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附錄

らるべき數は勿論盡く「代數的の數」の特例なり.然れども代數的の數は未だ斯の如き數に盡きたりと言ふべからず.

算法の形式上不易の原則のみを根據としては,旣に「不盡冪根」を說明するにも困難を感ず.試に を說明せよ.但この困難は絕對的に排除し得ざるに非ず.然れども「代數的ならざる數の觀念には此原則のみを根據として到底到着することを得ず.

此種の問題實は最新數學の進步によりて激發せられたる所にして,讀者に豫備の智識を期待せざる此書の範圍以外に屬せりと知るべし.唯あまり時代違ひなる誤解を防がんが爲に數言を費せるに過ぎず.

七(二) (二六六頁)準數單位の語亦此書假に用ゐる所,modulus,Einheit 等を連想す.

不關數(indifferente Zahl — Stolz),無效數(nombre d'effect nul — J. Tannery)等亦可,群の論(Theory of groups)に於ては Einheit 又は identical element 等の語例あり.

七(五) (二八〇頁)(一)の原則より發足して負數の意義を定めたる後再び飜て(一)の原則を驗證す.此驗證の絕對的に必要なるに注意すべし.(一)の諸原則は幸に負數につきても成立せり.大小に關する性質は正數の場合と負數のと全く同一にあらざるに非ずや.正數の原則を無差別に負數に適用すべからず.ダランベル(D'Alembert, 1717-83)の誤解は良好なる訓戒を含めり.

八(二) 吾人が量の原則として擧げたる者は,量の性質の中簡單なるものを無意義に羅列したるにあらず.此等は重複及遺漏なく量の特徵を盡くせる者なり.重複なしといふは此等の原則の中の一が他の者の論理上必然の結果ならざるを言ひ遺漏なしといふは,此等の諸性質を具へたる者は卽ち量なり,量といふ者以外に此等の諸性質を具へたる者なきの義なり.附錄三(一)の部を參照せよ.