コンテンツにスキップ

Page:Shisekisyūran17.pdf/489

提供:Wikisource
このページは校正済みです

とに出させ給ひ御靜座ましけるに御神色かはらせられす雷やみていらせ給ひけり其後雷の御おそれなかりしとなん

內侍所の御から櫃を久しくきよむることなかりしかハひらかせられ御覽ありしにいつよりか其かたはらに入をきたる佛舍利ありすなはち取捨させられきよくきよめさせ給ひ御尊敬を盡させ給ひけり

御酒をこのませ給ひ時々御量に過させ給ふを諸臣ひそかにおそれけれとも諫奉る人もなかりけり或とき御宴の興も盛にて天機うるハしきに德大寺公信御前に出て度々御酒過させ給ふハ玉體の御ため其おそれすくなからす聖人の敎程朱の敎にもそむかせ給ひなんと諫奉られけれハ天機忽かはらせ給ひ御劔をとらせられ逆鱗甚しかりしに從容として又申上られけるハ古昔より聖君の御手つから臣をきらせ給ふをきかされとも公信か諫をきこしめしいれさせ給ハヽ身命ハおしむにたらすとて立もさらすそさふらはれける陪侍の人々しりそかしめらる上も御劔をもたせ給ひなから入御なりにけり人々德大寺殿に向ひ御忠諫のほとハ感し候へとも折惡しくして逆鱗甚しく御宴の興もさめさせ給へハみなおそれさふらふと申されけるに猶從容として某ハさハおもひさふらはす今夜も御酒過せ給はんをおそれみさふらふに御宴のとくやみぬるこそせめてのさいハひなれとおもひさふらふとて退出せられぬあくるあしたはやく出御まし近習の人にさてもよへの御ふるまひいたく悔させ給ひ御寢もならせ給はす此後公信か參らんもおほつかなくおほしめすと仰ありしに公信ハ天機