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ゝさきかたのものともいかゝ心得申へくや乙の人曰西洋諸國にてハ殊の外人民を愛憐仕り人命すくい候ハ何よりの功德に仕候ことにて旣先年デ子マルカと申國とイキリス爭戰の砌イキリス水軍デ子マルカの討手トヘンハーカと申所へをしよせ候所國都防禦の備煞た嚴重にてイキリス人大に敗北仕候その節一軍艦石火矢の爲大きに破損仕りすてに覆沒溺死に臨み候所イキリス急に一詭計を考出し船中にてデ子マルカ人數十人捕をき候間右さし出し申へきにより暫時炮礟見あはせくれ候やう賴いり候所デ子マルカ王これを承り詭計とも存し候へとも一軍艦を殺つくし候とて始終全の勝利と申ことにもこれなく若又其內一人なりとも自國の者船中にこれ在候へハ骨肉を傷ひ候儀に相當り候間態と見合石火矢を放ち申さす候內イキリス人軍艦を採つくろひ遁去候よし相聞申候右等の振舞にて考見候へハ西洋の風俗ハたとへ敵船に候とも自國のものそのうちにこれあり候へハみたりに放炮仕らさることに御座候然る所イキリス日本へ對し敵國にハこれなく謂ハつき合もこれなき他人に候所今般漂流人を憐み仁義を名としわさ送來候ものをなにこともとりあひ申さす直に打はらひにまかりなり候はゝ日本ハ民を憐まさる不仁國と存し若又萬一その不仁不義を憤りて日本近海にイキリス屬島夥しくこれあり始終通行いたし候へハ後來海上の寇とも相なり候はゝ海運の邪魔に相なり候哉もはかりかたく左候て自然國家の大患にも相なり申へく哉たとへ右等のことこれなく候とも右打はらひに相なり候はゝ理非も分り申さす暴國と存し不義の國と申ふれられ義國の名を失ひこれよりいかやうなる患害萌生仕候やもはかりかたく或