Page:Third civil judgement of Hirosaki incident.pdf/14

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一 原判決は、前述した検察官が違法又は不当な目的の下に捜査及び公訴の提起・追行したなど、その付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認められるような特別な事情の有無について判断するとして、上告人の主張の中から本件白シャツの押収後捜査官が、これに血痕を付着させたこと及び知情の事実をとり上げ、これにつき、直接認むべき証拠はないので、これら事実の推認・根拠となる情況事実の存否を検討するとして、一審判決の認定について一部削除、改訂等を行ないながら判示している。
二 しかし、右判示によっても、一審判決の次の判示は、改められてはいない。
「検察官沖中益太は、科捜研における〔丙3〕・平嶋鑑定をもってしては本件白シャツに付着していた汚斑が人血であることを証明するには不十分であると考え、右鑑定人両名に対し、その鑑定結果について補充説明を求めるべく、昭和二四年一〇月一四日付捜査嘱託書により、東京地方検察庁にその捜査を依頼しているのであって、そのことからすれば、同検察官は、本件白シャツに付着している汚斑が人血であることを確認する必要性を十分認識し、この点に細心の注意を払っていたものと推認しうること、したがって、同月一七日、東北大学の三木助教授に鑑定を依頼するに際しては、まず第一に本件白シャツに付着している汚斑が人血であるか否かを鑑定事項とすべきであるにもかかわらず、敢えてこれを鑑定事項として掲げず、右汚斑が人血であることを前提としたうえで、その血液型がQであるかqであるかのみを鑑定事項としたこと、その後判明した前記捜査嘱託に対する回答によっても、本件白シャツに付着している汚斑が人血であるとは断定しえなかったこと、他方、松木・〔丙〕作成の同月一九日付鑑定書(本件白シャツに関する甲第九号証、乙第一一一号証)には、本件白シャツに付着している斑痕が人血である旨記載されているものの、同鑑定書の作成経緯、記載内容の正確性、松