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附錄

限は三二八頁の二箇條の定義によりて定めらる.單に其第一條件のみを充實せる數又往々上下限と稱せらるゝと區別すること肝要なり.上限下限と最大最小との區別は次の例によりて特に明瞭に了解せらるべし.先づ一の定まれる圓を考へよ,此圓に內接する凡ての三角形の面積の最大は卽ち此圓に內接する正三角形の面積なり.又此圓に內接する凡ての多角形の面積に最大なし.の面積は其上限なり.

が無限に多くの數より成れる場合に於ても,若し を組成せる數が盡く正の整數なるときは, には必ず最小の數あり.げにも今 を以て に屬せる整數の一となすときは 若し の最小の數ならずば, の數にて より小なる者には其數限りあり.よりて上述の主張の成立するを知る.一般に分布稠密ならざる數の範圍內にありては,最大又は最小の必ず存在すべきことあるべし.是故に一三〇頁第四行に於て「其數に限りあり,是故に」の句は不用なり.

九(三) (三三六頁) なる數 の存在すべきことは,分布の稠密のみを根據として論證することを得たり.故に此事實は有理數の範圍內にても成立す.

九(四) (三三八頁) が相異なるとき,此等二數の中間に無限に多くの無理數あること勿論なり.試に之を證明せんこと恰好の練習問題なるべし.

(三三九頁) ならざることの證明冗長に失せり. なりとせば の中間に橫はれる有理數の一つ を考へよ.さて は甲に屬するか.曰く否, は甲の下限にして より小なるが故に, は甲に屬するを得ず.然らば は乙に屬するか.曰く否, は乙の上限にして より大なるが故に, は乙に屬せず.卽ち は甲にも乙にも屬せざる有理數なるべし.甲,乙は全體に於て凡ての有理數を網羅せるが故に,斯の如き有理數 は存在するを得ず なるが如き有理數