捕勾留、公訴の提起、追行、起訴後の勾留が違法となるものではないことは、最高裁判所昭和五三年一〇月二〇日判決の示すところであり」とし、いわゆる職務行為基準説といわれる考え方を判示し、いわゆる結果違法説といわれる考え方を斥け、これに続けて、「裁判官がした争訟の裁判に上訴・再審(この部分が原裁判所の不当な挿入であることは前述したとおり)等、訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによって当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法行為があったものとして国の損害賠償責任の問題が生ずるわけではなく」と判示し、その後に最高裁判所昭和五七年三月一二日判決と( )書きで示しながら、これにより再審で有罪判決が覆された場合についてまで、いわゆる結果違法説は妥当しないといった判示の仕方をしている。
しかし、前述したとおり右の昭和五七年三月一二日判決は、未だ確定判決が訴訟法上の救済方法により覆されていない民事事件の判決であり、さらに前者の最高裁判所の判決は、無罪判決の確定とその公訴提起・追行等の行為の関係のもので、本件のような有罪確定判決が、再審で無罪になり、これが確定した場合に消滅したさきの有罪判決の違法性の有無についての判示したものではない。しかるに原判決は、右のような判示の仕方を通じ、あたかも有罪判決が再審で無罪になった場合でも、裁判について結果違法説が最高裁判所の判例で否定されているかのごとき判示を行なっている。これらは、不誠実で且つ、不当な判示の仕方として厳しく批判され、改められなければならないものである。
第三 原判決には、判断遺脱の理由不備があるので、原判決は破棄を免れない。
一 原判決は、前述したように国家賠償法一条一項の解釈を誤り、甚だしく限定した立場を採用した。その結
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