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審がこの期間を賠償の対象外としたのは誤りである。

2 原判決は、逸失利益の算出に当り古い時期については古い統計数値を用いたため、その総額は極端に低額となり、現在の常識から大きくかけ離れた認容額となつてしまつた。最近では交通事故につき事故時の賃金センサスではなく口頭弁論終結時における最新のそれを用いた事例もあるので、少なくとも同原告が国に対し賠償請求権を有することが法的に確定した時期の資料に基づいて算出されるべきである。原判決の考え方は、昭和二四年の逸失利益はその時期の資料に基づいて算出し、あとは運用利益を遅延損害金により賄うということであろうが、再審の無罪判決が確定するまでは、そもそも運用そのものが不可能であつたのであるから、右の考え方は妥当しない。
3 原審は、本件の再審請求後再審開始決定確定に至るまでの裁判費用につき証明不十分であるとして、これを認めなかつたが、右手続がどこでどのようにして行なわれ、誰が出廷し弁護活動に従事したかは記録中の証拠により明らかである。
  刑事訴訟法上の訴訟費用の補償が再審請求手続費用を含まない不合理を残していることを考えるならば、正に右手続なくして無罪判決は得られないわけであるから、これこそ賠償の対象とされなければならない筈である。
4 一審原告隆以外の原告及び亡〔丁2〕の慰籍料につき、原審は右隆の無罪が確定し同人の精神的苦痛が慰藉されることにより当然慰藉される範囲内にあるものと解すべきであるとして、これらの者の慰籍料請求を棄却したが、同人らが国家機関の違法行為によりそれぞれの人格をそれぞれに傷つけられたことを