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是正を経ていない。従って、確定した判決は、厳に適法なものとして存在している事案に関するものであり、右判例では「再審」についての訴訟法上の救済方法についての履践については、勿論、全く言及していない事案についてのものである。これに意識的に「再審」を含ましめて引用することは、不当に判旨を拡大し、異質な場合も含ましめるもので判例の正しい引用の仕方ではない。
そもそも、再審という救済方法も、訴訟法上予定されているもので、一旦確定した判決も、この救済方法により覆された場合には、かつての確定していた裁判は、違法なものとして、その存在が否定されることになるのであって、これは訴訟制度自体の否定でもなく、耐え難い結果でもない。
原判決の右判示の立場こそ、再審により覆された判決をその後においても適法なものと考えようとすることを通じ、再審により改めてなされた判決の効力を否定することになりかねない、甚だ訴訟制度を無視する立論であるとの批判を免れない。
㈡ そもそも原判決は、憲法一七条の法意につき、失念(無視)し、国家賠償法一条一項の要件についての解釈を基本的に誤っているものといわなければならない。
すなわち、憲法一七条は、「何人も公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる」と定めている。
これは、国家無責任の原則に支配され、国の賠償責任を認める法律もなく、斬り捨て御免で、ただ諦めと忍従を強いられてきた国民に対し、国又は、公共団体の違法な権力行使による被害を可及的に救済しようとして設けられたものである。