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附錄

の明瞭ならざりし時代の遺物なり.

六(十) フエルマー(Fermat, 1601-1665)は法律家にして數學は其閑餘の樂事なるに過ぎず.整數論に於ては空前の碩學なり.

オイラー(Euler, 1707-1783)の名は數學の各分科に光輝を放てり.

 第七章に說ける如き硏究は遠くハミルトンの四元法(Quaternion)に胚胎せり.グラスマンの Ausdehnungslehre)は 元法とも謂ふべし.斯の如き「異算術」にありては,乘法は交換の法則に遵はず.是に於て數と算法とを區別して算法の定義より生ずる結論と,數の性質に因する結論とを鑑別するの必要を生ず.此見地より飜て有理數及其四則算法を審査す.所謂算法の形式上不易の原則は斯くして生れ出でたり.此原則の命名はハンケル(Hankel, Theorie der complexen Zahlensysteme, 1878)に始まる.

グラスマンは合離の算法を表すに なる記號を用ゐたり,ストルツは に代ふるに を以てしハンケルは函數記法を採りて を用ゐたり.吾輩は歷史上の由來に關係なく,印刷の便宜上,合離の記號を本文の如く定めて假用せり.

(二五五頁)「代數的の數」(algebraische Zahl)とは現代の數學に於て重要なる觀念なれども其意義を說明するは此書の企及せざる所なり.但此語につきて注意すべき一條あり.古風の數學書又は通俗數學書(特に或種の初等敎科書)等に於て此語を負數又は所謂不盡冪根などの義に用ゐたる者なきを保せず.然れども斯の如きは當今の數學社會一般に用ゐらるゝ用語例を違犯せる者なり.「代數的の數」とは正又負の整數を係數とせる代數方程式( は整數)の根たり得べき數を言ふなり.凡ての有理數,凡ての有理數の冪根,或はこれらに四則を施して得