年に日本に來た唐船に誂へて火鼠の皮衣といふ物を買つて來るように賴みました。やがて、その商人は、やう〳〵のことで元は天竺にあつたのを求めたといふ手紙を添へて、皮衣らしいものを送り、前に預つた代金の不足を請求して來ました。大臣は喜んで品物を見ると、皮衣は紺靑色で毛のさきは黃金色をしてゐます。これならば姬の氣に入るに違ひない、きっと自分は姬のお婿さんになれるだらうなどゝ考へて、大めかしにめかし込んで出かけました。姬も一時は本物かと思つて內々心配しましたが、火に燒けないはずだから、試して見ようといふので、火をつけさせて見ると、一たまりもなくめら〳〵と燒けました。そこで右大臣もすっかり當てが外れました。
四番めの大伴の大納言は、家來どもを集めて嚴命を下し、必ず龍の首の玉を取つて來いといつて、邸內にある絹、綿、錢のありたけを出して路用にさせました。ところが家來たちは主人の愚なことを謗り、玉を取りに行くふりをして、めい〳〵の勝手な方へ出かけたり、自分の家に引き籠つたりしてゐました。右大臣は待ちかねて、自分でも遠い海に漕ぎ