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木医師はともかく〔丙〕技手は鑑定人としての学識経験を有していたか否か大いに疑問の存することなどを勘案した場合、刑事裁判の証拠たりうる正式の鑑定書とは到底いえない性質のものであること、本件公訴を提起するまで、右松木・〔丙〕鑑定書以外に本件白シャツに人血が付着していることを認める証拠は存しなかったことが認められ、また、
弘前市警察署長は、同月一七日、東北大学医学部法医学教室の三木敏行助教授に本件白シャツ外二点の鑑定を嘱託したが、その際の鑑定事項は、⑴被疑者の血液型、⑵本件白シャツに付着している人血につき血液型はQであるかqであるか、⑶畳床藁(被害者の血液が多量付着して凝固したもの)につきその血液型はQであるかqであるか、というものであったこと、三木助教授は、同日から同月一九日まで鑑定をなし、⑴被疑者の血液はBMq型に属する、⑵本件白シャツにはQ型の血液が付着している、⑶畳床藁にはQ型の血液が付着しているとの結論を得、その旨記載した鑑定書(甲第一一号証、乙第一一四号証)を提出したこと、検察官沖中益太は、同月二〇日ころ、右鑑定書を得て、同月二四日、原告隆を殺人の罪で起訴したこと。」
との事実関係によれば、検察官沖中益太は、右松木・〔丙〕鑑定書の作成経緯等に関する右事実を十分承知していたものと推認するのが相当であり、またその職掌柄これを知るべき状況にあったものということができる。」
原判決は、この事実関係においても、検察官が違法又は不当な目的の下に捜査及び公訴提起したのではないと考えて、この事実を不問に付したのであろうか。
もし、そうであるとするならば、その判断は、権力のおごりであり、国民から負託された裁判官のそれとしては、厳しく排除されなければならない類のものである。