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第二 原判決には、法令解釈適用につき瑕疵があり、これが判決に影響を及ぼしているので、原判決は、破棄されなければならない。
一 原判決は、再審により無罪判決が確定した本件の国家賠償請求事件において、裁判自体の責任につき、
「裁判官がした争訟の裁判に上訴・再審等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによって当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任の問題が生ずるわけのものではなく、右責任が肯定されるのは、当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情がある場合である(最高裁判所昭和五七年三月一二日判決)」と判示する。そして、その理由を「我国現行の訴訟においては……証拠のみを通して認識された事実が時として実体真実と隔たる結果となる事態を避け難い本質を内包していることに鑑みるならば、当該裁判官が証拠力の評価に際し、裁判官に付与されている自由心証上の裁量権を敢えて逸脱し、恣意的に経験則や論理法則を無視して判決したような場合は格別、そうでない限り、当該裁判が後日再審等で覆されたことを理由に、直ちにこれを右の違法行為に該当するとしたのでは、或る意味で訴訟制度自体を否定することにつながりかねない、耐え難い結果となるからである」
と説明する。
二 しかし、右判示は、明らかに、引用する判例の理解を誤り不当に拡張しており、国家賠償法一条一項ひいては憲法一七条の解釈をも誤っているもので改められなければならないものである。
㈠ 第一に、原判決の引用する最高裁判所昭和五七年三月一二日判決は、上訴等の訴訟法上の救済方法による