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考慮しない甚だ皮相的な判断である。

5 原審が亡〔丁2〕の財産的損害につき因果関係を否定したのも不当である。殊に本件の如き無実の事件では、私選弁護人選任の必要性が大であり、本人に資力がなければ親兄弟が支出するのが一般的である。原二審裁判所も、訴訟費用執行免除の申立を棄却するに当たり、亡〔丁2〕の資産を考慮しているのである。
三 損害額についての予備的主張

 前記二2の主張が容れられないならば、一審原告隆は予備的に、逸失利益として請求している三四二四万二七〇〇円のうち二〇〇〇万円は慰藉料として請求する。
 同原告は、刑事補償法に基づき一日金三二〇〇円の割合による補償を受けたが、あまりに低額であると国会でも論議され、これが切つ掛けとなつて法改正が行なわれ、現在ではその上限額が一日金七二〇〇円と倍額以上に改められている。このような事情を考慮するならば、本件の如き法改正の谷間の事例については、慰藉料額で調整するのが法の求める具体的妥当性に合致するものと考える。

四 一審被告の除斥期間経過の主張について

 時機に遅れた主張として排斥されるべきものである。
 また、本件における「不法行為の時」は違法判決に基づく刑の執行の終了した日と解すべきであり、除斥期間の起算日は損害賠償の請求が可能となつた再審無罪判決確定の日であるから、いずれよりしても右主張は理由がない。

(一審被告の主張)