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三 原裁判所は、前述のような国家賠償法一条一項の解釈を採ったが故に、有罪判決確定前の検察官の捜査、起訴、訴訟追行行為につき、違法又は不当な目的の下に捜査・起訴……訴訟追行したなど、その付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したかどうかを刑事確定記録を基本に審理するとの態度をとったものと解される。
そのため、殆ど再審請求審、再審異議審、再審公判において、調べられた資料や問題とされた論点について、吟味を欠落させてしまっているとしか考えられない判示を行なっている。
例えば、次の判示である。
「本件白シャツは同公判期日の昭和二四年一〇月三一日裁判所に領置され、検察官の手を離れているのである。仮に、何者かが血痕を付着させたとすると、その血液の出処が問題となるが、乙第三〇九号証中の弁護人三上直吉の弁論要旨三枚目裏によれば、原一審の弁護人は被害者の夫が後日のために保存していたのではないかとの推測をしている。しかし、同人が大学医学部の教授であることを考慮すれば血液保存は可能であるにしても、そのような人為的付着に加担したのであるとすれば、妻の敵かどうか必ずしも明確でない者を犯人に仕立て上げることに手を貸したわけであり、その結果本当の敵である他にいるかも知れない真犯人を逃すことになりかねないのであるから、およそ考え難いことである。まして、本件白シャツが裁判所に領置され古畑鑑定に付されるまでの約八ヵ月の間に、右「保存血液」を付着させるなど、殆ど不可能事に属する」
右の判示ほど、ピントのずれた判示はない。再審請求審の段階でも、再審公判段階でも、血痕についての証拠偽造の問題として問われていたのは、押収時の昭和二四年八月二四日から起訴前の一〇月一七日、三木敏行鑑