天竺へ行つたように見せかけて、三年ばかりたつて、大和の國のある山寺の賓頭廬樣の前に置いてある石の鉢の眞黑に煤けたのを、もったいらしく錦の袋に入れて姬のもとにさし出しました。ところが、立派な光のあるはずの鉢に螢火ほどの光もないので、すぐに註文ちがひといつて跳ねつけられてしまひました。
第二番に、車持皇子は、蓬萊の玉の枝を取りに行くといひふらして船出をするにはしましたが、實は三日目にこっそりと歸つて、かね〴〵たくんで置いた通り、上手の玉職人を多く召し寄せて、ひそかに註文に似た玉の枝を作らせて、姬のところに持つて行きました。翁も姬もその細工の立派なのに驚いてゐますと、そこへ運わるく玉職人の親方がやつて來て、千日あまりも骨折つて作つたのに、まだ細工賃を下さるといふ御沙汰がないと、苦情を持ち込みましたので、まやかしものといふことがわかつて、これも忽ち突っ返され、皇子は大恥をかいて引きさがりました。
第三番の阿倍の右大臣は財產家でしたから、あまり惡ごすくは巧まず、ちょうど、その