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二
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四則算法
通常四則の演算と稱するは十進法にて表はされたる二個以上の數の間に加法,減法,乘法又は除法を施こして得らるべき結果を再び十進法に表はさんとするを目的とし,其爲に設けたる,成るべく簡短にして秩序ある手續きたるに過ぎず,卽ち是れ算法を實行するの手段種々あり得べきが中の一なり.さればかかる演算の方法定まりて後始て加減乘除算法の意義定まれるにあらざること論を俟たず.
四則演算の手段は,數ふるといふ手續きに盡きたり,如何なる演算も數ふることによりて成し得ざるはなし.唯推理の力に藉りて成るべく器械的の手續きを節約せんとする處に工夫の餘地を存ず.事實の上につきて言はゞ,かく器械的に數ふべきは十以下の數に關する算法の場合のみに限ることを得べく,此狹小なる範圍內に於ける算法の結果は之を記憶すること難からざるが故に器械的に數ふることは全く之を避け得べし.
四則演算は社會的生存に於て日用必須にして,其知識は常識ある人々の共有