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(三)
抽象的の定義と應用上の意義

及應用の範圍の始めより限定せられたるの不利あり.例へば數は長さ,時間の如き所謂量の大さを表はせるものなりと考ふるときは,再び其大小及加減乘除の意義を定め,再び其間に成立すべき關係を論證するの煩勞を反復するを避け難し.數は物の順序を表はせりとするも,物の數を表はせりとするも,或は量の大さを示せりとするも,此等特殊の應用上の意義以上に超立して動かざるは,其基本原則及四則の定義(例へば加法につきての前節の III)なり.數の加法を特殊の實際上の問題に應用せんとするものは,宜しく先づ其加法と稱する所のものゝ果して,よく前節の III の二條件に適合せるや否やを檢すべし.若し此二條件にして充實せられなば,前節に說きたる,組み合はせの法則,交換の法則及其他の定理も盡く成立すべきなり.斯の如くにして個々の特殊なる應用上の意義につき,一々同趣の推論を反復するの勞を避くることを得べし.第二章(四)に於て算法の順序に關する一般の定理を特に加法,若くは乘法に關するものとせずして,一般の假定の上に其基礎を置きたる所以の者,