Page:Second criminal judgement of Hirosaki incident.pdf/6

提供:Wikisource
このページは校正済みです

ヤツの血痕(前記三木鑑定の対象となつた部分以外の血痕)はBMQE型であると判定し、原審第十二回公判調書中証人松木明の、原審第三回公判調書中証人〔丙〕の各供述記載によれば、右両人も右開襟シヤツの血痕(同上)をBMQ型と判定したことが認められるから、この点に関する所論は採用の限りでない。血液のBMQE型の人は被害者〔甲〕以外に沢山いるから、本件開襟シヤツの血痕を以ては個人識別には役立たないとの所論に対しては、既に前記確率のところで説明したとおりである。道路上の血痕は犯人の兇器から滴下したものとみるのは常識に反するとの所論に対しては、原審鑑定人古畑種基の鑑定書により、その説明十分である。丸井鑑定書が鑑定の資料とする中に本件の証拠となり得ない司法警察員に対する供述調書の一部存するととは所論のとおりであるが、被告人及び弁護人は右鑑定書を証拠とするととに同意しているのみでなく、その鑑定資料として引用された供述部分が公判廷における供述と実質上異るのは〔乙3〕のみであるから、これがために、所論のように、鑑定の結果に影響するものとは到底考えられない。その他の所論に対しては、既に前記説明したところに照らし、更に説明するの要をみない。
 敍上説明のとおりで、本件犯行の動機が不明確であるとの理由で、将又、血液のBMQE型の人は被害者〔甲〕以外にも何人いるから、本件開襟シヤツ附着の血痕は被害者の血液とは限らないとの理由で、犯罪の証明十分ならずとする見解は、当裁判所の到底これを採用するを得ないところである。要するに、原判決は、判決に影響を及ばすことが明かな事実の誤認があり、破棄を免れない。論旨は理由がある。
 以上の次第で、原判決は全部これを破棄すべきものである。
 そこで、爾余の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十二条第三百七十八条第四号により、原判決を破棄し、同法第四百条但書により、被告事件につき更に判決する。

(事実)