出して、龍を見つけ次第矢先にかけて射落さうと思つてゐるうちに、九州の方へ吹き流されて、烈しい雷雨に打たれ、その後、明石の濱に吹き返され、波風に揉まれて死人のようになつて磯端に倒れてゐました。やう〳〵のこと、國の役人の世話で手輿に乘せられて家に着きました。そこへ家來どもが駈けつけて、お見舞ひを申し上げると、大納言は杏のように赤くなつた眼を開いて、
「龍は雷のようなものと見えた。あれを殺しでもしたら、この方の命はあるまい。お前たちはよく龍を捕らずに來た。うい奴どもぢや」
とおほめになつて、うちに少々殘つてゐた物を褒美に取らせました。もちろん姬の難題には怖じ氣を振ひ、「赫映姬の大がたりめ」と叫んで、またと近寄らうともしませんでした。
五番めの石上の中納言は燕の子安貝を獲るのに苦心して、いろ〳〵と人に相談して見た後、ある下役の男の勸めにつくことにしました。そこで、自分で籠に乘つて、綱で高い屋の棟にひきあげさせて、燕が卵を產むところをさぐるうちに、ふと平たい物をつかみあて