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Page:Textbook of Japanese History for Elementary School on 1943 vol 1.pdf/66

提供:Wikisource
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た時もまた、幕府の耳に、はいつてしまひました。高時は、かうしたくはだてが天皇のおぼし召しによることを知つて、無道にも、つひに兵を皇居へさし向けました。

天皇は、神器を奉じて、ひとまづ笠置山かさぎやまへお出ましになり、諸國の武士に「賊軍を討て」との命令をおくだしになりました。お召しによつて、眞先に兵をげたのは、河内かはち楠木正成くすのきまさしげ備後びんご櫻山茲俊さくらやまじしゆんであります。正成は、時をうつさず行在所あんざいしよへ參り、つつしんで申しあげました。

「たとひ賊がどんなに強くても、はかりごとをめぐらせば、擊ち破れないはずはございません。みかたの旗色がよくない時でも、正成がまだ生き殘つてゐると、お聞きおよびでございましたら、どうぞ安心くださいますやうに。」

勤皇のさきがけ
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勤皇のさきがけ

少しでも心をおやすめ申しあげたいと思ふと、正成のことばには、おのづから力がこもりました。

やがて正成は、菊水きくすゐの旗を木津きづの川風になびかせながら歸りました。笠置を守る人々は、そのうしろ姿をたのもしさうに見送りました。