ところが姬の註文といふのはなか〳〵むづかしいことでした。それは五人とも別々で、石造皇子には天竺にある佛の御石の鉢、車持皇子には東海の蓬萊山にある銀の根、金の莖、白玉の實をもつた木の枝一本、阿倍の右大臣には唐土にある火鼠の皮衣、大伴の大納言には龍の首についてゐる五色の玉、石上の中納言には燕のもつてゐる子安貝一つといふのであります。そこで翁はいひました。
「それはなか〳〵の難題だ。そんなことは申されない」
しかし、姬は、
「たいしてむづかしいことではありません」と、いひ切つて平氣でをります。翁は仕方なしに姬の註文通りを傳へますと、みなあきれかへつて家へ引き取りました。
それでも、どうにかして赫映姬を自分の妻にしようと覺悟した五人は、それ〴〵いろいろの工夫をして註文の品を見つけようとしました。
第一番に、石造皇子はずるい方に才のあつた方ですから、註文の佛の御石の鉢を取りに