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附錄

原則によりて は最小の數なり. より大なる任意の一數をとり之を と名づく.原則によりて なる數あり,原則によりて此數は よりも又 よりも大なり.此數を と名づく. 類推すべし.さて連續の法則は等分の可能を保證す.(第九章(三)を看よ) なる如き數 唯一個あり,之を と名づく,云々.斯の如くにして自然數及分數を定む.無理數の觀念は第九章に詳述せり.さて斯の如くにして定まりたる有理無理凡ての數の系統がよく基本の諸原則に適合せるを驗證すること容易なり.驗證は容易なり.困難は斯の如き驗證は何故必要なるかを悟るの點にあらん.

〇無理數は irrational number の譯語なり.原語の意義は(著者が獨逸の某碩學より聞ける所によれば)比(ratio)ならざる,詳しく言はゞ二つの自然數の比ならざる數といふにあり.普通の字書にて語原を尋ぬるも亦同樣の說明に歸するが如し.さもあるべきことなり.「無理」の語或は妥ならじ.今は姑らく慣用に從ふ.但無理數は「ムリ數」なり「理無き數」にては勿論なし.「有理」亦同じ.

九(一) (三二八頁) の上限にして,而も に屬せざるとき卽 の最大にはあらざるときは,上限の定義の第二條は の數の中 より大なる者限りなく存在すべきを示す.げにも定義によりて の數の中 より大なる者少くとも一個あり.今假に の數にて より大なる者,卽今考ふる所の場合に於ては との中間に存せる者,其數限ありとせば,此等の數の中一個最大の者なかるべからず,之を と名づくるに より小なり.是故に との間にも亦 の數あり.是容すべからざることなり.一五三頁を參照せよ.

上限下限(obere und untere Grenze)の觀念はワイヤストラスに始まる.パツシユ(上出)は Grenze に代ふるに Schranke の語を以てす.未だ適切なる譯語を得ず.要するにワイヤストラスの所謂上下