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与された権限の趣旨に明らかに背いて、これを行使したと認められるような特別な事情があることが必要とすると解するのが相当である。」とも判示する。
四 これらの判示は、明らかに論理的に矛盾している。
前段の判示においては検察官の証拠評価や判断上の過程は、本来の審級制度を含むその刑事事件そのものの場で是正されるべきで、一旦確定してしまえば、その後は、再審無罪判決になっても、その過誤は不問に付されることになると判示し、後段の判示においては、特別な場合には問題にできると判示するが、その根拠は全く示されていない。
そもそも、右前段の判示の論理に従っても、再審で無罪の判決が確定すれば、有罪を求めた嫌疑が根拠のないものであったとの推定が働くということになるのではないか。そうであるとすれば、正に、そこから訴追の嫌疑ありと判断したことの是非が問われることになり、さらに訴訟追行行為の是非が問われることになり、これらに関して故意・過失の有無が問題になるのではないか。
それは兎も角として、右後段の判示を公務員の故意・又は過失についての判断とするならば、裁判官の場合について述べたと同様に、過失ある場合を不当に免責してしまう誤った法令の解釈・適用であり、これを行為の違法性についての判示と解するならば、何故このような場合についてだけ判決が、或はそれを求めた訴訟提起・追行行為だけが違法性を帯有することになるのかについては、全く不明としかいいようのない不充分な判示との批難はまぬがれない。
五 そもそも、原判決は、「刑事事件につき無罪の判決が確定した場合に、そのことだけで直ちに起訴前の逮