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二号)に附着した時期と時間的間隔が認められないこと、以上の場合、他の諸条件を考慮の外におき、右開襟シヤツの血液は被害者〔甲〕の血液が附着したものであるとみる確率は九八・五%であること、しかるに、被害者〔甲〕は総頸動脈を切断されたものであり、右開襟シヤツ附着の血液の大部分は、その位置、形、量からして、動脈から迸出した返り血をあびたものとみられるから、右の確率は更に大となり、BMQE型の血液の人が被害者〔甲〕以外に何人あろうとも、その誰かが本件犯行時刻頃被告人の傍に居て、しかもその動脈から血液を噴出させて、被告人の着ていた右開襟シヤツに血痕を飛散させたものであるという立証がつかない限り、右開襟シヤツ附着の血液は被害者〔甲〕の血液であると推定されることが認められる。
 しかるに、被告人は、犯行当時のアリバイを主張し、それが次々に崩れるや、当時の記憶は一切空白なりとうそぶき、三転して当夜は外出したことなしと言い、而して、問題の海軍用開襟白シヤツ(証第三号)については、血痕の附着している筈なしと強弁するのみで、これに対する合理的説明をなす能わず、かくて、前記推定を覆すべき証拠は何等ないのみか、却て、後記自判の際の証拠説明に詳記する如く、前記確率を全きものにし、推定を認定に高める他の諸条件が具わるのである。
 卽ち、被告人が本件の頃も穿いていたことを自認する白ズツク靴(証第二号)に噴出飛散したB型と思われる人血の細滴が附着していること、被害者方から被告人方隣家に到るまでの道路上、及び隣家宅地から被告人方へぬける部分の境界生垣の笹の葉上に、合計約三十余滴の小さな血液滴跡が発見され、それは全部人血で、検定可能のものは皆B型と判定されたこと、犯人を目撃した被害者の実母〔乙2〕は、被告人を面通しで見た時、被告人が犯人と全く同じであり、卒倒するように感じた程であること、本件犯行の時刻の前後、被害者方附近で、開襟らしい白シヤツを着て半ズボン様のものを穿いた、しかも被告人の歩き方の特徴である内股に歩き、殆んど足音をたてない被告人に似た