者は、衆議院議員候補者たることを得ず。
衆議院議員選挙法第67条第1項乃至第3項の規定に依る議員候補者の届出又は推薦届出(以下届出又は推薦届出と称す)を為さんとする者は、選挙長に対し、議員候補者たるべき者が覚書該当者に非ざる者なることを証するに足る書面を併せ提出すべし。
選挙長議員候補者たるべき者が覚書該当者なることを確認したるときは、其の者に係る届出又は推薦届出を受理することを得ず。
選挙長、第2項の書面を受取りたるときは、直に内務大臣を経て内閣総理大臣に之を送付すべし。
議員候補者に付、第1条第1項の指定ありたるときは、当該議員候補者は議員候補者たることを辞したるものと看做す。
第7条 各庁は内閣総理大臣の定むる所に依り、第1条の規定の適用に関し必要なる調査表を徴すべし。[1]
第8条 第5条第1項(同条第3項に於て準用する場合を含む)若は第6条第2項の書面又は前条の調査表に虚偽の記載を為し又は事実を隠蔽したる記載を為したる者及同条の調査表を徴せられ之を提出せざる者は、1年以下の懲役若は禁錮又は3千円以下の罰金に処す。各庁が第1条第1項の覚書に基き報告書を連合国最高司令官に提出する場合に於て、其の報告書に虚偽の記載を為し又は事実を隠蔽したる記載を為したる者に付、亦同じ。
附則
本令は公布の日より之を施行す。
注釈
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この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。