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これを受けて制定された国家賠償法であるから、その解釈・適用についても右憲法の法意が充分貫かれ、被害者の可及的救済制度としての運用が計られなければならない。そしてこの構成要件の吟味にあっては、公務員の故意・過失といった要件と、損害を与えた違法な公権力の行使についての要件は、混同されることなく峻別し、充分に検討が加えられなければならない。
原判決は、この点前記の判示から明らかなとおり、これら要件を別けて吟味することなく、混同してしまい、その結果、とり返しのつかない誤りを犯してしまっているといわなければならない。
本件の場合、確定判決が、被告人であった上告人那須隆に対し、懲役一五年の刑を言渡し、これが執行されたため、同人は、自由を奪われ、長期間の獄中の生活を強いられた。そして、その後、右確定判決が、再審により誤判であることが明らかとなり、違法なるが故に取消され、消滅し、無罪の判決が改めて言渡され、これが確定したのである。従って、結果として、右上告人那須隆が違法に長期間、身体の自由を奪われ、損害を受けたのであるが、その基本となったのは、過去に言渡された有罪判決であり、それが取消されたのであるから違法であったと解されるべきものであることは多言を要しない筈である。
問題は、この違法な裁判が言渡されることにつき、当該裁判官に故意・過失があったかどうかであるが、これは前述したとおり、全く別の要件として吟味を必要とするものと言わなければならない。
しかるに、原判決は、これら国家賠償法の定める要件を混同させ、また、再審で確定判決が取消され、違法視されることに極度の拒否反応を示し、なにか再審制度が、訴訟制度の中に存在することを失念したかの如き態度で、前記法条を解釈したため、何が違法とされるのかということ、これとは別に当該裁判官の行為につき、